『Ever17 -the out of infinity-』レビュー

"敢然たる一作"

Ever17 -the out of infinity- [恋愛ゲームセレクション]
サイバーフロント (2008-09-19)
売り上げランキング: 4,829
点数発売日プレイ時間
85点KID約30時間
シナリオ
打越鋼太郎、梅田信明、笹成稀多郎、中沢工
原画
滝川悠
紹介サイト
Ever17 Xbox 360版 公式サイト
備考
・全年齢対象
・本レビューではPC版『Ever17 -the out of infinity-』に準拠

本作は『infinity』シリーズの第二作目。すでに様々なバージョンが発売されており、現行最新版はXbox360版であるが、ここではPC版(Premium Edition)の仕様に準拠する。

時は2017年――海中のテーマパーク・LeMU(レミュウ)で水浸事故が発生し、複数の男女が施設内に閉じ込められてしまう。大量の海水が入り込み、内部気圧も低下し、施設自体が圧潰してしまうまでのタイムリミットは119時間。登場人物たちはそれぞれ生き残るためにLeMUからの脱出を目指すというSFサスペンス色の強い作品だ。

本作の特徴の一つとして、二人の主人公の存在が挙げられるだろう。まず一人目は、お調子者の好青年である倉成武。そして二人目は、記憶消失で事故までの経緯はおろか自分の名前まで忘れてしまった少年。プレイヤーはプロローグ後にどちらか一方を選択し、以降はエンディングまでをその主人公の視線のままゲームが進行することとなる。

どちらの主人公を選択するかによって攻略できるヒロインが異なる。また、異なる登場人物の視線であるため、同じ舞台でありながら見えてくるものも違ってくる。プレイ周回を重ねるにつれてその齟齬は大きくなっていき、なぜ彼らは閉じ込められたのか? なぜ少年は記憶喪失になったのか? なぜ二人の体験に差異が生じるのか? ――などなど、様々な謎が物語全体を通してプレイヤーの前に立ちはだかる

本作最大の魅力は、これらの謎が各ルートを攻略していく毎に深まり、解決し、また深まっていき……そして、最後には見事な手腕で全てを回収してみせるその鮮やかさにある。加えて、謎を解く鍵となる伏線がどれも各キャラクターの出自や目的と関連し、そうとは思わせない会話の中で提示される点も巧みだ。

以上の理由より、最後のルートに待つ感動は大変深いものだった。しかし逆に言えば、それまでのルートにおいては謎が膨れるばかりで分かりやすいカタルシスが得がたく、更にどちらの主人公を選んでも内容的に重複するシーンや説明がそこそこ存在するため、やや中だるみ感はある

キャラクターに着目すると、どのキャラクターにも明確な存在意義と活躍が用意されている。個人的な一押しヒロインは田中優美清春香菜。その付き合いやすい性格に、ときたま見せる理知的な姿勢が眩しい。少年とのカップリングによるおねショタ感も萌える。

キャラクター描写に関して特記したいこととして、ときに見せる少しびっくりするレベルの狂気的なハイテンション描写が挙げられる。特に少年と八神ココのそれは、キャラクターの幼さと電波さとが相まって頭がクラクラした。

絵に関しては発売時期相応の古臭さはある。しかし、立ち絵はなかなか作りこまれており、舞台設定的に必要不可欠な全身ずぶ濡れ立ち絵がほぼ全キャラに用意されていたり、左右を向いた立ち絵の組み合わせで画面に映る登場人物同士が会話をしているように見せかけたりなどの工夫が見られる。

システム面ではスキップの遅さが気になる。各ルートで共通するシーンも多いので、待ちの時間がかなり長く感じた。

SF、ミステリー、サスペンス、ギャルゲーと、様々な要素を併せ持つ本作。それらジャンルの枠組みをひっくるめることで実現した大胆な試みの数々が、多少のご都合主義的展開も笑って許せる衝撃を与えてくれるだろう。ネタバレは避けて、是非プレイしていただきたい。

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