有名エロゲー発売日カレンダー2023年版を作る

はじめに

きたる2023年に備えるためにカレンダーを作成した。動機は以下に掲載したツイートにある通り。
この記事では今回のカレンダー作成にあたってのレギュレーションや思考過程などをまとめ、同様のカレンダーを作ろうという奇特な方へのヒントを書き残したい。あるいは言い訳を書き連ねたい。

投稿ツイート

作成過程

レギュレーション

森羅万象のエロゲーを選出対象としてしまうと収集がつかなくなるため、まず最初にどういう作品を選定し、どういう作品を選定しないかのルールを定めた。
ルールと呼ぶには緩いところも一部あるが、今回作成したカレンダーの各日に選出されたエロゲーは以下のレギュレーションに従っている。

  1. ErogameScape -エロゲー批評空間-でデータ数が100以上の作品。
  2. PCゲーム、かつアダルトゲームであること。
  3. 追加要素の少ないリマスターや完全版でないこと。

特記すべきこととして、1のエロゲー批評空間について簡単に説明する。
エロゲーマーコミュニティにおける一般的な知名度を測る指標としてそれなりの説得力があることはもちろん、なによりサイト内でSQL実行フォームをユーザーに開放しており、条件を満たす作品のデータ収集が容易であるのが素晴らしい。

今回、必要なデータは以下のSQLで取得した。
3行目の'01'の部分を任意の月に変えることで、その月のアダルトゲームかつデータ数100以上のタイトル・発売日・データ数を1日から順に表示できる。

SELECT gamename, sellday, count2
FROM gamelist
WHERE erogame = 't' AND count2 >= 100 AND to_char(sellday, 'MM') = '01'
ORDER BY to_char(sellday, 'DD'), count2 DESC;

選定作業

上記SQLの実行結果を以下のスプレッドシートにまとめた。集計時期は11月22日の午前0時頃なので、リアルタイムのデータ数と多少ずれがある点に注意。

有名エロゲーカレンダー作成用参考データ – Google スプレッドシート

今回のカレンダー作成作業中は常時この表とにらめっこし、1月1日から順に「その日にふさわしいエロゲー」を私の個人的観点から選定していった。
ところで「その日にふさわしいエロゲー」とはいったい何だろう? それを真剣に考え始めると生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問に答えるよりも難しそうなので、やはりここでもエロゲー批評空間のデータ数を大いに参考にした。スプレッドシートを見れば分かるが、各日付ごとにデータ数降順でソートしていることはその意図の表れだ。

しかし、単純にデータ数順で機械的に当てはめるのにも問題がある。まずは年代ごとの偏りだ。当たり前であるが、古い作品、特にエロゲー批評空間が公開された2000年代前半ごろに発売されたゲームはデータの収集期間が長くなり、データ数で優位に立ちやすい。従ってある程度は手を加えてやらないと懐古的なラインナップになることは必至だ。
加えて、特定の人気ブランドやクリエイターの作品に偏ってしまうことについても考慮したかった。もちろん特定のブランドの作品が全部載っているカレンダーがあっても良いが、今回は私の個人的観点から、できるだけ多様なブランド・クリエイター・ジャンルの作品を選出しようと決断した。

発売年代と開発ブランド。このふたつの偏りを解消するための劇的なアプローチとはずばり、愚直で地道な調整、調整、また調整である。
うるう日を含めた366の枠(実際にはデータ数100に届くエロゲーが存在しない日があるため287の枠)を俯瞰しながら私が満足できるバランスになるまであーでもない、こーでもないと入れ替えを繰り返す。
思えばこれは「同日に発売されたすべてのエロゲーという集合からナンバーワンを選ぶ」というランキング企画を一度に287回やったようなものだ。そう考えると年末っぽいことやってんなと一瞬思ったが、この手のランキング企画は普通その年の出来事を対象にするものなんだよな。

そんなわけで、選定作業ではまず最初にスプレッドシートを参考にざっくりと全体を埋めて、それから発売年代と開発ブランドを調整をしていくという手順を踏んだ。

発売年代については以下の表のようにざっくり6カテゴリに分けて調整を行った。
その過程で一点、想定外な事実に気づいた。エロゲーの発売日といえば「月末エロゲの日」、つまり月末の金曜日に集中しているものだが、古い作品ほどその例から漏れるケースが多いということだ。
従って、月中ごろまでの日付は必然的に古い作品に占められる。ここについては調整のやりようがなかった。

発売年代調整前採用数調整後採用数
~19992925
2000~20048685
2005~200910389
2010~20145360
2015~20191424
2020~202234

印象的な日付

調整をしていく中で大いに迷ったり、新たな発見の合った日付について触れていきたい。

2月18日

ソフトハウスキャラの『南国ドミニオン King of solitary island』(2005)を選定。

他の候補として『SEVEN-BRIDGE』(2005)があったが、2月発売のLiar-soft作品が非常に多いことに気づく。そもそも8日『腐り姫 ~euthanasia~』(2002)、13日『Forest』(2004)と印象的な作品を選定しており、かつ7日の『CANNONBALL ~ねこねこマシン猛レース~』(2003)を選外としている。いずれも2002年から2004年の作品であり、この頃のLiar-softの製作サイクルが見て取れる。

2月29日

ALICESOFTの『超昂閃忍ハルカ』(2008)を選定。

対抗馬にはLeafの『ToHeart2 AnotherDays』(2008)もあったが、ファンディスクは全体的に優先度を落としているため選外とした。
うるう日が月末エロゲの日と被るパターンは2008年しかなかった。その前は1980年、次は2036年だ。どうやら28年周期らしい。

3月27日

しゃんぐりらの『暁の護衛』(2008)を選定。

対抗馬には『BALDR SKY Dive1 ”Lost Memory”』(2009)。どちらもシリーズものの一作目として存在感があるが、『BALDR SKY Dive2 ”RECORDARE”』(2009)がその日に圧倒しており内定状態だったため選外とした。シリーズものはその中でも特に目立つ作品を一本選びたいというお気持ちで調整した。

3月30日

ゆずソフトの『DRACU-RIOT!』(2012)を選定。

対抗馬は『RIDDLE JOKER』(2018)。ゆずソフトから逃げられない。今回この企画を通して改めてゆずソフトの強さを実感した。

4月21日

ILLUSIONの『レイプレイ RapeLay』(2006)を選定。

対抗馬にはfengの『青空の見える丘』(2006)、UNiSONSHIFT:Blossomの『ななついろ★ドロップス』(2006)とパワーのある作品が並ぶが、両作のブランドとも他に入りうる作品があり、なおかつ『レイプレイ RapeLay』は様々な事情によりあまり表立って取り上げられない立場にあるため敢えて選んだ。ILLUSIONは3Dエロゲー製作ブランドの雄としてリアルシェーダー系は本作、アニメシェーダー系は6月10日の『ジンコウガクエン』(2011)と両路線を収めることができて満足。

4月24日

ぱれっとの『9-nine- ゆきいろゆきはなゆきのあと』(2020)を選定。

対抗馬には『死神の接吻は別離の味』(2009)、『姫狩りダンジョンマイスター』(2009)、『シークレットゲーム -KILLER QUEEN-DEPTH EDITION-』(2009)、『イブニクル』(2015)と役者が揃っているが、2020年代発売の人気シリーズ完結作というステータスに惹かれて採用。

6月28日

CIRCUSの『D.C. ~ダ・カーポ~』(2002)を選定。

対抗馬はBasiLの『それは舞い散る桜のように』。この二作が同じ年、同じ日に発売されたというインパクト。『D.C. ~ダ・カーポ~』はシリーズの原点として入れたかったため採用。

7月30日

ルネの『戦乙女ヴァルキリー「あなたに全てを捧げます」』(2004)を選定。

対抗馬には『俺たちに翼はない AfterStory』(2010)、『家族計画 ~そしてまた家族計画を~』(2004)、『ラムネ』(2004)など、ファンディスクや他に候補作がいくらでもあるねこねこソフトだったりしたため、直近では2019年にも続編が出たシリーズものの原点を採用。

8月31日

ねこねこソフトの『銀色』(2000)を選定。

実は『銀色 完全版』(2001)がちょうど一年後の同日の発売だったりする。

9月16日

Black Lilithの『対魔忍ユキカゼ』(2011)を選定。

対抗馬には『Tick!Tack!』(2005)、『夢幻廻廊』(2005)、『Princess of Darkness ~緩やかに廃滅する青珊瑚の森~』(2005)などがデータ数的にはほとんど横並びだが、いまも現在進行系で勢いが増している『対魔忍』シリーズを一作入れたかったため採用。

10月25日

Loseの『ものべの -happy end-』(2013)を選定。

レギュレーションのひとつに「追加要素の少ないリマスターや完全版でないこと」とあるが、この「追加要素の少ない」の部分をわざわざ入れたのは本作のせい。本作以外にLoseを入れる余地がなかったため、調整の過程でレギュレーション側を若干歪めた形である。

11月22日

HERMITの『世界でいちばんNG(ダメ)な恋』(2007)を選定。

そもそも2007年11月22日は本作以外に『キラ☆キラ』(2007)、『そして明日の世界より――』(2007)、『赫炎のインガノック ~What a beautiful people~』(2007)が同日発売だったことが語り草となっているが、ここはひねくれて『EVE burst error』(1995)をあえて選ぶということも最後まで考えてたりした。結果的に、データ数が一番多く、かつHERMITは他作品が選定されていないことから『世界でいちばんNG(ダメ)な恋』を採用した。
また、いずれも選外のため完全に余談になるが、20日は『白光のヴァルーシア ~What a beautiful hopes~』(2009)、21日は『漆黒のシャルノス ~What a beautiful tomorrow~』(2008)、そして22日は『赫炎のインガノック ~What a beautiful people~』と並ぶ。どれかひとつ選定したら全部入れたくなるやつじゃん。

11月24日

この日に関して、私は真に心乱される葛藤を重ねたが、この余白はそれを書くには狭すぎる。

12月19日

あざらしそふとの『アマカノ』(2014)を選定。

実は同日の中で見ても『アマカノ』のデータ数はそれほど多い方でない。それどころかこの日のトップ3は『大番長 Big Bang Age』(2003)、『鬼畜王ランス』(1996)、『アトラク=ナクア』(1997)とアリスソフトの傑作がひしめいていたりするのだが、来年『アマカノ2+』とシリーズ続編が控えているところが選びたくなったポイント。

12月26日

elfの『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』(1996)を選定。

対抗馬はNitroPlusの『沙耶の唄』(2004)。実はいちばん迷ったのはこの日。どちらもエロゲー史的に重要な作品であり、なおかつここを逃すと剣乃ゆきひろさん、虚淵玄さんのシナリオ担当作が一作も入らないことに気づいてしまいさあ大変。基本的に1月から順に詰めていったしわ寄せがこの日に炸裂した感じがした。選定理由としては、虚淵玄さんは今後まだまだ傑作を作りうるだろうということで選外とした。

おわりに

2023年という未来のカレンダーを形作りながら、これまでのエロゲー史という過去を俯瞰するこの作業は、面白くも面倒くさかった。
企画の発想段階でカレンダーという完成形が揺るがない強固なフォーマットを利用するため、考えるべきことも絞れてそんなに大変でもないだろう、と軽く考えていた↓こいつをぶん殴りたい。

今年もエロゲーは買って積んでで終わってしまった。だから来年は遊びたい、というモチベーションを高めることもこの企画の動機のひとつ。
エロゲーを遊んだらさすがにこのブログも更新するだろうから、まあその、来年もよろしくお願いしますということで。

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3件のフィードバック

  1. 匿名 より:

    11月24日のこと、是非聞かせて下さい(今結果として選ばれた作品だけを見ると、ただ妥当な選択が行われたようだとだけ、思ってしまいそうになります)。

    • こーしんりょー より:

      コメントありがとうございます。
      簡単に言ってしまえば、死ぬほど好きな作品を採用するというエゴを通すが、企画の質を高めるために妥当な作品を選択するかの究極の二択に苛まれていました。
      参考までに数年前の11月24日に当ブログに投稿した記事のアドレスを貼っておきますね。
      https://spisignal.jp/2016/11/24/figu-10th-anniversary/

      • 匿名 より:

        ご返信ありがとうございます。
        その好きな作品はどこにあるのかなとぼんやりとは思ってはいたのですが(以前その作品について書かれていたこのサイトの記事を読んだことはあったので)、全く頭の中で結びついていませんでした。にわかでない読者の皆さんにはピンときていたのですね。なんだか申し訳ないような恥ずかしいコメントをしてしまいました。
        エロゲーを語るサイトがほとんど消えていってしまった中で(私はその最盛期に遅れてこの世界を知りました)、このページがあることは本当にありがたいです。どうか末永く続くことを願っています。

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