【ネタバレ有り】テーマと構成について – 『君と目覚める幾つかの方法』をプレイ その2

はじめに

『君と目覚める幾つかの方法』の攻略が完了した。

そんなワケで先にドバっとバレ有り感想を吐き出そうという記事。

以下、作品の基礎情報もかっ飛ばして全編攻略完了済みの方向けに本作のテーマと構成について書き記したい。
直接的なストーリーのネタバレはおろか、あんなシーンやこんなシーンのセリフ引用もマシマシで。

上のツイートからもうかがえるように、できるだけ白紙の状態でプレイするのが望ましいタイプの作品なので未プレイの方は後日投稿するバレ無しのレビューをお待ち頂きたい。

ということで、以下はネタバレ注意。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

テーマについて

最初に本作の物語のテーマについて片付けてしまおう。
本作の世界観設定で無視できないのはやはりオートマタの存在だ。

美少女アンドロイドは古来より連綿と続く定番属性。
特に主人公の宗介が所有するマキノはたまにドジをしでかすという設定が施されており、伊奈モータースの制服と称してメイド服を身にまとった伝統的なドジっ子メイドロボだ。

とまあそんなエロゲー的お約束を果たしつつ、一方で本作のオートマタたちにはある重要な役割が与えられている。
その役割とは、本質的に利他的な存在であるということだ。

【マキノ】
「ん~……マキノたち、人間に付き従うべき存在としてデザインされてるわけだから、同等に見られることに抵抗感がある……とか?」

【アイル】
「自らは人の道具であるという意識が……魂の存在を拒絶している、ということでしょうか」

――舞花ルートより

オートマタは人によってプログラムされた存在だ。
人に危害を加えられないといった制約の元で作られ、自らのオーナーに尽くすことを第一義とする。
それは、見た目が人間そっくりであるが故にある種の違和感を産む。
何故なら人間は利己的なところが多分にあるから。人間の姿形をしながらいつでも利他的な行動を採るオートマタを純粋に人として見ることは難しい。

そのことを強調するかのように、本作にはいかにも人間らしい、利己的な人物が多数登場する。

まずは何と言っても初音の両親。
贅沢のために蕩尽した彼らは自ら生活水準を落とさないために娘である初音に食事を与えることをやめ、最後には彼女の脚を売り払ってしまう。

続いて初音の親戚である岩島夫妻。
両親を喪った初音の保護をはじめは拒否しつつも、母の介護の一助になるだろうと引き取ることを決めるのだが、彼女の脚が義足と分かるやいなや激高して帰ってしまう。

そしてトドメは敵役となる上大月誠一郎。
自らのビジネスの障害となる者の全てを非情に排除する。それがたとえ自分と血の繋がりがある実の娘であろうとも――。

ここで名前が挙がったのはすべて、初音と血縁関係にある人物だ。

特に両親の影響の大きい初音は、利己的な彼らの振る舞いに抑圧され流されるだけの存在だった。
自らの脚を差し出すというのは親に対する利他的行為とも映るが、しかし虐待を受けていた彼女はまだまだ子供でそれが自らの意志による行為であるとは言えない。

そんな、まだ利己的にも利他的にも振る舞えない初音が出逢ったのが宗介たちだ。

宗介はかつて事故により重症を負い、その際に八雲家を中心とした多くの人たちの利他的な行為を全身に受けて現在に至る。
だからこそ似た境遇にある初音に対して感情移入してしまう。それが危険であることを承知の上で彼女を保護することに全力を尽くす。

人間は利己的なところが多分にある。その一方で、利他的な行動を採ることもできる。
作中では恐らく直接的に「利己」「利他」といった単語は出てきていないが、それらのどちらか一方だけでないという人間の複雑さを描き出すことこそが本作のメインテーマであり、オートマタという設定の狙いであると私は思った。

最終章でニース・ヴィルが宗介に対して仕掛けた最後の罠を思い出そう。

選べ……と。
自分か、無関係の人間か。
ウィルスの駆除を優先すれば、たくさんの人が死ぬ。
ハッキングを優先すれば、俺は……。
……。
ニースはまだ、死んじゃない。
ウィルスとして、武装したオートマタとして。
純粋な悪意となって、俺を蝕んでいる。

――最終章より

そのものズバリ、利己的な行為と利他的な行為のどちらを選択するかと迫るものだ。
ご存知の通り、この問いに対して宗介は物語の主人公(ヒーロー)として崇高な行為を選択する。そして、その選択に説得力を持たせるのがこのシーンの後、初音エンドのエピローグで交わされる次の会話だ。

【枚方初音】
「たまに、思い出すんです。宗介さんと……話したこと」

【伊奈宗介】
「俺と?」

【枚方初音】
「はい。わたしが自爆して、告白しちゃって……宗介さんが、電脳のことを、話してくれたときのこと」
【枚方初音】
「そのとき……覚えてますか? 宗介さん、自分は半分オートマタだから……って、笑ったんです」

【伊奈宗介】
「ああ……。言ったね、そんなこと」

【枚方初音】
「そのとき……言おうとして、言えなかったことがあるんです。無神経かな……って、思っちゃって。でも……言ってみても、いいですか?」

【伊奈宗介】
「うん。聞かせてほしい」

【枚方初音】
「……」
【枚方初音】
「わたしも、体の半分は、オートマタです……。って」
【枚方初音】
「半分オートマタだから、他の人に気を使っちゃうなら……わたしも、同じですから。って」
【枚方初音】
「頼ってください。困ったときは。わたしはまだまだ弱いけど、がんばって、支えたいです」

――最終章 初音エンド エピローグより

利己的な人間と、利他的なオートマタ。
宗介はその両方の性質を併せ持つ複雑な”人間”なのだ。だからこそ、多くの人が選択することを躊躇う決断を下すことができた。

そんな宗介から利他的な優しさを受けとった初音もまた、かつての流されるままの子供からやはり複雑な人間へと成長し、これからの人生を大切な誰かを支えながら生きていく。そんな希望に満ち溢れたエンディングである。

大好きな人ができました。大切な人たちが、できました。

すべてのルートをコンプリートした後のタイトル画面に表示されるのは家族写真だ。
血縁関係はないけれど、お互いを大切に想い合う大好きな人達の笑顔が並んだその光景に、思わず涙腺が緩んだ。

構成とトリックについて

「テーマについて」ではゲーム終盤の話に偏ってしまったが、本作を語る上で外せない(故にバレ無しで語るのが難しい)ポイントとしてゲーム全体の構成が挙げられる。

早い段階からこれはレビューで書かないほうが良いなあと感じていたのが、結構はっきりと章立て構成になっているという点。
ストーリー上の切れ目がはっきりしており、章ごとに雰囲気がガラリと変わる。しかも、本作の中盤の山場でもあるトリック演出にもこの構成が活かされているというのがその理由だ。

人によってカウントの仕方は異なるかもしれないが、私は「最終章」を含めて本作は以下のような4章構成であると見ている。

この図をもとに、「共通ルートの最後に置かれたクライマックス」、「第二章のトリック」、「最終章のトリック」の三点について見ていきたい。

共通ルートの最後に置かれたクライマックス

本作は上の図で言うと第二章の最後に上大月との決着という物語上のクライマックスが置かれている。
より正確に表現するならば、個別ルートの分岐が生じる前に全てのヒロインが絡んだ大きな一本道のドラマを先に終わらせてしまう構成であると言えるだろか。

このタイプの構成を試みている他作品といえば、私がプレイした中では『らぶおぶ恋愛皇帝 of LOVE!』が挙げられる。

この構成によるメリットは幾つか考えられるが、やはり大きいのは個別ルート前に一つの長い物語が終わらせられるためルート分岐というゲームならではの難しい問題を回避できることだろう。

一本道の物語ゆえのカタルシスが分岐によって分散されることなく展開でき、すべてのヒロインの活躍をひとつのクライマックスに向けて用意できる。

更に本作の場合は、この構成によって生じる「共通ルートの尺が長くなる」という特徴を活かした「第二章のトリック」に繋がる。

第二章のトリック

ここで述べる「第二章のトリック」とは、上の図で言えば第二章の「舞花視点」前後の展開のことを指す。

みことの正体に気づいた宗介がみことにより射殺され、アイル、マキノ、初音の三人がニース・ヴィルにより誘拐され行方不明となる。
それから二ヶ月後、舞花は伊奈モータースの面々を探し出すために孤軍奮闘するが……という展開。

ご存知の通りこの一連の展開は上大月を騙すための罠なのだが、これが罠であることはプレイヤーにも伏せられている。
特にニース・ヴィルの下りは宗介が彼女にハッキングして植え付けた偽の記憶のシーンを混ぜ込むことで本格的にプレイヤーを騙しにかかってきている。

いわゆる信頼できない語り手を用いたトリックだ。

この一連のトリックで一番ビックリしたポイントはずばり、主要登場人物がほぼ退場したが物語は続く、というところだ。
この辺りの演出は本当に秀逸。伊奈モータースの面々が全滅、上大月も自らの勝利を確信――というシーンを経て、夜の伊奈モータースに一人佇む舞花が閉じていた目を開けてからの舞花視点への移行。ゾクッと来た。

もちろん話が続くのであれば宗介たちは十中八九生きているのだろうと考える。
しかし、もしかしたら本当に死んだまま話を展開するのではと思わせる布石を第一章から打っているのである。

その布石とは、ルートロックを臭わせる選択肢とバッドエンドの存在だ。

第一章の選択肢はすべて、その最後に初音が伊奈モータースに残るか否かを分岐させる機能を持つ。
しかしその選択肢の内容は一見すると初音以外のヒロインである舞花、みことと接近するか否かというもので、この二人に接近する方の選択肢を選ぶと結果的に初音は伊奈モータースを去ることとなり、バッドエンドが確定するのだ†01本作にはヒントモードが有るためこれを用いればバッドエンドになる選択肢が分かる。
しかし私は基本的にヒント系機能はオフにしてプレイする、かつセンターヒロインは最後にプレイするというプレイスタイルのため、初音が伊奈モータースに残る選択を取るまで時間がかかった。

この作りからプレイヤーは舞花とみことのルートはロックされていて、はじめは今読んでいる宗介たちが上大月にやられてしまうルートを読む必要があるのだろうとミスリードしてしまう。
だからこそ、裁判の場に初音が登場するシーンでプレイヤーは上大月と共に驚くことができるという作りなわけだ。

この鮮やかなトリックは最終章で反復される。
しかし、最終章でのトリックはプレイヤーの視点の置き所に失敗しており第二章のトリックほど大きな効果が得られなかったと考える。

最終章のトリック

先程も掲載したツイートだが、まだ触れていなかった「いくつか言いたいことはある」とは主に最終章におけるトリックについてである。

最終章のトリックは本質的には第二章のトリックの繰り返しだ。
違いはそこにバッドエンドを織り交ぜたところにある。

ニース・ヴィルが現れたことに気づいた宗介がどのような選択を取るかによって宗介と初音の生死が決まる。
誤った選択を採るとご丁寧にもバッドエンドムービーが流れるのだが、実ははじめて最終章をプレイした際に表示される選択肢は全てハズレなのである。

ここで全てのハズレの選択肢を通ったあと(つまりバッドエンドムービーを三回見せられたあと)に表示される新たな選択肢によってはじめて状況が打開される。
それを選んだあとのシーン展開は同じ、やはり二人は殺され、バッドエンドムービーが流れる。
しかし、その直後にこれまでのようにタイトル画面に戻されるのではない新たな展開が始まる。

また騙された気分はどうだ。
ニース・ヴィル

――最終章より

プレイヤーがこれまで見てきたバッドエンドと同様な展開である宗介と初音が死と、ニースの復讐の成就といったバッドエンド(上の図でいう「バッドエンド?」)はここではなかったことにされる。
この周回で見てきたものは復讐の成就というニースの願望が夢として描写されただけ。つまり、ここでも信頼できない語り手をやっているわけだ。
そして実際は宗介にハッキングされたニースは運動機能を奪われ敗北していた……というトリック。

このようにバッドエンドを繰り返し見せ、新たな開放された選択肢を進んでもまた同じ展開……と見せかけて、というトリック自体はゲームならではの驚かせ方として悪くないと思うのだが、いかんせん演出がよろしくない。

ニールが夢から覚めると、殺したはずの宗介と初音、そしてアイルとマキノがいる。
そのことをムービーで見せるところまでは良いのだが、そのままの4人を映した一枚絵で話が進行するのはいただけない。
これだとプレイヤーの視点が(宗介と初音の死を望んでいる)ニース寄りになってしまう。
この視点の置き方のせいで、その後のシーンのやり取りが非常に居心地の悪いものになってしまっている。

本来このシーンで見せるべきは、宗介の視点で床に伏したニースの姿であるはずだ。
復讐に失敗し、苦渋に顔を歪めたニースの表情であるはずだ。
ぶっちゃけそれを見て「ざまぁ!」と言わせてほしかった。

何度も気分の悪いバッドエンドを見せられたのだから、ここでその元凶であるニースが敗れる姿をはっきりと見せるべきだったのだ。

第二章でもプレイヤーは悪役と共に宗介たちによって騙される。
しかし、そこでは直前まで勝利のためにもがく舞花の姿が描かれ、その結果として虚を衝かれた上大月の驚愕の表情があったからこそ、プレイヤーは宗介側の視点に立ってカタルシスを得られる作りだった。

最終章はよりプレイヤーにストレスを与える手法を取り入れて騙しにかかったが、最後の大ポカのせいで納得できない、腑に落ちない感じになってしまっている。そのことが大変惜しいと感じた。

おわりに

バレ無しレビュー、マジでどうまとめよう……。

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『君と目覚める幾つかの方法』レビュー
ファーストインプレッション – 『君と目覚める幾つかの方法』をプレイ その1

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脚注   [ + ]

01. 本作にはヒントモードが有るためこれを用いればバッドエンドになる選択肢が分かる。
しかし私は基本的にヒント系機能はオフにしてプレイする、かつセンターヒロインは最後にプレイするというプレイスタイルのため、初音が伊奈モータースに残る選択を取るまで時間がかかった。

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