『円交少女 ~陸上部ゆっきーの場合~』レビュー

"疾走する売春"

点数ブランドプレイ時間
80点Frill約5時間
シナリオ
丘野塔也、若林浩太郎、瑞守ねおん
原画
恋泉天音
紹介サイト
円交少女 ~陸上部ゆっきーの場合~|Frill official website
備考
 

空っぽ。それ自体が不幸なことであるのかどうかは分からないけれど、自らのことを中身のない人間だと思い込んでしまうことは不幸だ。だから人は、自らの中身を満たす何かをいつも求めてしまう。例えば私の場合は、エロゲー。

本作は、発表時点からシリーズ物であることを明言された『円交少女』シリーズの一作目。低価格・選択肢なしの一本道で、タイトル通り援助交際をテーマに置いた作品だ。

怪我のために打ち込んでいた陸上を辞めた真面目な少女・河原木 悠希(ゆっきー)。陸上という自らの中身を埋めていたものを失い、自暴自棄になりかけていたところを、中学時代の友人・美月 真子(パコ)と再会する。ホストの売掛金を返済するために援交を繰り返しているというパコを前にして、彼女を救うために、処女でありながらゆっきーも援交に手を染めてしまう。

ゆっきーが初めての援交を致してからは、怒涛のエッチシーンの連打が繰り広げられる。ハメ撮り写真を握らされた援交相手の素性を掴むため、援交を目撃された教師の口を封じるため……様々な言い訳をつけてゆっきーは多数の男たちと援交を重ねてしまう。

一度援交を始めたが最後、状況が次の援交を余儀なくさせ、気づけばのっぴきならない領域にまで突き進んでいくストーリー展開はなかなかにサスペンスフル。

テキストが右から左へと順番に、吹き出しのように表示されるバルーンウインドウモードというシステムも、この物語を盛り上げるのに貢献している。基本的に5つの吹き出しが画面に表示されると次のページヘ移行するというこのテキスト表示形式に合わせて、5クリックの間に一つの心情、一つのアクションが語られて次の描写へと移るようにテキストが練られている。その結果、どんどんと援交へと突っ走る物語に合ったスピード感とテンポ感を与えることに成功している。

このスピード感、テンポ感の意味するところが分かりやすいシーンの一例として、新たな援交の誘いを受けたゆっきーが1クリック目で「……バカじゃないの?」と口にだす、あるシーンを挙げたい。そこから3クリックの間ゆっきーは逡巡して、5クリック目で「ダメ……なんだから……」と自分に言い聞かせたかと思いきや、次の瞬間にはもう援交に出かけてしまっている。ユーモアも利いた名シーンだ。

もちろん、エッチシーンでもバルーンウインドウモードは威力を発揮する。恋泉天音が描く肉感的なイベントCGを背景に、画面いっぱいにゆっきーの淫らな台詞と心情が載っていく様は単純にエロい。どこか覚めた感じの内心ナレーションと、思わず漏れ出る媚びた嬌声という、二面性のある演技をこなしたくすはらゆいもお見事。

また、本作はエッチシーンの構成もよく練られている。低価格ソフト故にイベントCGを潤沢に投入できないという事情を逆手に取り、既出のCGを使いますことでプレイヤーを「焦らすエッチシーン」と、新規のCGを投入することでプレイヤーを「抜かせるエッチシーン」とに分けているのだ。

その証拠に、新規CGが投入されるエッチシーンはどれも、ゆっきーの心情が大きく変わる(=次のステージへと上がる)瞬間だ。処女喪失、ガチイキ、妊娠願望……真面目なスポーツ少女が牝へと変わる瞬間にこそ、リソースを投入して演出する。非常に理にかなった判断だ。

しかも、本作のエッチシーンは「焦らすエッチシーン」と「抜かせるエッチシーン」の二つだけではない。ゲーム終盤には驚異の演出でもって、「いったいこのエッチシーンを前にして何を思えというのか……」と言葉を失うこと間違いなしな、「第三のエッチシーン」が用意されている。これは是非、プレイして確かめてもらいたい。

この「第三のエッチシーン」も含めて、本作は「そんなことやっちゃう?!」と思わず身を乗り出したくなるようなチャレンジングな試みに溢れている。登場人物の黒くてドロドロとしたひたすら鬱でILLな心情をラップで歌い上げるエンディング曲『null』もその挑戦の一つに数えて良いだろう。とにかく強烈。

このように、本作を攻めの姿勢に溢れた作品として製作できた一因として、商業的なリスクを低く抑えられる低価格の連作という形式を採用したことが挙げられるだろう。良質なエッチシーンの連続で何も考えずにオナニーに耽けれる作品であるが、一方で、非常に考えぬかれてデザインされたスマートな作品でもある。続編も期待大だ。

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