『天神乱漫 -LUCKY or UNLUCKY!?-』レビュー

"神様もあきれるような"

天神乱漫 ~LUCKY or UNLUCKY!?~
ゆずソフト (2009-05-29)
点数ブランドプレイ時間
55点ゆずソフト約30時間
シナリオ
天宮りつ、北川晴
原画
むりりん、こぶいち、セレビィ量産型(SD原画)
紹介サイト
★★★天神乱漫公式サイト★★★
備考
 


主人公・千歳 春樹は不運な少年。そんな春樹のもとに、神様を名乗る少女・卯花之佐久夜姫(うのはなのさくやひめ)が送られてくる。姫曰く、春樹の不運は一族にかけられた天罰が原因であり、それは姫の力を持ってしても祓えないものだという。しかし、春樹の不運を軽減する手段があるというのだが――それは、姫とキスをするというものであった。

かくして卯花之佐久夜姫、改め卯ノ花 姫との同居生活が始まる。春樹の不運体質と、姫の神様パワーがスパイスとして投じられる学園青春コメディだ。

攻略対象ヒロインは6人。神様とそのお供、妹、幼なじみの4人をメインヒロインとして、残りの担任教師と学生会長の2人をサブヒロインとしている。

基本はコメディなのだが、メインヒロインの各個別ルートでは、主人公の不運が恋人となったヒロインに様々な影響を与えてしまい、それをどう乗り越えるかという少し重い展開をみせる。しかし、シリアスに振れ過ぎないよう、くだけた掛け合いを要所に挟むことでコメディ作品としてのバランスを保っている。

物語の期間は春から秋までに渡るが、ヒロインの制服やインターフェース・デザインを彩る桜色からも分かるように、ゲーム全体に春の陽気を漂わせている。春眠暁を覚えずと言うが、その心地の良い雰囲気が作中のまったりとしたムードを作り出している。

個人的には、このまったりとしたムードの構築が、ただでさえボリュームのある本作の体感時間を悪い意味で増加させているように感じる。つまるところ、語ろうとしているシナリオに対して、尺が長過ぎるというのが本作の欠点だ。

キャラクターとの交流を重視し、性急にイベントを発生させずにじっくりとヒロインたちとの日々を重ねていく共通ルートまでは良い。しかし、個別ルートに入っても、既に動き出しているヒロインとのストーリーがなかなか進展を見せずに中だるみする。加えて、そこそこ重い雰囲気のお話を長く展開しているために、ヒロインとの思い切ったイチャラブシーンも抑えめになっている。結果としてシナリオ的にもキャラ萌え的にも中途半端な印象が強い。しかし、これは4人のメインヒロインルートに限っての話だ。

残り2人のサブヒロインルートでは主人公の「不運」設定がほとんど関係してこない。よって本作ならではの面白味は減少するが、ルート全体における物語性のウェイトが抑えめになっており、イチャラブシーンにより時間を割いている。従って、キャラ萌え的な満足度ではこちらの方が高い。個人的な最萌えキャラもやはりサブヒロインであり学生会長の常磐 まひろ先輩だ(シナリオに関しては相当ツッコミを入れたくもあるが)。

以上より、全体的に中途半端なメインヒロインルートよりも、キャラ萌えに特化したサブヒロインルートのほうが総合的な満足度が高いという、なんとも言えない微妙な感じとなっている。

ビジュアル面では人気原画家・こぶいちむりりんの魅力的な絵はもちろんのことだが、それに加えてひとつの台詞の中でころころと表情差分を変えていく様が可愛い。作中の日付を表示する黒板が、その度に小ネタが落書きされているのも個人的には好きなディティールだ。

絵の良さはそのままHシーンの良さに繋がってくる。全体的にソフトではあるが、一部で冒険も見られるのが好印象。各ヒロインごとに3~4枠と数も豊富で、有名声優陣の熱演も光りこれといった不満はない。ただ、公式ページにて「※Hシーンは全部純愛です!!!(重要)」と記されているが、これに対してはダウトを宣告しておこう(重要)

ダンスが有名なOPムービーに関しては、本作を語る上で避けては通れないポイントであるという認識なのだが、一言だけ。このなんとも言えない狂気は、振付が悪いのか、はたまたアニメーションの見せ方が悪いのか……どちらにせよわざわざ金をかけてまでヒロインたちを可愛くなく見せてしまっているので、あまり良い印象はない。ネタとしては面白いかもしれないけれど、総合的には本末転倒かな。

総合すると、ほどほどに楽しいが、長い。これに尽きる一作かなと。キャラクターデザインに魅力を感じるならばプレイするのも悪くない、といったレベルだろう。

ところで、妹&幼なじみ持ちのエロゲー主人公って、それだけで最高峰の幸運な気がするのだが。

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