ディスコミュニケーション・コメディ – 『ノラと皇女と野良猫ハート』をプレイ1

はじめに

『ノラと皇女と野良猫ハート』をプレイ中。

HARUKAZEの作品は処女作の『らぶおぶ恋愛皇帝 of LOVE!』もプレイ済み。お気に入りの一作だ。
そこで、前々から「ディスコミュニケーション・コメディ」の名手としてシナリオライターのはとについての文章をまとめたいなあと思っていた。

その折、本日攻略したばかりの夕莉シャチのルートが個人的に大変ツボだったため、いよいよ何かしら記録しておかなきゃと筆をとった次第である。

ディスコミュニケーション・コメディ

はとがメインライターを務めたゲームの中で私がプレイしたものは先述の『らぶおぶ〜』に加えて、同人ブランドnon colorから発売された『わーすと☆コンタクト ~死神彼女と宇宙人~』がある。

『らぶおぶ〜』も高く評価しているが、『わーすと☆コンタクト』はそれすら超えて今では好きなエロゲー10選に挙げざるを得ないほどに好きな作品である。

しかも、この作品に対する私の評価はクリア直後から現在に至るまで上がり続けている。
それは本作のあるシーンが好きすぎるがあまり、そのシーンを中心に何度も再プレイしているからだ。

そのシーンとは、主人公の高田綾高がゾモゾ星人たちに拉致され、「文化交流」という名目でゾモゾ人であるサラサと共同生活をさせられてしまうという一連のシーンだ。

中途半端に地球の言語を操れるサラサとの対話はまるで熊と格闘するようなものだ。

サラサ「あぁ、仕事か。仕事は、みんごっそーしてる」
サラサ「みんごっそーはビデオの会員証。アクションスターと手巻き寿司つっこむ」

こんなレベルの支離滅裂を極めたセリフのオンパレードなのである。
意味と言葉がまるで結びつかない文字列と音声とがポンポンと放り投げられる中、綾高はなんとかしてサラサとのコミュニケーションを試みなければならない。それは生き残るためだ。
だから必死になってサラサの話す言葉を理解し、こちらの言葉を理解させようとする。そうして綾高が必死になればなるほど、歴然としたコミュニケーション不可能性をまざまざと見せつけられる。

話の通じない相手と話をすることはできない。当然だ。しかし、話をしなければ身に危険が生じる。ディスコミュニケーションなシチュエーションの上で、それでもなんとかコミュニケーションを成立させなければならない、その壮大な空回りっぷりを抱腹絶倒の喜劇として描いている。

もちろんこれを喜劇として成り立たせているのは、ライターの類い稀な言語的センスの賜物であることはいうまでもない。どこかの下手くそなライターがこれをそのまま真似しようがものなら、ただ支離滅裂なばかり目も当てられないストレステスト文学になるだろうことは想像に難くない。
そんな危ういバランスで成り立つ『わーすと☆コンタクト』は私にとって生涯で一番、腹がよじれるほど笑ったエロゲーなのであった。

ここで用いられるディスコミュニケーション・コメディの手法は『ノラと皇女と野良猫ハート』でも主に序盤で展開される。

パトリシアは冥界からやってきた皇女。地上の文化をまるで知らない彼女と主人公の反田ノラとのコンタクトは典型的なカルチャーギャップ・コメディで、例えばパトリシアは本はすべて魔導書だと思い込んでいるあまり、エロ本をも「命の魔導書」と解釈してしまうシーンにはたまらなかった。序盤のつかみとしてガッチリと笑いを取ってくる。
そして本作最大のギミックである「主人公が猫になってしまう」という展開の後はまさしくディスコミュニケーションに直面した主人公がてんやわんや頑張るというものだ。
猫になったノラは頑張って自分がノラだとヒロインたちに伝えようとする。けど伝わらない。伝わるわけがない。だから色んな方法を試してみるが、どれも上手くいかない、いきようがない。でも頑張る、頑張るしかない、伝われ、伝わってくれ、でもやっぱり伝わらない……そんな七転八倒を客観的に見せるから面白く、笑えるのだ。

ルート別短評

明日原ユウキルート

個人的には低評価。クリア後のツイートを掲載。

夕莉シャチルート

すごくお気に入り。シャチというヒロイン自体がかなり好き。

実はこのツイートでほとんど語り尽くせている(それくらい物語の中身はない)のだが、それを補足する形で次の詩を並べておきたい。

時は春、

日は朝、
朝は七時、
片岡に露みちて、
揚雲雀なのりいで、
蝸牛枝に這ひ、
神、そらに知ろしめす。

すべて世は事も無し。

——『春の朝(あした)』ロバート・ブラウニング(上田敏 訳)

ただただ「シャチが幸せである」ということをあるギミックを用いることで間接的に語るこのルートは、物語的には何も起こらない。なぜならば、何かが起こるということは、シャチが幸せじゃないということだから。
そんなシチュエーション構築の秀逸さにえらく感心したのだ。誰がなんと言おうとお気に入りのルートである。

……ただ、最初のエッチシーンのだだ甘っぷりはやりすぎかなと感じたけどね。正直ちょっと引いたけど、以降のシーンはノーマルに振ってて助かった。

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