ファーストインプレッション – 『みにくいモジカの子』をプレイ その1

はじめに

ニトロプラス最新作『みにくいモジカの子』のプレイを開始。

個人的に最高クラスに評価している『スマガ』『君と彼女と彼女の恋。』『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ>』のシナリオライター・下倉バイオさんの最新作ということで、「character1 2017」での「必見緊急告恥」の初報から高く期待していた一作だ。

現在のところ一回エンディングを迎え、四月一日 胡頽子(つぼみ ぐみ)ルートを攻略完了。
その段階でのテンション的には以下のツイートの通り。

実はこのハイテンション状態でその数時間後にはニトロプラス美少女ゲームトークショーへと馳せ参じたのだが、それはまた別のお話†01

胡頽子ルートについてはある程度バレ有りで書きたいので後の記事に回すとし、この記事ではバレ無しで、第一印象だけを書き残したい。
そもそも見た目一発でもう特徴的なエロゲーなので、第一印象だけで”文字化”したいことはわんさかあるのだ。

ゲーム画面=主人公の視界

本作は「画面に映っているのは主人公の視界である」という見せ方にできる限りこだわっている。

そのこだわりの中で個人的に一番驚いたのはマウスポインタが表示されないことで、タイトル画面や設定画面といった物語外でのみ、ぼんやりとした円で表現されるに留まる。
そりゃあ常に視界の中を白い矢印が虫のごとく飛び回ってたら1時間ももたず発狂してしまう。故に妥当な演出と言える。

マウスポインタが表示されないので、もちろんゲーム画面にはクリックを誘うようなGUI(グラフィカルインターフェース)は何一つ設置されていない
今この記事を読んでいるあなた視界にはテキストウィンドウやスキップボタン、はたまた日付表示などといったHUD(ヘッドアップディスプレイ)がオーバーレイ表示されていないはずだ。
もしも、あなたが何らかのARデバイスを装着していないならば。そう言えばスマートグラスって結局どうなってるんすか? 流行るんすか?

唯一、「画面に映るものは主人公の視界である」と言い張るには嘘を吐いている部分として、主人公の思考や登場人物の音声が画面中央にテキストとして表示されることが挙げられる。
それでもあえて画面中央表示というのがミソだ。プレイヤー側に寄り添って都合よく下部に表示したりはしないのである。

そもそも下倉バイオさんが手がけた作品は特に『君と彼女と彼女の恋。』以降、ゲーム画面=主人公の視界という演出を意識的に取り入れていた。
例えば、『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ>』では主人公たちがエクスブレインというデバイスを頭に装着し、戦闘をサポートするサジェストがエクスブレイン上にオーバーレイされることで画面上にもそのまま表示されるという描写をしていた。

『みにくいモジカの子』はそんなゲーム画面=主人公の視界という演出の最新発展版、かつそれをほぼ全編に渡って導入している。
本作をクリア後にどう評価するかは現時点では不明だが、少なくとも、そしてやっぱり前作・前々作に続いて、「意欲作」という言葉を使わずにはいられないことは確かだろう。

絵にも描けない醜さの主人公

画面に映るものが主人公の視界であるならば、鏡などのギミックを用いない限り絶対に画面に映らないものがある†02
そう、主人公自身の顔だ。

話は少し変わるが、かつて私は名作『LOVELY×CATION2』をプレイしたときにこんなツイートをした。

そして、以前のような妥協を見せていた私は今やもういない。
「絶対☆主観CG原理主義!!」†03を標榜するようになった私は今日もツイッターで「主観じゃないキスCGはクソ」と過激にヘイトスピーチを撒き散らしてアカウントロックされるのだ。

それはともかく、主人公の顔が画面に映らないということを先回りして「絵にも描けない醜さ」と描写することで保証したのはなかなかの発明だと思った。

モジカ

さて、本作のメインギミックである「モジカ」=「文字化」の登場だ。

主人公である種崎 捨(たねざき すてる)は他人の顔を見ることでその人の心を視ることができる。
そして先述したとおりに絵にも描けない醜さの顔を持つ捨にとって、その能力を持つこと自体が地獄そのものなのだ。
自分の顔を目にした他者が抗いようもなく心に浮かべた生理的嫌悪感が、それを音声とするまでもなく勝手に言葉の暴力として襲いかかってくるのだから。

だから捨はいつも下を向いている。人の顔が視界に入ることがないように。

僕の世界は半径120cm。
身長は160cmだから、3:4:5……
一番遠い地面まで直線距離でたった2m。
ここが僕の生きる世界だ。

『みにくいモジカの子』捨の独白

主人公の見える範囲が作品世界であると規定するならば、基本的に主人公の見える世界を追随するしかないプレイヤーの世界もその範囲に限られる。
だから本作はエロゲー史上でも類を見ないほど人の顔が画面に映らない。裏を返せば、エロゲー史上でも類を見ないほどに主人公の足を長く見続けることとなる。

そんな作品だからこそ、最初に人の顔が映り、モジカが発現する体験版での双葉 みゆのシーンはインパクト絶大だ。
足元から始まり、決死の覚悟をもって顔を上げていく。
先述したトークショーで聞いた話だが、本作の演出を担当されたおがみけいちさんによれば、捨が顔を上げるということのハードルの高さを表現するために5回のクリックをプレイヤーに要求する作りにしたという。
その画面演出と高鳴る心音、そして顔を上げた先の地獄絵図といい、これ以外に考えられないバランスに仕上がっているのではないかと感じた。

とまあ、ここでは先に述べてた演出プランとの関連としてモジカというギミックを追ってみてみたが、そもそもこのモジカというギミックを用いて何を描こうとしているかについては後のバレ有り記事に回すとしよう。

おわりに

そもそものお話。
今回述べたことは私が過去に度々ツイートしている「こんなエロゲーいいな、できたらいいな♪」とぼんやり考えていたエロゲー像であり、『みにくいモジカの子』はそのアイデアにかなり近い演出を採用しているのだ。

そういう意味で私と本作の相性はバッチリということであり、胡頽子ルートのクライマックスで号泣したのもそこで描かれている題材を思えばそりゃそうだと。

聞くところによると難易度は結構高いとのことだが、私はよほどでない限り†04攻略サイトを見ない流派のエロゲーマーであるため、本作も最後まで攻略を見ずに進めていきたいと思う。

関連記事リンク

『みにくいモジカの子』レビュー
【ネタバレ有り】胡頽子ルート号泣 – 『みにくいモジカの子』をプレイ その2
【ネタバレ有り】エロゲー流の人間讃歌 – 『みにくいモジカの子』をプレイ その3

みにくいモジカの子 通常版
ニトロプラス (2018-09-28)

脚注

脚注
01とは言えオフレコトークも沢山あったので記事にするのは厳しい。
02ここで一例として某傑作SF系美少女ゲームのタイトルを挙げるとたぶん方々から怒られる。
03兄とは永遠に報われない生き物なのさADV
04『THE GOD OF DEATH』とか。
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