『星逢のプリズムギア』レビュー

"ACROSS STARS PRISMGEAR"

星逢のプリズムギア

星逢のプリズムギア

posted with amazlet at 16.09.19
エリュシオン (2013-07-26)
点数ブランドプレイ時間
60点Elysion約25時間
シナリオ
健速
原画
光姫満太郎
紹介サイト
星逢のプリズムギア
備考
 


クリーンで膨大なエネルギーを生み出すコクーン。それを動力源とするパワーアシストスーツであるパワーギア。流星のごとく現れた二つの技術革新により発展した近未来の日本が舞台となる。

物語ではパワーギア装着者同士による戦闘競技・ギアバトルを中心に主人公とヒロインとの切磋琢磨する関係と、その先を描く。「キミとふたりでなら、飛べる。」というキャッチコーピーにずばりマッチしたスポ根要素の強い一作だ。

この「切磋琢磨する関係」は普通の恋愛モノではあまり見られない、本作ならではの魅力の一つだと思う。「自分にはこの人しかいない!」というパートナーとして、互いに互いを磨き合い高め合う主人公とヒロインの関係は見ていて心地よかった。

ギアバトルの内容はまさに「なんでもあり」。身体を強化させるパワーギアの出力により超スピードで飛んだり跳ねたりしつつ、薙刀やら機関砲やらレーザーやらミサイルやらといった武装で対戦相手を攻撃していく。パワーギアに内蔵されたダメージ判定システムにより勝敗が決するという具合だ。多彩な画面効果が派手に演出しており見た目にも楽しい。

ギアバトルシーンの演出についてもう少し述べておきたい。ADVゲームにおける立ち絵演出はどれも暗に「これは主人公の視線です」と言っているわけだが、本作におけるギアバトルシーンではそれをより明示的にしている。パワーギアによる視覚情報を表示させたり、背景を上下左右に動かしたりといった手法を用いることで、一人称視点シューティングゲーム風の臨場感を出しているのが面白い。

脚本に関してはどのルートもやや中だるみを感じたものの、作中時間でおよそ半年以上という長いスパンの物語を一つのドラマで終わらせずに山あり谷あり展開している。その過程においてヒロインの心情の変化を丁寧に描写しており、読めば読むほどヒロインが可愛く感じられた。特に幼馴染である百瀬未衣ルートの完成度は高い。

一方で本作の脚本についてひとつ注意しておくべきこととして、本作は攻略ヒロイン4人に対してルートが3つしかないことを挙げておく。つまり神崎皐月神崎ルチルの二人でひとつの神崎姉妹ルートとなっているのだ。

そのため二股・ハーレム展開が苦手な方には厳しいかもしれない。念の為に、二股と言ってもドロドロ展開などはなく、また二股展開も物語的にちゃんと必然性があることを明言しておこう。個人的にはポジティブに捉えている。

ビジュアル面では光姫満太郎の緻密に描き込まれた一枚絵が目を引く。パワーギアや武装などのメカチックなデザインも映えており、美少女×メカの組み合わせに萌えるならばなお美味しい。個人的には物語序盤にルチルさんがある事故に巻き込まれ、ばっさりと切れた太ももから機械部分を露出させている一枚絵がお気に入り。いや、決してリョナ趣味では……。

そんな本作の弱点は、小さいながらも引っ掛かりを覚える箇所が多く、プレイしていて冷めることが多々あることだ。

まずはタイトル画面に同一キャラが並んでいる奇妙な配置に始まり、一部主要キャラのパワーギア着用立ち絵がモブキャラのものと一緒であることや、立ち絵の服装バリエーションが少ないために制服姿ばかりである点、あとは男性モブキャラ陣の過剰に作り過ぎた演技や、また模擬戦だろうが練習だろうがたくさんの観客で溢れかえった競技場背景などなど。塵も積もれば山となってゲームへの没入を阻害してくる。

その一部はコストカット故の処置と理解はするものの、やはりそれでも勿体無く感じてしまった。

実績のあるクリエイターのタッグによる新規ブランドの処女作としてマクロに見ればかなり安定した出来栄えの一作なのだが、ミクロに見ていくと粗が目立って仕方がないという残念さも兼ねてしまっている。そんな粗に目を瞑れるなら、萌えと燃えを兼ねそろえた珍しいジャンルの作品として楽しめるだろう。


【積みゲー崩し日記リンク】

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