『Portrait』レビュー

"突き進もう、進むべき道を照らし合いながら"

Portrait

Portrait

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テスラ (2000-07-28)
点数ブランドプレイ時間
65点TESLA約20時間
シナリオ
ココノツ
原画
ぶるべら
紹介サイト
Portrait (TESLA) (18禁) [ゲーム] - Getchu.com
備考
 

まずは忠告から。本作はバグが多い。特にサウンド周りは完全には修正できなかったようで、複数ある修正パッチ(nawa.sakura.から取得)を当ててバージョンを最新版にしても環境次第ではBGMが鳴らないことがあるらしい。

私の場合はWindows7(64bit)でゲームのバージョンをVer1.02cにアップデートし、「BGM再生トラブル対策」設定をオンにしたらBGMが再生された(ただしループはしない)。ボイスのないゲームなので、BGMが鳴らない場合は無音プレイを強いられることになる。

さらにVer1.02b以上だとメインヒロインである桐嶋ルカルートの終盤にフリーズする箇所があり、そのときはダウングレードする必要がある。以上より、プレイするためのハードルがやや高めであることは購入前に把握しておくべきだろう。

ということでゲーム本編の話に入る。神学系で全寮制である学園に通う主人公・青木健志(名前変更可)は美術部員。彼がある一冊の小説を徹夜で読み終えたシーンから物語が始まる。その日の夜から彼が見る夢のなかに、同じ美術部に所属するヒロインたちが現れるようになるという展開が本作のキモとなる。

自分が夢を見ていると自覚する夢を「明晰夢」というが、夢のなかでは世間体を気にする必要が無いため、エゴをむき出しにして「欲望」を振りかざすことに何ら問題ないように思われる。実際、本作の各ルート中盤には夢のなかで身近な存在であるヒロインたちを抱くかどうかを選択する場面が訪れる

ずばり、本作のテーマの一つとしてこの「欲望」が挙げられる。それには肉欲もそうだが、美術部員として「表現すること」をもひとつの要素として含んでいる。さらに、神学系の学園という舞台は「禁欲」を象徴しており一層このテーマを際立てている。

はたして、この欲望の歯止めが効かなくなった先には何が待ち受けているか。各ヒロインごとにハッピーエンド・汎用バッドエンド・ワーストエンドの3つのエンディングが用意されていることからも、なんとなく察しがつくであろう。個人的には、敵対していた「欲望」同士が臨界点に達した瞬間に奇妙な結託を果たしてしまう二ノ宮杏子ワーストエンドが印象的。

逆に、各ハッピーエンドでは美術部を舞台とした青春部活モノの味付けが濃く、気持ちの良い恋愛ストーリーとなっている。特に、主人公の「夢」含めて超能力がギミックとして巧く活かされる天野美由ルートと、実直に「表現すること」に取り組む姿を描いた桐嶋ルカルートの2本はお気に入り。

登場人物たちが繰り広げる自然な掛け合いも程よく笑える。同じ美術部員の仲間としてすでに関係性が深まっているヒロインたちとの砕けた感じのやり取りは心地よく、そこに新入部員として加わる天野美由のちょっと天然な言動が絶妙なスパイスとなって雰囲気を盛り上げてくれる。

加えて、唐突にビジュアルで笑かしてくる立ち絵芸や、主人公が愛聴しているラジオ番組の超がつくほどの低俗さなど、突き抜けたユーモアも見せてくれる。しかも後者のラジオ番組はストーリーとも密接に関わってきて、脚本の巧みさがここにも見て取れる。

絵に関してはやや立ち絵のバランスの悪さが目立つが、エッチシーンのCGは非常に緻密に描きこまれており美しい。美しいが、あまりエロには直結せず、ボイスもないので実用性は低い。

従って、陵辱もあるゲームだからとエロ目的でプレイするのはオススメしない。ワーストエンドで展開される陵辱シーンは、青春物語がボタンを掛け違えた果てに待つ深い苦味(あるいは毒)として捉えるのが良いだろう。

冒頭で述べた音楽再生バグやそこそこ高い難易度のせいでプレイハードルが高めなのが惜しい。これに加えてブランド処女作にして遺作という微妙なポジションも相まって、地味な作品である。しかし、青春物語としてなかなか秀逸な一作なのは間違いないので美術部部活モノと聞いて興味が湧いた方には是非プレイしていただきたい。

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