『ハーレムゲーム 俺はコレのおかげでエロゲーの主人公になれました!』レビュー

"ご都合主義を貫き抜いたその先へ"

点数ブランドプレイ時間
80点INTERHEART約20時間
シナリオ
十全
原画
了藤誠仁、ねみぎつかさ、しんしん、PAZMA、フロンティアチャイルド
紹介サイト
INTERHEART – HaremGame
備考
 

シナリオはご都合主義、テキストも誤字脱字が多く、絵についてもクオリティのバラ付きが著しい、メインヒロイン以外のキャラクターには立ち絵も用意されず、CVも全体的に技量不足で、BGMはチープで、インターフェース・デザインも垢抜けない……ようするに、全体的に安っぽい

ところがどっこい、これがビックリするほど面白いのである。

原因不明の女性の不妊化が社会問題化し、その予防として低年齢のうちからの妊娠が推奨される世界。それに合わせて科学も発展し、受精の検査も手軽に行なえ更に受精後も安全に避妊できる薬も流通している。なんて都合のいい設定なんだ。これで主人公がイケメンのモテモテであるならば……!

主人公である鈴谷浩樹は冴えないエロゲーオタクである。ああ無情。しかし、彼が道端で拾った携帯エロゲー(どんな形状なのかは最後までよく分からない)の『ハーレムゲーム』をプレイするや、みるみるうちに男性としてのスペックが上昇していき、学園の象徴的存在が集う白百合の会(どんな委員会なのかは最後までよく分からない)の爆乳美少女たちとあれよあれよと性的関係を重ねていくことになるのである。ああご都合主義。

本作のテーマはタイトルにも掲げている通り「ハーレム」である。複数の美少女に惚れられその身体をすべて思うがまま、そんなエロゲー的ご都合主義なテーマを成立させるために、本作ではご都合主義な世界観とご都合主義なアイテムを導入したのだ。

そんな、主人公にとっても、そしてプレイヤーにとっても極めて都合のいい物語でセックス以外にいったい何を描くのか。それは白百合の会の一員であり、重度なエロゲーオタクでもあるヒロインの皆瀬香奈の次のセリフに集約される。

「この先卒業しても、ずっと今みたいな楽しいのが続くのであれば、それが可能なら……ずっと共通ルートみたいな幸せな感じが、私は大好きです」

そんな香奈の想いに沿うかのようにこのゲームには選択肢がない。エロゲーらしく実は不幸な境遇にあったりするヒロインたちの誰にも、特別に救済される個別ルートが用意されていない。しかし、これはハーレムゲームである。チートじみた能力を得た主人公はヒロイン全員を幸福にするための唯一の道(ルート)であるハーレムを実現すべく、奔走とセックスを繰り返すのだ。

こう表現すると意外と真面目なエロゲーなのかと思われるかもしれないが、基本的にはそのぶっ飛んだ世界観ならではの常識が通じない股の緩い会話の連続で笑わせてくるふざけたエロコメディである。

主人公を囲い、互いにライバル意識をちらつかせながら妊娠回数の自慢合戦をするヒロインたちによる明け透けなガールズトークはくだらなくも心地よい。使い回しの利く汎用エロCGをヒロインごとに数枚用意し、いつでもどこでもエッチしまくりな日常を低コストで見せるのも良いアイデアで、かつその「いつでもどこでも」感をもちゃっかりギャグに転化させる手腕もお見事。

パロディネタもその時々のストーリーに沿ったチョイスで面白い。例えば、ゲーム冒頭に『炎の孕ませ』シリーズをもじったエロゲーが出てくるが「巨乳美少女たちを孕ませまくる」本作が『炎の孕ませ』シリーズに強く影響を受けていることに疑いの余地はない。まず真っ先に、本作もあんな感じの作品であるということアピールしているわけである。

もう一つ。個人的に特に唸らされたパロディネタとして、物語中盤で主人公がある重大な決意を固めるシーンにてエロゲー界で最も有名なあの主人公の口調を真似た独白が挟まるのである。まさにこの瞬間、喜々としてハーレムへ向けてひた走る鬼畜戦士が誕生したことを高らかに宣言するように……巧い!

以上のように「エロコメディ」のうち「コメディ」の部分は個人的に極めて高い満足度である。ではもう一方の「エロ」の部分はというと、キス&卑語多めの甘々な台詞回しが多くなかなかヌかせるテキストに仕上がっているものの……。

しかし、冒頭で述べたとおりの本作のチープさがエッチシーンに悪影響していることは否めない。まず真っ先にコストカットの対象とされたであろう、一枚絵における主人公の姿が性器含めて全て半透明というのは分かりやすいガッカリポイントだ。加えて、一枚絵が立ち絵と同等のクオリティに保たれているヒロインは三峰いずみ八重咲エリカの二人だけで、残りのヒロインはどの一枚絵をとっても構図・塗り・表情などイマイチな点が見受けられるのは残念。

特に肝心要のハーレムエッチはヒロイン5人を同じような格好で並べたものばかりで構図的な面白さもなく、加えて一枚絵にキャラクターを収めるべく配置とサイズに相当苦心した形跡がそのまま違和感として残っており、誰の目にも明らかにクオリティが低い。ここが本作一番の減点ポイントだろう。

声優陣も香奈役の八尋まみ以外はスキル的にやや難ありで、不自然な声のよれなどが目立つ。しかし、この点に関してはキャラクター自体の魅力が非常に大きいことでいくらかカバーされており、個人的には慣れが勝った。

エッチシーンに関してこれは余談なのだが、恐らく本作はエロゲー史上で最もたくさん「排卵日」というワードを用いたエロゲーであると推測する。三年間という長いスパンの物語の中で大量のエッチシーンがカットされているが、きっとカットされないための基準はヒロインが排卵日であるか否かである。それくらい、ほぼ全てのエッチシーンで「排卵日」というワードが用いられている。ギネス認定である。

そもそもが美少女とエッチしたいという都合のいい妄想を実現するエロゲーという物語媒体の上に、これでもかと都合のいい設定を搭載した本作は、ご都合主義であること自体が遥か手前の前提条件にある。故に、他の物語媒体の作品ではまず考えられないくらいにいい加減で、しょうもなくて、そして何より気持ちいい物語を展開してくれるのだ。

欠点も数多く、いわゆる世間的な「よく出来たエロゲー」像からは遠く離れる位置にあるかもしれないが、しかし強烈な魅力を孕んだエロゲーとして個人的には忘れられない一作となった。

最後に、やっぱりエロゲーオタクとしては好きにならざるをえない名言・金言製造マシーンである香奈の名台詞を2つ頂戴して、本稿を締めくくろう。

「これはエロゲーですから。気持ちよければ良いのです」、そして「シナリオ厨は帰れっ!」

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