『虜ノ歪~音大卒の元歌姫が響かせる淫らな啼き声~』レビュー

"タイトル画面BGMの「兇変」だけは最上級に評価したい"

点数ブランドプレイ時間
50点Guilty約10時間
シナリオ
よこよこ、ギハラ、藤枝卓也、神奈月ニトロ
原画
さいもん、Masaya、の歯、えいとまん、了藤誠仁
紹介サイト
虜ノ歪~音大卒の元歌姫が響かせる淫らな啼き声~
備考
・期間限定DL特典「助けを求める声は誰の耳にも届かないパッチ」2018年8月31日まで

前提条件

本作は女性主人公視点で理不尽な陵辱を描く「虜」シリーズの5作目。
コンセプトのみ踏襲するタイプのシリーズであり、過去作との物語的な連続性はないので本作からプレイしても問題ない。

本レビューでは直近の前作に当たる『虜ノ雫~夏の豪華客船で穢される処女たち~』との比較をやや多めに織り交ぜたい。

あらすじと2つのルート

主人公である夕咲 詩音は音短大を卒業後一時期プロの歌手として活動していた。
しかし、他界した両親が遺したカフェ&バーamuletteを引き継ぐために引退し、今はこの小さなお店を守りながら妹の果音と居候している従兄弟の雨月 梨那と三人で暮らしている。

ある日、詩音は幼馴染である湊 奈実が毎年主催するチャリティーコンサートに今年は歌手として参加してみないかと誘われる。
毎年応援としてお手伝いはしているものの歌手として参加するなら練習期間も必要だ。
お店との両立は厳しいが、果音の同級生で詩音に憧れるピアニストの中ノ森 恭子からの熱い期待もあって迷う詩音。

チャリティーコンサートに参加するかしないか、その決断の先にはいずれにせよ凄惨な凌辱劇が待っている。

本作では「虜」シリーズの定番として、
単独の凌辱者によるネチネチとした責めに特化した【自宅ルート】
複数の凌辱者に蹂躙される輪姦に特化した【施設ルート】
大きく分けて以上の2つのルートが用意されている。

ゲーム開始時は主人公である詩音の視点で物語が進行し、上記2ルートのいずれかに別れた後はそれぞれ登場する凌辱者による詩音の凌辱がはじまる。
その後、詩音視点で物語を進めるか、はたまた他ヒロインが巻き込まれるかの選択肢を経てエンディングに至るというシンプルな作りだ。
前作『虜ノ雫』は選択肢による分岐が分かりづらくやや難易度が高かったことから、本作のルート構成のシンプルさはその揺り戻し的に調整されたものと思われる。

【自宅ルート】には果音と梨奈、【施設ルート】奈実と恭子へのルート分岐が用意されている。
もちろん【自宅ルート】側のキャラクターは輪姦陵辱シーンは本編中ほとんど用意されておらず、果音は皆無、梨奈は辛うじて1シーンなので、この2人の輪姦は期待しないように。

単調

本作は前作『虜ノ雫』と同様、凌辱劇が始まるまでに凌辱対象となるヒロインたちのキャラクターを立てる、いわばセッティング段階にじっくりと時間をかけている。
インスタントなエッチシーンを求めている飢餓状態だと少々キツいかもしれないが、個人的には理不尽な暴力によって崩れ去る「かけがえのない日常」をしっかりと描く作りには好感が持てる。
しかし、本作序盤に描かれる「かけがえのない日常」のあまりの何気なさ……さらに言ってしまえば単調さに一抹の不安を覚えたのだが、その不安は本格的に凌辱劇が始まってから確信へと変わっていく。

前作『虜ノ雫』のレビューでも指摘した単調さは本作も健在だ。
特に今回その単調さを際立たせている要素として、各ヒロインが持つ属性や魅力が有効活用できていないという点を挙げたい。

例えば、主人公である詩音はサブタイトルに掲げるほどに「歌姫」属性を押し出しているが、そこをきっかけに凌辱者が責める描写が僅かしかないのだ。
やはり歌うヒロインに対してはその芸術を生み出す口をいじめ抜き辱めるような口淫プレイが一つくらいは欲しいところである。

この傾向は詩音だけでなく他のヒロインについても言える。
例えば梨奈のモデル設定(=他人から見られる存在であるという意識)、恭子のギャルっぽい見た目やピアニストという設定、奈美のシスター設定など、キャラ付けとして用意はしたがエッチシーンにほとんど活かせておらず(1~2シーンで言葉責めに利用される程度に留まる)、ルート毎に味の違いがあまり感じられない。
キャラクター属性を前面化させたシチュエーションで満足できたシーンは奈実の看護師設定からくるナース服+分娩台シチュエーションくらいか。

個人的な「あのヒロインのこの部分を責めたい!」というフェティシズムは本作に登場する凌辱者たちには基本興味がないようで、どのヒロインに対しても似通った責めを繰り返しがちで正直ちょっと悲しかった。

「だから警察に駆け込めよ!」

エッチシーンの繋ぎ方にも問題がある。

前作『虜ノ雫』が大型クルーズ船という逃れられない舞台を用意したのに対し、本作では凌辱者たちから逃れられない理由が脅迫のみ。
日常を過ごす裏では凌辱者たちに犯されて……ということなのだが、やはり脅迫の材料が弱いのは問題だ。
加えて【施設ルート】における詩音と恭子はチャリティーコンサートの練習というきっかけがあるは言え、凌辱者たちがたむろする教会へと自ら足を運ぶというハードルも有り「このタイミングで警察に駆け込めば……」と考えてしまうこと多数。

特に恭子ルートはシーンの繋ぎ方が適当で、エッチシーンの合間の繋ぎにおいて日付の進行だけを示した後にすぐに次のエッチシーンに突入というワンパターンさで悲壮感の描写も弱い。
従って、フルプライス作品として要求されるシーン数のノルマをこなすためだけにエッチシーンを事務的に繋ぎ合わせただけという印象が強かった。一言、最低のルートである。

やはり基本は丁寧な心理描写

そんな中、キャラクターとしての分かりやすい属性付けが薄めな妹・果音がひとり健闘している。

どのヒロインも詩音の身代わりとして凌辱者たちに犯されるという展開は共通だが、果音ルートでは特に「姉を守りたい」という気持ちとその障害となる異性への恐怖心が丁寧に描写されているのだ。
普段元気キャラで通っている彼女が詩音に気づかれないようにと空元気を見せるところも痛々しく、そして美味。

やはり抜きゲーであってもエッチシーン外の心理描写がしっかりしているほど話として面白くなり、そのキャラクターへの愛着も生まれて結果抜けるということをこの一作だけで証明している形である。
ラストの「ヒロインの心が折れる瞬間」の描き方も頭一つ抜けた出来栄えで、はっきり他ライターとの実力差が表れているように感じた。

総評

現在のところ「虜」シリーズはフルプライスの凌辱系タイトルを年一本のペースで供給してくれる貴重なシリーズである。
シリーズものとして量産するための型を確立し、そこそこの満足度で凌辱系タイトルファンのユーザーを長期的に引っ張る計画的な企画である(余談だが本作でJKの割合が半数以下になったのはユーザーの高齢化故か?)ことは理解するが、個人的には好みの輪姦陵辱タイトルであるという贔屓目を加えてもその「そこそこの満足度」に達せていないというのが二作続けてプレイしてみての感想である。

前作『虜ノ雫』における弱点の一つであったヒロイン毎の絵のクオリティの落差については本作は原画家陣が変わったことも有りいくらか改善されたが、最大の弱点だと感じていたゲーム全体の単調さは寧ろ強化されたとすら感じている。

来年以降の「虜」シリーズを購入するかどうかは情報が開示されてみるまではなんとも判断できないというのが正直なところであり、それだけ本シリーズへの期待を裏切られた落胆は大きなものだった。

最後に、期間限定ダウンロード特典「助けを求める声は誰の耳にも届かないパッチ」について少しだけ触れよう。
本編で【自宅ルート】に該当するヒロイン含めて全シーンが男多の輪姦・乱交シチュエーションで、それに加えてコスプレや女性複数シチュエーションなど本編にない要素を詰め込んでいる。
ストーリー的には本作ヒロイン5人が治安維持という名目で周囲の男たちを奉仕するという新法案が施行されるといった脳みそを1ミリも使っていないもので、ここまで振り切ったバカさ加減だと上記の「脅迫の材料が弱い」などといったツッコミがバカらしく感じるレベルでありかえって好感を持てた。もう笑うしかない。

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