『sense off 〜a sacred story in the wind〜』レビュー

"物語が飛躍する瞬間"

Sense Off

Sense Off

posted with amazlet at 16.08.29
otherwise (2000-08-18)
点数ブランドプレイ時間
75点otherwise約15時間
シナリオ
元長柾木、シュート彦
原画
ゆうろ
紹介サイト
Sense Off 〜a sacred story in the wind〜 | 13cm OnLine
備考
 

はじめに。本作は巷では「理系向けエロゲ」と呼ばれていたりいなかったりするらしいが、本作で用いられる理系用語はだいたいハッタリ用の一発ネタで、本当に理解の必要がある用語については最低限の説明がされているように感じた。従って、本作が気になる方は文系理系の枠に囚われずに是非手にとっていただきたい。

主人公・杜浦直哉(名前変更可)は軽い事故で運ばれた病院で検査を受けた結果、特殊な脳波の形をしていることが発覚する。翌日、特殊な能力を研究しているという認識力学研究所から二人の研究者が直哉のもとに訪れ、協力のために研究所に住み込みで生活してもらいたいと要請される。

何の変哲もない地方都市に造設されている認識力学研究所は若年齢者を研究協力者として招き入れていることもあり、特別な認可を受けて教育機関としても機能している。こうして、何やら特殊な能力を有した同年代の男女が集う、変則的な全寮制学園モノとしての舞台が整った。

理数系科目ならば大学レベルの問題も余裕でこなす直哉は、はっきり変人である。その脈絡のない言動に、10年ぶりに再開した幼馴染の織永成瀬は笑顔でつきあい、攻撃的なツンデレヒロインの埴島珠季は呆れつつ口撃、関西出身の元気娘である三条美凪は負けじと自由な言動で周囲をかき回す。

そんなヒロインたちとの日々代わり映えのない研究所生活がシナリオ中盤まで緩やかに進行する。そのあまりの代わり映えのなさには退屈と感じる方も多いだろう。

ルート分岐が確定してからは対象ヒロインが認識力学研究所に住んでいる理由である特殊な能力に絡んで、その苦悩と孤独が描かれる。それが直哉と恋仲になることで次第に癒やされていき……と、ここまではある程度ありがちな流れで物語は進行していくのだが。

ここで、本作最大の魅力を断言しよう。それは全てのルートにおいて、ストーリー終盤にプレイヤーをあっと驚かせるような「飛躍」を用意している点である。

それまでの「ああ、この物語は代わり映えのない、よく見知った流れのまま進行するのかな」という感覚を置き去りにして、唖然とするような急展開を見せて物語を落とすのである。そういう意味ではかなり歪なストーリーテリングをしていると言える。

直哉とヒロインが、互いを好きになって一緒にいたいと願う。そんな陳腐でチープなメカニズムが、想像を超えるような規模のバックストーリーと繋がってしまう。そうやって、副題にも掲げられる「a sacred story(聖なる物語)」に恥じない壮大な何かを浮き上がらせるのだ。

個々のルートで描かれる物語は、それぞれのルートで判明する世界観設定を互いに参照しているため、恐らく最初にプレイするルートではただ驚くだけでその意味はほとんど理解できないだろう。逆に言えば、攻略を進めていくに従ってそれまでにプレイしてきたルートで語られた言葉やイメージの意味が段々と補強されていくこととなる。

また、理解不能なら理解不能なりに、その驚きの結末を迎えて流れる第一エンディング曲「コズミック・ラン」の切ないサウンドと、そこから更に一捻りを効かせたエピローグが展開されてからの第二エンディング曲「birthday eve」の意味深長な歌詞に触れることで、「何だかよく分からないけどすごい体験をしてしまった」と感じさせるマジックにかけられてしまう

物語の飛躍と2つの秀逸なエンディング曲、それに加えて理数系の用語を交えながらゲーム全体が示そうとしている難解そうな哲学的テーマ。これらの要素が引き起こすマジック(あるいはハッタリ)が、「完成度」という尺度では表せない不思議な魅力を本作に与えているように感じた。

個人的には物語の飛躍に加えて、語り口すらも飛躍させてしまうという大技をかます真壁椎子ルートが一番のお気に入り。小動物系おどおど後輩ヒロインとの教える/教えられる関係性もツボである。

発売が2000年ということもあり今の基準で見るともちろん厳しいところもある。特にシステム面は相当難ありだし、(ここに期待する方は少ないだろうが)エッチシーンの描写の素っ気なさは度肝を抜くレベルだ。

また、私が肯定的に評した物語の飛躍についても「駆け足」「唐突」「ご都合主義」と、いくらでもネガティブに捉えることができるだろう。しかし、それを何故だかポジティブに捉えてしまう、そう誘導されていると分かっていてもしかし感嘆としてしまう――故にマジックなのである。このマジックにかかるかどうかは人それぞれなので、そういう意味では人を選ぶタイプの作品かもしれない

ところで、作中で飛び出すビックリ文字列「mowerghw/aikhfoia」「CUGHFUIQ;NKDFHQD」について、元ネタなどの詳細をご存知の方がおられましたらツイッターでご教授ください。よろしくお願いします。

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