『息子の嫁は親父の女 -女医とナースに仕込む胤-』レビュー

"昼ドラ的世界観と二人称視点、近親相姦どころではないある意味「変態エロゲー」"

点数ブランド発売日
80点ALL-TiME2009-04-10
シナリオ
琴羽之文
原画
水城吹雪
紹介サイト
息子の嫁は親父の女(オレノモノ) -女医とナースに仕込む胤- 初回限定版 (ALL-TiME) (18禁) - Getchu.com
備考
 

あらすじ

主人公・最上 盛幸は米倉病院の理事長兼院長。産科医師だ。
過去に起こったある出来事がきっかけで息子の孝明とは犬猿の仲である。

そんな孝明が従姉の、つまり盛幸にとっての姪に当たる伊達 雪花と婚約したという。
雪花は幼い頃より盛幸に懐いており彼を追うように医学の道を志し、産科医師になって米倉病院で働き始めたばかり。当然盛幸も溺愛しており、是非とも将来は米倉病院の院長にと考えていたところに飛び込んできた吉報は彼にとっては凶報であった。

個人としては反対だが、医療業界関係者を多く擁する親族間では各々の利害関係に益をもたらすこの結婚に歓迎ムード。雪花が最上家の嫁として同居するというメリットもあるが、それを加味しても渋々了承するしかなかった。
妻の敏江はすでに鬼籍に入るため現在の最上家は父の盛幸と娘の真幸の二人暮らし。そこに結婚を機に実家に帰ってくる孝明と嫁の雪花、さらに医療業界一族の中でひとり文学の道へと進んだことから異端児扱いの雪花の妹・名月が居候として転がり込んできて、危うい五人暮らしが始まる。

物語は妻・敏江の一周忌法要後の一族総出のおときからはじまる。
画像は左から名月、雪花、そして真幸。

昼ドラ的世界観はエロゲーと相性が良い?

あらすじに記したような微妙な関係性からはじまり、盛幸は次第に嫁の雪花や娘の真幸が快く思わない男とまぐわいその子を孕むという将来像に耐えられなくなり、それならばと彼女たちを犯すこととなる。
エロゲーのジャンルとしては寝取り近親相姦、そして孕ませだ。

さらに、富裕層一族の親族関係を題材に愛憎入り交じる男女関係に踏み込んだ物語は往年の昼ドラを思い起こさせる。
嫁や娘を犯すという展開の極端さもその特徴で、物語序盤に孝明から雪花との結婚を告げられた晩に見せる盛幸のオーバーな反応はまさに昼ドラ的だと思わず笑ってしまった。

お話の本筋としては雪花または真幸との関係を深めて彼女らの子を孕ませるというものであり、この本筋と深くは関わらないものの物語を包むこの昼ドラ的世界観の強度はなかなかに高い。
最上家と伊達家を中心とした物語であるがその周縁の登場人物も多く登場する。特に序盤は次々に提示される新しい人名に面食らい、思わず人物相関図が欲しくなるはずだ。
この人間関係の複雑さは結局は本筋と関わらないため無駄といえば無駄なのだが、親族関係や医療業界における微妙なパワーバランスの中で板挟みに立つ主人公の盛幸が、人の道を外れた極端な決断を下してしまうことの説得力を高めることに寄与している。

そもそもが下世話な話なのだ。主婦か二次元愛好男性かというターゲットの違いはあるが、昼ドラもエロゲーも下世話を面白がるという点では一致する。
ならば昼ドラ的エロゲーも無理なく成立するというのはその通りで、本作は数あるエロゲーの中ではなかなかユニークな世界観を展開し、プレイヤーを面白がらせてくれる。

二人称視点エロゲー

ユニークと言えば、本作は地の文(会話以外の文)が特徴的だ。
昼ドラ的世界観に合わせてなのか、文芸作品のような味わいのテキストはエロゲーではやや珍しい。
先述した通り人物関係が複雑なことと合わせて、本作で採用されている3行のテキストボックス表示よりもむしろ、全画面表示に適した文体と言えるだろう。

しかし、それをも超えてまさに唯一無二と言える特徴がある。
それは本作の地の文が全編二人称視点を採用しているという点だ。

ざっくり説明すると「地の文の語り手が誰か」という観点で「一人称視点」、「三人称視点」、そして「二人称視点」に分類できる。
例を挙げると「私は~した」ならば一人称、「(主人公の名前)は~した」ならば三人称といった具合。
一人称は物語の主人公の視点で地の文が書かれ、三人称は作者(神)の視点で地の文が書かれているという理解で大きく外してはいないだろう。

エロゲー(更に広げてノベルゲーム)においては大多数が一人称視点を採用しており、少数ながら三人称視点で書かれた作品もあるというのが私の認識である。
ノベルゲームにおける背景+立ち絵という画面構成がそのまま主人公の視覚として見立てやすいことから、一人称視点で書かれるのが自然であるという見方もできるだろう。

さて、肝心の二人称視点の説明が後回しになったが、二人称視点は先の例に当てはめると「あなたは~した」という書き方となる。

本作の地の文では主人公の盛幸を指して「貴方」という書き方で統一されている。

メタ的な演出を狙って部分的に取り入れている作品はいくらか思いつくが、少なくともフルプライスの商業エロゲーで全編二人称視点で書かれた作品を私は他に知らない。
それ故に「なぜ二人称視点を採用したのか?」を確かめるためにプレイする(まさしく私のプレイ動機がこれだ)、という面白さは間違いなくあると断言しよう。
「二人称視点エロゲー」という文字列にときめきを覚える好事家に本作の存在を認知させることが目的のため、ネタバレなしを掲げる本レビューではその狙いについての考察や効果の程については言及しないものとする。

意外にもエロはやや薄、しかしストーリーは……?

タイトルはいかにも抜きゲー然としたものであるが、私は本作があまり使えなかった。

シーン数やボリュームはフルプライス相応に用意されているが、そもそもの嗜好の問題もあるだろう。
私は女医・ナースや孕ませ・ボテ腹に対するフェティシズムはあまりない。ただし、医療ものらしく浣腸など軽いスカトロシーンがある点は好意的に評価したい。

絵が全体的にのっぺりした塗りで好みから外れていることも挙げておきたい。
エッチシーンのセリフはやや過剰にエロティシズムを煽るものが多く、比較的現実味のある世界観と照らし合わせると違和感がなくもないが、昼ドラ的誇張表現と捉えられなくもない。声優の演技はどなたも良かった。

また、あらすじからも分かる通り登場人物の平均年齢が高いことも私の嗜好から外れた一因だろう
作中で明言されていないため推察になるが、攻略対象ヒロインでは真幸が24歳前後で最年少、センターヒロインの雪花はおそらく27歳あたりで、サブヒロインで盛幸の愛人兼麻酔医の小野アンナは30半ばあたりだろう。
少々味わい深い表現になるが、世にあるエロゲーの中でも比較的「大人向けのエロゲー」であるといえる。

一方で、これまた意外に思われるかもしれないが、一部ルートの物語にいたく感動してしまったことについても言及しよう。
本作のルート構成はまずは雪花ルートか真幸ルートのいずれかに分岐する。その後、選択によってサブヒロインが物語に絡んできてさらに分岐、という形だ。

注目すべきはサブヒロインが介入してくるルートで、ふたりのヒロインが主人公である盛幸を介してある種のシスターフッドな関係性を結ぶ姿が描かれる。
不倫や愛人からはじまったオトナな関係で結ばれた者たちが、大人としてそれぞれの幸福な生き方を模索・選択し、さらには「孕ませ」エロゲーらしく産まれてくる子供たちにもその願いがささやかながらに継承されていく。
そんな本作の味わい深いテーマ設定を振り返ってみてもつくづく「大人向けのエロゲー」であったと、今度は胸を張っていえよう。

総括

本作のエロゲー的なテーマは寝取り、近親相姦、そして孕ませ。
これだけでも充分にご立派な「変態エロゲー」である。
しかも、本作は昼ドラ的世界観を二人称視点の地の文で描くというこれまた別軸の変態性を携えており、他に代替が利かない唯一無二の「ヘンテコ変態エロゲー」として私は記憶していきたい。

エロゲー・ノベルゲームにおいて全編二人称視点で描くということがどういうことかということを考えるきっかけを与えてくれる奇特な実験作として、特にディープなエロゲーファンにはオススメしたい一作である。
オススメしたいのだが、Windows 11ではどうもディスクチェック処理が通らないようなので、プレイには古いマシンが必要かもしれないというハードルはあるが、それでもなおオススメしたい程度にはお気に入りの一作だ。

最後に余談。本作の初回特典は3D立体メガネだ。昔懐かしの赤青シートのアレである。
CG閲覧モードには立体視バージョンの一枚絵が収録されており、メガネ越しに見ると立体的に見える……という触れ込みであるが、試そうとしたところすぐに目が疲れてしまったので立体視効果は正直よく分からなかった。
2009年4月という発売時期的に考えて3D立体視映画が盛り上がり始めた時期(その象徴である『アバター』が2009年末公開)ということもあり企画されたのかもしれないが、はっきり言って謎である。やっぱりヘンテコ変態エロゲーじゃねえか!

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