「○○ヒロイン」分類
普段何気なく使っているいくつかの「○○ヒロイン」という語を改めて言語化・図式化しようという試みです。
決してそれぞれの語の絶対的な定義をしようという大それた意図はないです。いくらでも例外は作れるし、実際に挙げることができると思います。
少なくとも、このブログで以下の「○○ヒロイン」という語を使っているときはこのような意図ですよと読者の皆さんに伝わればいいなと。
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そもそも「ヒロイン」とは
wikipediaで「ヒロイン」を引くと色々な定義がされているが、エロゲーにおける「ヒロイン」の意に最も近いのは以下のものでしょう。
主人公の恋人
作品によっては読者・観客は物語中で主要人物の男性(または女性)と女性が結ばれるような筋書きを期待しているので、男性(または女性)の主たる登場人物の恋人、恋人となっていく女性、結婚相手などになってゆく女性となっていることが多い。
こうして改めて意味を考えると、エロゲー界隈で様々な「○○ヒロイン」という語が発生し流通した理由がわかります。
エロゲーでは基本的に物語分岐があるため、一つの作品内でそれぞれ上記の定義に当てはまるキャラクターが複数存在することが普通です。
一つの作品内で同じ「ヒロイン」という語で区別される対象が複数おり、その区別の中でもそれぞれ扱われ方や振る舞いが異なるとなると、更に区別をして分類しようという話になります。
そこで、「ヒロイン」の頭に色々な語が付け加えられてきたたのでしょう。
では、それぞれの「○○ヒロイン」がどのように「ヒロイン」を分類するのかを、対となる関係の「○○ヒロイン」を列挙することで見ていきましょう。
「攻略対象ヒロイン」 と 「非攻略対象ヒロイン」
これがヒロイン分類の第一歩かと考えます。
ずばり、そのキャラクターがメインに活躍する(≒主人公に最も近しい存在となる)ルートが存在するか、否か。
存在するならば「攻略対象ヒロイン」。
存在しないならば「非攻略対象ヒロイン」。
そもそもルートが存在しないならば上記の定義で言えば主人公の恋人として最後まで物語が進行する立場に本来ないはずなので、「ヒロイン」に分類するのは難しいんじゃないかという気もするのですが……。
なんだか「ルートが有りそう(=ヒロインそう)だけど無かった」というキャラクターに対して、オマケで「ヒロイン」と呼んであげようよというニュアンスを感じますね。
逆に言えば、ルートが有りそうもないキャラクターに関してはその性別に関わらず「ヒロイン」という語で指される対象ではなくなります。
加えて、ここではあくまでルートの存在のみが判定材料なので、エッチシーンの有無は考慮しません。
後で例を挙げますが、エッチシーンのある「非攻略対象ヒロイン」は数多く存在します。
敢えて「非攻略対象ヒロイン」として代表例を挙げるならば、やはり多くのロリコンプレイヤーがその攻略ルートの存在を望んでいた『Fate/stay night』のイリヤスフィール・フォン・アインツベルンでしょう。
「メインヒロイン」 と 「サブヒロイン」
これが一番よく使われるヒロイン分類かと思われます。
メインかサブか。その間の境界線を決めるのはやや難しく、人によって「このキャラクターはメインヒロインだ」「いいやサブヒロインだ」と解釈が異なり論争となる場面を目にすることがあったりなかったり。
この分類は「ルートがあれば攻略対象ヒロインだ」というように単純な話ではありません。
先の攻略対象ヒロインと非攻略対象ヒロインとの関係を先に片付けましょう。
「メインヒロイン」は必ず攻略対象ヒロインです。
「サブヒロイン」は攻略対象であることも、非攻略対象であることもあります。
そう考えてみると、「非攻略対象ヒロイン」の意味が強化されます。
「非攻略対象ヒロイン」ならば「サブヒロイン」となります。
先ほど「オマケで「ヒロイン」と呼んであげようよ」と書きましたが、「サブ」と付くことでますますオマケ感が強化されますね。
しかし、「サブヒロイン」は攻略対象であることもあります。このとき人によって解釈が別れてしまいます。
基本的にはボリュームの差が攻略対象ヒロインの中でメインかサブかを別つのではないかなと思います。
それ以外の判断要素として、発売前のプロモーションでの露出具合(パッケージに描かれているか否か)などでメインとサブを分類することもできます。
それでは「メインヒロイン」と「サブヒロイン」の具体例を挙げましょう。
ゆずソフトの『天神乱漫』では、攻略対象ヒロインの中で常磐まひろと烏羽紫の二人はサブヒロインであると明示しており、パッケージにも描かれておりません。公式サイトの「スペック」ページを参照のこと。
HARUKAZEの『らぶおぶ恋愛皇帝 of LOVE!』では、攻略対象ヒロインが5人いますがメインヒロインは一之瀬ルキナと鳳エリカの2人だけです。残り3人はその半分ほどのボリュームで扱われるサブヒロインです。
更に、本作には非攻略対象ヒロインでありながら大きな活躍を見せるサブヒロインの榊原イサミがおり、彼女にはエッチシーンも用意されています。ちなみに、同様に非攻略対象ヒロインでありサブヒロインである木ノ下みおにはエッチシーンが無いという点が興味深く、そして腹立たしいですね。
「センターヒロイン」 と 「オーラスヒロイン」
最後に、主にメインヒロインの中で特別な役割を持つキャラクターを分類する語としてこの二つを挙げます。
「センターヒロイン」はプロモーションやパッケージで最前面でアピールされるキャラクターを指します。
必然的に、発売前にその作品で一番目立つキャラクターとなります。
「オーラスヒロイン」はルートロックなどで最後に攻略するルートが固定されているとき、その最後のルート(オーラスルート)で攻略対象となるヒロインを指します。
また、一本道の物語の幹があり、途中の選択肢でその幹から分岐していくタイプのいわゆる「ドロップアウト方式」(『G線上の魔王』、『世界で一番NGな恋』など)における最後のヒロインも、必ず最後に攻略されるとは限りませんが「オーラスヒロイン」に加えて良いでしょう。
最後に攻略することになる以上、クリア後に最も強く印象に残りやすいキャラクターとなります。
もちろん、これらのヒロインは作品によっては存在しないこともあります。
それでは「センターヒロイン」と「オーラスヒロイン」の具体例を挙げましょう。
個人的に、ザ・センターヒロインといえば『AIR』の神尾観鈴です。
何と言ってもその初回版のパッケージ構成! これ以上に「センター」であることを強調したデザインはなかなかないでしょう。
観鈴ちんもそうですが、製品版で一番活躍するキャラクターをプロモーションで強調するのは自然なことなので、「オーラスヒロイン」が存在するタイプの作品ではそのキャラクターは「センターヒロイン」と一致するのが普通です。
しかし例外もそこそこ存在します。
その例外の中でも特に面白いパターンが戯画の『この青空に約束を――』です。
本作の「センターヒロイン」は初回版のパッケージでは単独で描かれている沢城凛奈ですが、「オーラスヒロイン」はなんとサブヒロインである三田村茜が担当します。
まとめ
以上、ここまでで挙げた6つの「○○ヒロイン」の関係を図式化すると以下のようになります。
キャラクター全体の集合を円で表し、その中央に位置する大きな四角形に全ての「ヒロイン」を収めています。
それぞれの「○○ヒロイン」が、別の「○○ヒロイン」と重なることでその関係を示しています。
例えば「センターヒロイン」は必ず「メインヒロイン」に属し、「メインヒロイン」は必ず「攻略対象ヒロイン」に属すから、「センターヒロイン」は「攻略対象ヒロイン」に属します……という風に見て頂ければと思います。