『まいてつ』レビュー

"めちゃくちゃリッチで、ちょっとヘンテコリンな、愛らしい一作"

まいてつ 第3刷

まいてつ 第3刷

posted with amazlet at 17.09.17
Lose (2017-03-31)
点数ブランドプレイ時間
80点Lose約30時間
シナリオ
進行豹
原画
Cura
紹介サイト
まいてつ | デジタルノベルブランド Lose
備考
・アペンド要素「まいてつ Hシーン大増量パッチ」有り


私に鉄道趣味はないのだが、『まいてつ』をプレイしていくつか学んだことがある。蒸気機関車には、本能的なノスタルジーを掻き立てられる。鉄道は、点と点とを結ぶ線となる。そして鉄道趣味は、鉄の字の通り金を失う。

本作は製作者の鉄道趣味が全開のエロゲーだ。あるモノをモチーフとした作品はしばしばそのモノ自体を擬人化・美少女化するものだが、本作のそれは少し捻った設定で間接的に(ロリ度高めで)擬人化するに留めて、あくまで機関車そのもの、鉄道そのものを愛でようという気概が感じられる。はっきり言おう、エロゲーとしてはなかなか無茶な企画である。

世界観を見てみよう。本作の舞台は日ノ本は隈本県の御一夜市。エアクラ機関という革新的な動力の登場により機関車の類はその役目を奪われ、各地の鉄道路線が廃線へと追い込まれた大廃線時代も今や過ぎ去りし過去である。それに伴い鉄道車両の運転・整備を補助する人型・人形型モジュールであるレイルロオドもその多くが廃用されてしまった。

進学のため御一夜市を離れていた主人公・右田 双鉄は、御一夜市へのエアクラ工場誘致計画を撤回させることを目的に帰郷する。かつて大廃線末期に蒸気機関車の脱線転覆事故により家族を喪い、養子として右田家に引き取られた双鉄は、既に亡くなっている義祖父の所有物であった蒸気機関車8620の専用レイルロオドであるハチロクを目覚めさせ、そのオーナーとなる。

ハチロクの目覚めをきっかけに、蒸気機関車8620を主軸においた観光振興を打ち立てることでエアクラ工場誘致計画を退けようと思い立った双鉄は、義理の妹である日々姫や、御一夜市長 兼 御一夜鉄道株式会社社長である雛衣 ポーレットらと共に8620復活のために奔走する――というあらすじ。意外に思われるかもしれないが、結構SFである。

鉄道や観光振興といった個人の資金力では如何ともしがたい題材を成り立たせるため、本作は現実的な市政の描写にも力を入れることで物語に現実味を与えている。それと同時に本作はエロゲーであるからして、御一夜市長であるポーレットは当然のことながらうら若き美少女である。

このリアルでは絶対ありえないが、しかしリアリティはあるというどこかヘンテコリンなバランスは「鉄道を題材としたエロゲー」という企画の無茶さがもたらした結果であることは想像に難くない。

例えばポーレットの特異な立場や、サブヒロインである宝生 稀咲の学園生 兼 隈元銀行御一夜支店長という肩書を指して「リアルでない」と非難することは簡単だ。しかし、個人的には本作を通してやりたいこと(鉄道趣味)を優先するため、その障害をエロゲー的ご都合主義で手際よく処理する潔さに好感を持った。

本作のヘンテコリンさにもう少し言及すると、主人公の双鉄も結構変わったキャラクターである。エアクラ工場誘致反対派の旗頭となるだけあって、体力・知力・活力を備えた完璧超人系主人公なのだが、それと同時に極度の女性経験の無さからくるマジメ過ぎる言動と古風な台詞回しで少々とっつきにくい。

この主人公のキャラクター性――単刀直入に言えば人畜無害さが、恋愛ドラマ的な盛り上がりを損ねている所もあるのだが、一方で複数のヒロインとの同時混浴という不自然なエロゲー的サービスシチュエーションを引き出すことに貢献している。余談だが、各ヒロインの全裸立ち絵には小ネタが仕込まれてるのでちゃんとチェックすること。

もちろん、本作の特徴はヘンテコリンさだけではない。もうひとつの特徴としてリッチさを挙げたい。ノベルゲームとしての快適さを追求したブックマークシステム、メインヒロイン毎に用意された3本のオープニングムービー、OP・ED合わせて計12曲ものボーカル曲、鉄道用語を中心に作内用語をボイス付きで解説する豊富なTIPS……その他様々な要素が非常に高いレベルで充実している。

とりわけ本作のリッチさが一番伝わりやすいポイントは静止画像を3D風にアニメーションさせるE-moteを全ての立ち絵と一枚絵に活用したそのビジュアルだろう。立ち絵の可愛さ増強や、エッチシーンでのインパクトはもちろんのこと、ドラマ的にも要所要所で見事な演技を静止画に振り付けることに成功しており、その労力を思うと頭が下がる思いだ。

本作のリッチさに関連して、ここは好き嫌いが分かれそうなところだが、シナリオ展開全般については良く言えば品があり、悪く言えば地味である。しかし、鉄道という出汁が素朴な味にしっかりと染みていることは書き添えておこう。特に、ポーレットルートにおける「鉄道」のテーマ的昇華には個人的にグッときたポイントだ。

加えて、最後に解放されるグランドルート「劇場版総集編『まいてつ』」(筆者命名)の思い切りの良い展開がそれまでの地味な印象を吹き飛ばしてくれる。他の楽曲と比べて圧倒的にアップテンポな『ナインスターズ』『未来行き☆列車』の二曲のグランドルート用ボーカル曲で作品全体を締める構成もお見事。

明確な欠点もいくつか挙げよう。8620復活に立ちはだかる課題を解決する手段を登場人物が思いつくと、その手段を実施するシーンを飛ばして結果だけを見せるという話運びが続くため、その大変さが全く伝わらない。まあ、その過程を丁寧に描写したところでそれが面白いかは微妙なところだが……。

また、エッチシーンはE-moteを活かしたアニメーションがエロく、数も多く揃えられているのだが、ストーリーに組み込まれていない(進行に応じて回想シーンが追加される仕様)こともあって少々おざなりな印象を受けた。具体的には双鉄のキャラクターが変わりすぎ、加えて早漏すぎといったところか。

とにもかくにも、よくこんな趣味性の強い企画を、ここまで時間と金と才能を潤沢に投じて形にしたものだと思う。鉄道趣味でなくとも、ロリコンでなくとも、一定の満足感は得られるだろう高い完成度と同時に、どこか完璧すぎない愛らしさをも携えたキュートな一作としてオススメしたい。


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