『ふたりのクオリア』レビュー

"ふたりのクオリア  ふたりのクオリア"

ふたりのクオリア
ふたりのクオリア

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10mile (2014-07-25)
点数ブランドプレイ時間
55点10mile約8時間
シナリオ
J-MENT
原画
紹介サイト
「ひとりのクオリア」「ふたりのクオリア」「クロスクオリアセット」
備考
・姉妹作『ひとりのクオリア』と同日発売


『ふたりのクオリア』は、姉妹作『ひとりのクオリア』と合わせて二作に分けて発売されたロープライス作品である。シリーズ概要やシステム面など、『ひとりのクオリア』と共通する基本情報はまとめて『ひとりのクオリア』レビューにて掲載しているため、こちらでは『ふたりのクオリア』のシナリオをメインに言及する。

「左右(ふたつ)の世界」が視えるという悩みを持つ少女・枇々木 ナツメは、一人暮らしの住まい近くの路地裏で倒れる謎の女性・ギンザを助ける。記憶喪失だというギンザは人のよいナツメの家に住み着き、同棲生活を始めることになる。

本作でまっさきに目がいくのは、やはりナツメが視る「左右の世界」という設定だろう。ナツメはある選択を迫られて迷いが生じたときに、それぞれの選択を行なった二つの世界を両方とも"視る"……なんて言われても意味不明だろう。ゲーム演出を口で説明しても詮無いことなのだが、つまりはゲーム画面中のテキストが左右に別れて同時並行にシーンが展開されるのだ。

この二つの選択世界を同時に視るという物語設定は、少し考えればノベルゲームというフォーマットでなければ難しいということが分かる。なぜなら、二つに別れたテキストを同時に認知させるということは紙媒体の小説では無理だし、だからと言って安易に映像にしても複雑すぎて受け手が処理できないからだ。よって、スクリプトにより対応するテキストを同時に表示でき、また読み返しが利くノベルゲームというメディアの利点が光る設定であると言えるだろう。

この「左右の世界」で別れた世界のうちどちらか一方が、正しい世界として物語上進行していく。このときナツメの中では両方の世界における記憶がマージされるために他人の記憶との間に齟齬が生じてしまう。そんな不安を常に抱え、できるだけ他人と関わりを持とうとしないナツメの孤独を、自由奔放なギンザがどう癒してあげられるのかが物語の主題となる。

その一方で、『ひとりのクオリア』側のストーリーラインである「真希理の復学」にも裏方として関わることになるため、シナリオはやや散漫気味で分かりにくいところもある。従って『ひとりのクオリア』を先にプレイしておいた方がストーリー全体の流れを追いやすくなるだろう。

ギンザが積極的にスキンシップを仕掛けるため、女の子同士のドキドキ感ではこちらが上。やはりエッチシーンは控えめであるが、『ひとりのクオリア』よりは"その先"を見せてくれるだけ満足感はある。

丁寧な心理描写の積み重ねというオーソドックスな面白さで勝る『ひとりのクオリア』の方が完成度では上だが、やはり「左右の世界」のという斬新なギミックには一見の価値あり。しかし、
・実験作としての色合いが濃い。
・姉妹作との関連性が強い。
・『クオリア』シリーズの続編を臭わせる終わり方をしている。
という本作の性質上、単品で評価を下すのは難しいというのが正直なところである。

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