【ネタバレ有り】エロゲー流の人間讃歌 – 『みにくいモジカの子』をプレイ その3

はじめに

『みにくいモジカの子』攻略完了。
トゥルーエンド攻略後に開放されるふざけきったイースターエッグも全攻略。超苦労してラストステージを攻略†01人名と、比較的最近プレイした『スマガ』用語が重なったタイミングで突破できた。『竜†恋[Dra+KoI]』関連は分かってても無理。したのに、あのご褒美の嬉しくなさよ!

ということで前回記事の続きとして、新たに攻略した双葉 みゆルートとトゥルーエンド(に至るまでの試行錯誤込み)について、この記事ではまとめよう。
例によって下倉バイオ過去作(というか『君と彼女と彼女の恋。』)への言及含め、ネタバレ全開なのでご注意を。

みにくいモジカの子 通常版
ニトロプラス (2018-09-28)

双葉 みゆルート

わぁい小動物系おどおどイジメられっ子 こーしん小動物系おどおどイジメられっ子大好き。

かーらーのー主従逆転劇!
好きな女の子の望み=復讐のために走りきったこの人生。最期はその娘の快楽のすべてを叶えてあげるために犠牲となるのも乙なものである。

その心の醜さがモジカされている、描写されている、把握されているとも知らずに自分より下等な存在を虐げる快楽に満たされているヒロイン。
僕は、君の醜さを知っている。
確かに、君は醜いけれど、そんな君に惚れてしまった僕のほうの負けだ。

モジカによって他者の心が読めるということは、その他者の快楽を最大化する方法がわかるということ。
だから捨は彼女が欲する言葉やリアクションを投げかける。それに愉悦を覚えたみゆが、また次の快楽を求めて技を繰り出す。
この完璧な掛け合いの果てに剥き出しにされる醜いゆみの姿は、まさにスーパーヒロインと呼ぶにふさわしい神々しさがあった。恍惚である。射精である。

ルート単体の好みで言えば胡頽子とならんで二強かもしれない。

バッドエンド巡り

4人のエンディングを迎え、残るは鳴子ルートのみ。
エキストラモードでも、鳴子のCG枠の多さから彼女が本筋だろうことはなんとなく察していた。
そして、ここからが大変なんだろうということも。

とまあ、これに加えてニトロプラス美少女ゲームトークショーでご一緒になった方々から事前に難易度の高さについては軽く脅されていたこともある。

結果的には、ノー攻略サイトでのトゥルーエンド到達ができた。
10回ちょっとははじめからやり直したがな!

難易度はやや高いくらいかと。選択肢の数自体はべらぼうに多いわけでもなく、ストーリーと一切関係ないといった理不尽さはない。
突破の鍵は、適当に虱潰しをしていたら100%踏んじゃうバッドエンド直行地雷が埋め込まれていることに気づけるかどうかだろう。
虱潰しでなく、普通(つまり初回)にプレイしたら先に進めるあるポイントが、虱潰しをはじめると途端に先に進めなくなる。虱潰し前と後の選択肢の差分をとって、「あのビジョン」を視たらバッドエンドフラグが立つということに気づけるかが最初にして最大のハードルだろう。

バッドエンドフラグの存在に気づけてからも二段階の障害(フラグ)がある。
しかし、これらについては特殊バッドエンドに至る過程のテキストにヒントがちゃんと用意されている。
なのでここまでくれば、(ゲーム冒頭からフラグ構築が始まっているため)あと3回ほどはじめからやり直せばトゥルーエンドに入れるだろう。え、多い?

また、鳴子ルートを攻略した今となっては、この難易度の高さには必然性があったと思える。
奇跡が重なれば一周目から鳴子ルートに入れる可能性があることも含めて。

許斐 鳴子ルート

ということで、感想の大枠は上ツイートの通り。

「ニトロプラスらしい」とはニトロプラス作品について言及される際によく使われる定型句であるが、今作はなによりエロゲーを突き詰めた結果それが人間讃歌となってしまったという意味で、ニトロプラス流ではなく「エロゲー流の人間讃歌」だなと。

個人的にはこのツイートだけでほとんどすべてを語り尽くしている気ではいるので、残りは漏れたディテールの読解である。

モジカとは何だったのか

この鳴子ルートではじめて、捨以外のモジカ(=他心通)の能力を持つ人間†02わざわざ「人間」とした通り、椿ルートにおけるコンセイサマを除く。が現れる。

鳴子はモジカを使える。
容姿端麗な彼女は捨のように下を向き続ける必要もなく、あらゆる人間の心を難なく読み、それを利用して人々を意図した通りに行動させるだけの力を備えている。
だから捨が各ルートで一人のヒロインに施すのが精一杯だった、大それたこと――胡頽子の露出願望の成就、綺羅々の蜂矢との復縁、椿のカンヌキの破壊†03みゆ様は……うん……。――を短期間で成し遂げる。

更に、鳴子は椿ルートで明かされるカンヌキの能力も併せ持つ。
鳴子のカンヌキは椿のように感情を作らないことで心を読まれないというものではなく、自らの心を嘘偽ることで嘘の文字を浮かび上がらせるというもの。チート度合いはこちらのほうが遥かに上だ。

そんな鳴子の登場によってこの『みにくいモジカの子』という作品のメタ的なルールにおいてモジカという能力がどのような働きをしているのかがより明確になった。
具体的には、モジカによって視える心とはいったい何なのか。

鳴子がモジカを使えることを示すシーンで、捨が心に浮かべ、プレイヤーが捨の心理描写として読む疑問に対して、鳴子はそれがセリフとなる前に返答する。
つまり、ここで鳴子は我々プレイヤーと同じ文字を読んでいることが示される。

ところで、『君と彼女と彼女の恋。』では主人公を通してヒロインのイベントCGを収集するプレイヤーに対して、ヒロインを通して主人公のイベントCGを収集するカミサマという概念が仄めかされている。
ここでもしもカミサマが在ると仮定すれば、カミサマもやはりプレイヤーと同じように、(多くのゲームでは画面下部のテキストウィンドウ内に表示される)文字を読み進めているのかもしれない。
つまり、プレイヤーには読めず(表示されず)、カミサマには読める(表示される)、ヒロインの一人称形式の心理描写が存在することとなる。

鳴子が他心通により、プレイヤーが読んでいる捨の一人称形式の心理描写を視ているのでならば。
捨はモジカにより、カミサマが読んでいるヒロインの一人称形式の心理描写を視ているということになる。

「何を当たり前な」と思われるかもしれない。はじめから人の心が視えるって言うとるやんかと。
しかし、個人的には『君と彼女と彼女の恋。』のアイデアと併せて、ヒロインの側にもその世界の中で生じさせたテキストが存在するはずだと暗に気づかせるこの仕掛けに思わず感心したのだ。

それまでずっと主人公の一人称視点だったはずなのに、唐突にアナザービューとかぬかしてヒロイン視点に移行してそのヒロインが主人公のことを「好き好き大好き!」と想っていることをプレイヤーに対して懇切丁寧分かりやすく直接的にテキストとして提示してくれるようなエロゲーに対して何とも腑に落ちない思いを抱いていた私にとっては、主人公の一人称視点というルールを崩さないままに、それでも確かにヒロインの側にも想いがあり、テキストがあり、しかしそれは本来プレイヤーには隠されていることが自然であると、ゲームシステムとストーリーの合わせ技で示してくれたのだから感心せずにはいられないのである†04この非常識に長い一文はただの愚痴なので真剣に読まなくてもいいよ。

捨がカンヌキを習得するということ

鳴子は、義父である永業によって他心通を持つ己の特権を覆され、性的に犯されることによりカンヌキを習得した。
それと同じプロセスを経ることで、捨にもカンヌキを習得させることに成功する。

さて、先程はモジカ=他心通はプレイヤーが読む捨(含むキャラクター)の心理描写を視ることができる能力であることを確認した。
そこで、カンヌキによってモジカで視える文字を偽ることができるようになったということは、捨はプレイヤーが読むテキストにも嘘を混ぜることができるようになったということである。

つまり、カンヌキを習得して以降の捨は信頼できない語り手であることを意識しなければならない。
捨は今後、コンセイサマや鳴子、永業といった他心通の持ち主に対してカンヌキを用いて嘘をつくとき、同時にプレイヤーに対して嘘をつくことになる。

例えば、捨が非常に分かりやすくプレイヤーに嘘をつくシーンとして、コンセイサマの中で椿/胡頽子、そしてみゆ/綺羅々とのセックスを幻視させられるシーンが挙げられる。
ヒロインたち=コンセイサマは捨は射精していないと認識しているのに、プレイヤーは捨が延々と射精しているというテキストを読むこととなるのだ。

同様に、捨がプレイヤーに対して嘘をついていると思われる重要なシーンがある。
それは鳴子ルート最終盤、コンセイサマにより捨と鳴子が双子であると突きつけられ、その後遺伝子検査をした結果を鳴子に伝えるシーンだ。


「あの後、検査の結果が出たんだ」
「遺伝子は一致しなかった」
「僕たちは、他人だ」
「赤の、他人」
「ううん。それは違うわ」
心臓が跳ねる。
恐怖に叫び出したい気持ちを必死に抑える。
彼女の真実の思い。
それは――

『みにくいモジカの子』鳴子ルート 冬の生徒会室

「僕は彼女に事実を伝えた」の部分に傍点がついているのは原文の通りであり、ここをわざわざ強調するのはまさにこの部分が嘘であることを示していると思われる。
つまり、捨と鳴子はやはり双子であった。それが物語上の真実である可能性が高いと私は考える†05さすがにこの捨の言葉をそのままの意味で受け取るプレイヤーは少数派だと思うが。

加えて、ここで「ううん。それは違うわ」と言われて恐怖を感じているといった描写からも、ここで伝えた言葉が嘘であると臭わせている。
この直後のモジカシーンで、捨が顔を上げると鳴子が涙を流していることも示唆的だ。
恐らく彼女も捨の言葉が嘘であると見抜いている。彼女が他心通を用いなくても捨の嘘を見抜くだけの観察眼があることはすでに示されている。

しかし、それが嘘であると見抜いていながら、彼女はその言葉を違う角度から否定する。

他人じゃない
私達は家族で 両親になるんだから

『みにくいモジカの子』鳴子ルート 鳴子のモジカ

モジカとカンヌキを持つ二人

言葉は嘘をつくことができる。
しかし、心は嘘をつくことができない。

そう信じていた捨は、ゲーム開始時からモジカによって視える他者の心は真実だと信じて疑わなかった。
ところが、カンヌキでもって自らの心を偽れる鳴子の登場でその見解は破綻する。

モジカとカンヌキを得た捨と鳴子は結ばれたが、モジカによって視ることのできる鳴子の心が真実であるという確証はない。
これまで散々、モジカを通して他のヒロインたちからの罵詈雑言を文字として視てきたプレイヤーも、鳴子についてだけは文字の向こう側にある真の想いを読み取る必要がある。

故に、鳴子ルートだけは、正真正銘、普通のエロゲーになるのである。

僕たちはお互いにお互いの心を視て、
真実を確かめ合う。
真実。
言葉は嘘をつく。
想いだって偽ることは不可能じゃない。
でも、
行為は紛れもなく真実だ。

『みにくいモジカの子』鳴子ルート 冬の生徒会室

おわりに

『君と彼女と彼女の恋。』という難儀過ぎる変化球エロゲーを産み出して、次に下倉バイオさんはいったい何を創るのだろうかと†06『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ>』も下倉バイオ色の強い一作だったが原案が別人なのでここではノーカン。
そんな疑問に対する答えは、やっぱり難儀だけど、しかしド直球なエロゲーである『みにくいモジカの子』であった。

個人的には胡頽子というA級のオナペットも得られた、忘れがたい一作になりそうである。

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君と彼女と彼女の恋。通常版
ニトロプラス (2013-08-30)
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脚注   [ + ]

01. 人名と、比較的最近プレイした『スマガ』用語が重なったタイミングで突破できた。『竜†恋[Dra+KoI]』関連は分かってても無理。
02. わざわざ「人間」とした通り、椿ルートにおけるコンセイサマを除く。
03. みゆ様は……うん……。
04. この非常識に長い一文はただの愚痴なので真剣に読まなくてもいいよ。
05. さすがにこの捨の言葉をそのままの意味で受け取るプレイヤーは少数派だと思うが。
06. 『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ>』も下倉バイオ色の強い一作だったが原案が別人なのでここではノーカン。

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