『クリミナルボーダー 3rd offence』レビュー

"ひび割れから差し込む光"


クリミナルボーダー 3rd offence(Amazon)

点数ブランド発売日
55点Purple software2023-11-24
シナリオ
かずきふみ
原画
さめまんま、CHIHIRO
紹介サイト
3rd Offence メリル・ハサウェイ|クリミナルボーダー|Purple software
備考
『クリミナルボーダー 2nd offence』の続編


作品概要

本作は全4作予定のロープライスによる連作シリーズ『クリミナルボーダー』の3作目。
今回フィーチャーされるヒロインは琴子に付き従う謎の少女、メリル・ハサウェイだ。

このレビューを読む方はほとんどが前作までをプレイ済みと思われ、続編の購入に迷われている方に向けて本作がどのような方向に進んでいくのかを手短に解説しよう。

「転」を担う

ある人物の死をきっかけにささやかな勝利を掴み、「雨紋会を潰す」という明確な目標に向けて走り始めた樹たち。
それに対して雨紋会の若頭である東雲は刺客としてメリルを学園に送り込む。

しかし、雨紋会に直接属していないメリルとしては義理はあってもその命令に従う義務はないというスタンスだ。
一方で、樹にとっては雨紋会を潰すという目標を果たすために、より深く裏社会との関わりを持つメリルは強力な味方となりうる。だから彼女の信頼と協力を得ようと奔走する、というのが序盤の筋書きだ。

全4作の3作目。「起承転結」に当てはめれば「転」。
「結」へと繋げる役割を授けられた今作は積極的に「転」たらんとする。

プレイする前から自明のこととして、本作で物語は完結はしない。
前二作と比較して登場人物も増え因縁の糸も錯綜している。暴力の気配も漂う中、自身と仲間たちの自由を手にすべく樹は自らの策略を成し遂げようと突き進む。

本作では雨紋会を通して「暴力団排除条例」以後の現代ヤクザの苦境がリアルに描かれる。
そこが本作の面白いポイントのひとつであり、同時に樹たちにとっての活路だ。

樹が勝利の自信を深めるにつれて、これが3作目であることに不安を覚える。
見え見えのフラグってやつだ。

ヒロインはメリル・ハサウェイ、だから……

すでに海外マフィアとの関わりが臭わされているメリル。
前作ヒロインだった琴子はヤクザの一人娘という立場でその背後に暴力の影を抱えたヒロインだった。一方で、メリルは自身が暴力のプロフェッショナルだ。ある意味で攻略難易度の高さは上がっているといえよう。

前作までのレビューで「大人と子供の対立」、そして「子供から大人への不可逆の変化」という風に本シリーズのテーマを表現したが、それに沿って改めて表現すると、メリルは大人に使われる道具だ。
物心がついた頃から裏社会で育てられた彼女は、これまで大人に逆らうということを考えたことすらない。子供未満の状態と言えるだろう。

そんな彼女に「わるいこと」を教える。
大人に反抗する子供――対等な人間になるよう導く。この危険な少女を。
そこがメリルというキャラクターの面白いところだと感じた。

対等になるためにはこちらからも歩み寄る必要がある。

前作に当たる2nd offenceでは1stのひな、3rdのメリルとの交流の機会も多かったが、それと比較すると今作ではメリルとふたりきりでの行動が多い。
故に光の側でいられる時間は少ない。メリルと関係を深めるということはどっぷりと深く沈み込むことと等しい。

総括

前作のレビューの総括で「ここまで堅実にホップ、ステップと踏んできた本シリーズ。続く三作目で爆発的なジャンプを、そして完結作で見事な着地を期待したい」と書いた。
しかしその期待は少々性急だったかもしれない。この三作目は最終作のジャンプを見据えてか、深く、深く沈み込む。バネが弾けかねないギリギリまでストレスをかけながら。

これまでの助走は跳ぶためではなく、沈むために必要なものだったのではないか――そんな、疑心すら感じさせる思い切った作劇に、まったくたじろぐことはなかったと言えば嘘になる。
本作が示した野心が結実するかどうかはすべて次回作のlife sentence次第だ。この悪徳と暴力の行く末を震えて待とう。

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