形が分かる世界を旅して – 『ゼノブレイド』をプレイ

はじめに

今年に入ってから裏でちまちまプレイしていた『ゼノブレイド』(New3DS版)を攻略したのでストーリーのネタバレ無しで軽く感想をまとめる。

感想と言っても、上ツイートのように膨大なボリュームがひとつの魅力となっているこのRPGを無策に語ればあちらこちらに話が広がり収拾がつかなくなることは火を見るよりも明らかだろう。

だからこの記事ではひとつだけ話の軸を置こう。「巨神と機神」という設定だ。

巨神と機神

世界観設定

未プレイの方向けに本作の世界観設定を簡単に説明しよう。

遥か昔、海と空だけが続く世界に生まれた巨神と機神という二柱の神が互いの存亡を賭けて戦い、骸となった。

やがて動かなくなった巨神の骸上――巨神界に生まれた生命は繁栄したが、そこに機神の骸上――機神界から飛来する機械生命体である機神兵による殺戮が突如として襲いかかる。

巨神界の生命と、機神界の生命。その存亡を賭けた戦いが巨神と機神という世界の上で繰り広げられることとなる。

巨神(右)と機神(左)

大ボリュームな本作の基盤

先程から本作の膨大なボリュームについて言及しているが、それも巨神と機神という設定から導かれる複雑で広大なマップという基盤があってこそである。

大量のキャラクター、大量のサブクエスト、大量のアイテム……それらを探索するために走り回るマップはどこも巨大で立体的だ。所々で巨神や機神の身体の一部を感じさせるディテールが盛り込まれており、絶景スポットを探す面白さもある。

そして、長大なストーリーを物語るためにも巨神と機神という、「形が分かる」世界設定が巧く用いられている。

形が分かる世界

現実に生きる私たちは世界の(物理的な)形を直感的に把握することは難しい。

仮に地球を指してそれを世界と呼んだとして、その形が球体であることは知ってはいるが、今まさに自分が立つ場所がその球体のどこらへんに位置するかを直感的に把握することは難しいだろう。緯度や経度といったツールに頼らざるを得ない。

一方で、『ゼノブレイド』の世界である巨神と機神は人型をしている。

主人公であるシュルクたちが住む街コロニー9は巨神の右ふくらはぎに位置する。そう、この世界では今まさに自分が立つ場所を人体の部位として把握し、表現することができるのだ。

それに加えて把握できることがもう一つある。それは世界のスケール感だ。ふくらはぎに一つの大きな街がある。その事実から世界の大きさがざっくりとでも理解できるだろう。

この世界の形とスケール感が把握できるというポイントは本作のプレイ体験に大きく寄与する。

未プレイの方でも予想がつくだろうが、本作は右ふくらはぎに当たるコロニー9から旅を始めて、上へ上へと登っていくことになる。目的地はその時々で設定されるが、それがどこにあるか、そしてどれくらい遠いのかが直感的に把握できることで、目標が明確になるのだ。

膨大なプレイ時間がかかる本作を最後までだれずにプレイできるひとつの要因として、この必然的に目標を明確にしやすい世界観設定にあると私は思った。

コロニー9遠景。
巨神の下部故に、上から降ってくる落下物に対して迎撃する砲台を三基備えている。

登り、墜ちて、また登り始める

先述の通り、本作の旅の前半は巨神界を上へ上へと登っていくこととなる。

その果てとして頭部に達するわけだが、その過程で巨神界に住む様々な人々と出会い、仲間にしていく。巨神の部位によってそこに住む種族も異なり次第に多種族パーティーに発展していく。こうして生じる多様性がキャラクターやストーリーにより深みを与えることになる。

そして中盤以降は巨神界と機神界を繋ぐ大剣を渡り、機神界へと足を踏み入れることとなる。

こうしたように世界を「登り」、別世界へと「渡る」といった表現を比喩でなく用いられるのは巨神と機神という世界観設定の真髄だろう。もちろん、これらのキャラクターの移動というゲーム体験がストーリー展開とも深く絡んでいる。

この点において、個人的に本作ストーリーで最も巧いと感じたのがシュルクたちが「墜ちる」展開だ。

シュルクはある場所から落下した大切なものを救い出すために共に墜ちることとなる。ストーリー的にはある敵との敗北の直後にあたり、その落下には敗走の意味も読み取れる。

しかし、落下した先でこの旅におけるシュルクにとっての最大の目的が果たされる。それと同時に新たな目的が設定されて「また登り始める」のだ。

「落として上げる」は作劇の基本である。それをゲーム体験とストーリーとで同調させながら展開する見事な手腕に拍手を送りたい。

墜ちた先の地では巨神の全身を仰ぎ見ることができる。

おわりに

キャラクターとかストーリーとか戦闘システムとか育成システムとか音楽とか、語りたいことは無数に出てくる本作。

それら全てがしっちゃかめっちゃかに陥らずに語る手段として、とりあえず今回は「巨神と機神」という軸を置いてみたのだがいかがだっただろうか?

また余裕があれば(特に戦闘と育成システムについて!)なにか『ゼノブレイド』について語るかもしれないが、長大なゲーム時間に対してセーブ枠が3つしかないという制約故にスクショが撮りづらいという割とどうでもいい問題があったりするので、その日が来るかは私にもわからない。

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