アニメは犯罪を引き起こす
今回の少女誘拐事件で僕が一番不安に感じたことは、誘拐と長期の監禁を題材とした4月8日公開の映画『ルーム』が延期になるんじゃないかということだった。
それはさておき、今回の事件を通してちょっと話題になった報道について思ったことを書き残そう。
容疑者のアニメ好き報道
今回は事件の内容や容疑者・被害者について触れる気は一切なく、以下の記事についての私の所感について述べる。
朝霞市の少女誘拐事件 一部報道にアニメファンが反発 – ライブドアニュース
私はこの一年で全話視たテレビアニメは『ガールズ&パンツァー』しかない非アニオタだ。
そういう意味では今回の犯罪の原因をアニメに求めようとした人々とアニメファンよりも感覚が近く、従って報道の意図も汲み取りやすい。
断言しよう。私は、アニメを犯罪と結びつけることは何も間違いではないというスタンスだ。
テレビアニメは未成年が無料で享受できるポルノだ
思春期の悶々とした時期にその性衝動を解消する方法として、特にオタクに育った少年少女にはテレビアニメがその一つに選ばれると推察する。
何故なら無料だから。
自分で性衝動を解消するための購買力、そして実際に購入というプロセス(=度胸)を必要としないテレビアニメは、彼ら彼女らにとってはまさに救世主として映るだろう。
しかし、そんな性との初めての触れ合いが、過剰にフェティシズムに溢れたポルノだったらどうだろう。
性に対して知識の無い少年少女が、その過剰なフェティシズムを「普通のこと」と認識したままその後の人生を歩みかねない。
その感覚の違いを察して、非アニオタとしてはテレビアニメを視る人々と今回のような性的犯罪を結びつけたくなるという構図だ。
念のため。私は普段テレビアニメを見ないので「過剰なフェティシズム」が今のテレビアニメに溢れているという本論の骨幹は二次ソースによる知識であるということは言及しておこう。
だから「今のテレビアニメはそんなんじゃない!」と義憤に駆られた方は情報提供してくれると助かる。
ちなみにその二次ソースとは、例えばみんな大好き伊東ライフ先生(@itolife)のスクショツイートなどである。
創作物が人を動かす
今回のアニメ好き報道での僕が最初に心に浮かんだことは「やったじゃん!」だった。
また、アニメが、創作物が、人を動かした。
それもただ「今日から僕もこのアニメの主人公みたいに強く生きよう」だなんて明日になったら忘れていそうなショボい感情の変化などではなく、重犯罪に手を染めるまでに至らせたのだ。
かつて『時計仕掛けのオレンジ』が、『タクシードライバー』が、『ファイト・クラブ』が、多くの暴力行為や犯罪行為を誘発したことと同じ現象である。
これが創作の力だ。
普段大したイベントなんて起こらない普通の人間の普通な人生を、創作物が決定的に変えてしまう。
その事実がまたマスメディアを通して世間に広まった。このことに対しての「やったじゃん!」だ。
確かに、誘拐監禁事件などという悍ましい行動を誘発してしまうこともあるかもしれない。
しかし、この事実から、これほどのネガティヴな行動に人を動かす程度には、ポジティブな行動に人を動かす可能性をアニメは、創作は持っているということだ。
確かに創作には負の側面があるかもしれない。しかし、その負の側面を全否定することは、その負の側面を産み出すほどの創作のエネルギーを否定することだ。
だから私だけでも肯定しよう。アニメは犯罪を引き起こすかもしれない。ならば、犯罪を引き起こしてしまうほどのエネルギーがそこにはあるのだと、また信じることができる。
そのことだけは今回の悲劇的な事件の中に垣間見えた小さな希望の光として、素直に喜びたい。