『夜明け前より瑠璃色な-Moonlight Cradle-』レビュー

"月に少しだけ、しかし確実に近づけた"

点数ブランドプレイ時間
70点AUGUST約15時間
シナリオ
榊原拓、内田ヒロユキ、安西秀明
原画
べっかんこう
紹介サイト
夜明け前より瑠璃色な-Moonlight Cradle-
備考
・『夜明け前より瑠璃色な』のファンディスク


本作は『夜明け前より瑠璃色な』のファンディスク。既存ヒロインのアフターストーリーに、本作にて追加された新ヒロインが活躍する長編シナリオ、そしておまけシナリオから構成される。

本シリーズの少し特殊な点として、PS2版である『夜明け前より瑠璃色な- Brighter than dawning blue -』にて追加された新ヒロインの登場により、PC版のメインシナリオにわずかな変更が加えられたという事情がある。

そこで本作ではPS2版のシナリオに則っていることから、PC版のみプレイ済みという人にはやや付いていけないシーンもある。事前にプレイしておくのが無難だろう。

さて、ファンディスクに要求される一要素として、「あのヒロインたちともう一度逢いたい」という願望を叶える役割がある。その点はアフターストーリーという形で手堅くクリアーしている。

それぞれ1時間から2時間半ほどのショートストーリーで、特に大きな盛り上がりはないものの、本編ルートの「その後」ならではの展開でもってヒロインたちの成長した姿を見せてくれる。そこに挟まる適度なイチャイチャも楽しめるあたりが手堅い。

またPC版ヒロインは(基本的に)Hシーンが1枠なのに対して、PS2版で追加された新ヒロインはその裸体が初お目見えということもあってか、ばっちりHシーンが2枠ずつ用意されているあたりも手堅い。手堅いぞ。

本編をプレイ済みであり、作品世界や雰囲気を理解しているプレイヤーへのファンサービス作となると、こういう手堅さ(「無難さ」と言い換え可能)が大切なのですなあ……などと思いつつ。各アフターストーリー攻略後に開放された新ヒロイン、シンシア・マルグリッドルートを開始するや否や、ひっくり返った。

思えばアフターストーリーとは、そのスタート地点からして物語上の選択肢により分岐したその後の物語である。だから本作ではどのヒロインのアフターストーリーを読むかを直接選択するというゲーム形式をとっている。

この無意識の内に受け入れていたゲーム形式に意味を与えるという芸当から始まるシンシアルートは、それまでの手堅い作りのアフターストーリーとは大きく異なる、非常に挑戦的なシナリオだった。

その内容は是非プレイして確認してもらいたいが、一点だけ。『夜明け前より瑠璃色な』本編に不足していた、その世界観から自然に導かれうるSFとしての面白さは、このシンシアルートが一手に引き受けていると言える。FDならではのギミックも詰め込んだ本ルートを私は高く評価したい。

ただ、よりにもよってクライマックスのシーンで分かりやすいCGのミスがあるため、事前に修正パッチを当てることを忘れないように。

FDらしい手堅さと、FDならではの挑戦的な姿勢とを見事に両立させ、『夜明け前より瑠璃色な』という世界観は本作にて綺麗に幕を下ろしたと言えるだろう。

個人的にはやや物足りなさを感じていたPC版から、非常に秀逸な追加ルートを備えたPS2版を経て、最後にはシリーズを通してプレイして良かったと思える程に高い満足感を得ることができた、良質なファンディスクだった。


【関連リンク】
『夜明け前より瑠璃色な 〜Brighter than dawning blue〜』感想(前ブログ)

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