『ヒトカタノオウ』レビュー

"黒羽奈緒というエロゲヒロイン界随一の不憫ヒロインを僕は忘れない"

ヒトカタノオウ パッケージ版
Artel Team Prefab (2007-03-30)
点数ブランドプレイ時間
65点Artel Team Prefab約10時間
シナリオ
花ツバメ、柳はと
原画
ちょちょ、おすぎ
紹介サイト
ヒトカタノオウー特設ページー
備考
2006年8月31日にDL版が発売された『ヒトカタノオウ -アカシノクニ-』、『ヒトカタノオウ -ヲルノモリ- 』をセットにし再構成されたパッケージ版

本作は、元は二本のダウンロード専売タイトルとして発売された『ヒトカタノオウ アカシノクニ』『ヒトカタノオウ ヨルノモリ』を一本にまとめたパッケージ版。画面全体にテキストを表示するビジュアルノベル形式で、人と妖(あやかし)の運命が交差する伝奇物語を紡ぐ。

主人公である直哉は、町を仕切る大家である八坂家の一人息子。代々女性が当主を務める八坂家の現当主である直哉の母が病に伏し、庶家の娘である五十鈴 咲月が当主代理として八坂の仕事を取り仕切る。その仕事とは、人間の敵である妖を狩るカミヨリを束ねることであった。

それまで妖のことも知らずに平和な日々を過ごしてきた直哉。しかし、その日常は最近八坂家にやってきた黒羽 奈緒と、幼き日に大切な時間をともに過ごしたミズハ、この二人の少女が繰り広げる熾烈な殺し合いを目撃することで崩壊してしまう――。

元々二本に分かれて発売されたタイトルだけあって、物語分岐の構成がはっきりしている。カミヨリである奈緒と、妖であるミズハ。二人のヒロインのうちどちらか片方を選ぶことで、八坂家の側か、妖の側につくかが決まり、選ばれなかったヒロインとは敵対関係となってしまう

ビジュアルノベル形式を採用しているだけあって、二人のシナリオライターの筆力はなかなかのもの。伝奇モノ、バトルモノとして必要とされる世界観の作りこみも本格的で、トリッキーなテキスト演出も含めた「読む楽しさ」を重視した直球のノベルゲームである。

しかし、世界観設定と物語の作りこみに対して必要とされるボリュームを詰め込むにはやや尺が短く、惜しいところも散見される。例えば、物語ではなく台詞だけで長々と設定説明をしてしまうシーンなどはもう少しストーリーと絡めて展開して欲しかった。また、物語のセッティングに時間をかけすぎており、面白い展開に至るまで時間がかかるなどバランスの悪さも感じられる。

とは言え、選ばれなかったヒロインを相手に死闘を繰り広げるシリアスなバトル展開はやはり面白い。選ばれなかったヒロインには残酷な不幸が待ち受けており、それがそのまま「戦う理由」となってしまうのだ。

特に、産まれながらにして妖と戦うことを運命づけられた奈緒においては、選ばれなかったルートではシナリオライターのドSさが透けて見えるほどにキツい展開が重ねられていく上に、たとえ選ばれたとしても回避不能でエロい……もとい、えらい目に遭ってしまう。

その、何も知らないかのような幼さ、無垢さも手伝って、ひたすら可哀想な目に遭う奈緒は、全身血まみれの立ち絵と共にしばらくは忘れられないインパクトを与えてくれた。個人的に、嫁にするなら絶対にミズハを選ぶが、好感度的には身体張りまくりの奈緒の勝利

ただ、キャスティングはどちらも失敗だったように思う。シリアスドラマ系で、バトルシーンでは嗚咽や絶叫が多く、また造語を含んだ説明的な長台詞が続く本作は、声優の力量がかなり求められる。ヒロイン二人を担当するのは倉田まりや桃井いちごと今となっては目を引く布陣だが、本作初出の2006年当時はどちらも駆け出しで、拙いところが目立つ結果になってしまった。

絵に関してはちょちょおすぎの両名による、どこか暗さを携えた独特な絵柄が作品世界とマッチしており文句なし。ちょちょ絵の真髄はなんといってもその眼力だと思う。

小品ながらもごまかし皆無な本格派伝奇ビジュアルノベルにして、硬派な燃えゲーでもある本作。個人的にはぜひ、不憫っ娘萌えの方にオススメしたい。

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