『幽明境を異にする』レビュー

点数ブランド発売日
65点美遊2004-09-10
シナリオ
WANA
原画
みつや
紹介サイト
幽明境を異にする 通常パッケージ版 (美遊) (18禁) [ゲーム] - Getchu.com
備考
 

あらすじ

主人公・八代 孝(名前変更可能)は図書室仲間の先輩・一ノ瀬 まどかとともに学校に隠された木製のケースを見つける。
そのケースの突起を押すと一枚のカードが。「恋遊びの文札」と呼ばれるそのカードには指示が記されており、内容は特定の場所を見ろといった他愛のないもの。
面白そうだとその指示に従っていく二人だったが、「恋遊び」を進めていくうちにカードの不思議な力によって旧校舎に閉じ込められてしまう。

そう、恋遊びの文札には呪いが宿っていたのだ。

旧校舎から脱出するためには恋遊びを進めていくしかない。
しかしカードに記された指示の内容は次第に過激なものへとなっていく。

物理教師や同級生、まどかの妹である一ノ瀬 さやかを含む美術部部員など同じく旧校舎に閉じ込められた者たちとともに、はたして脱出できるのか。

旧校舎に閉じ込められるきっかけとなるカード。
うっすらと書かれた印が呪物としての説得力を高めている。

探索とホラー

本作は恋遊びの文札に記された指示をクリアしていく探索アドベンチャーゲームだ。
多くのカードには場所が指示されており、そこに移動することで物語が進展する。
また、カードが2枚手元にあるときはどちらの指示を優先するかを選択でき、それによって物語が分岐する。

移動パート。
はじめは各教室の位置関係が分からず迷いまくることになるが、一周終えた頃には自宅の庭のように移動できる程度に慣れる。

ストーリーのジャンルはホラー。
封鎖された旧校舎という舞台からしてすでにホラーとしての雰囲気があるが、恋遊びの文札が放つ理不尽な呪いによる恐怖とそれによって駆動される暴力、そして人間不信に陥る登場人物たちの姿が描かれる。

官能ホラーからオカルトホラーへ

恋遊びの文札が指示する内容は次第に性的な色を帯びていく。
はじめはキスや愛撫といったまだかわいらしい内容で、図書室仲間というどこか歯がゆい関係であった孝とまどかが触れ合う姿はどこか微笑ましい。ここでのまどかは明らかに孝に対して気があるのに、それを隠すように先輩風を吹かせつつ身体への接触を許していくところが可愛い。

しかしその指示もすぐに許容範囲を超えて、女性を辱めるような内容へと過激化していく。
恋遊びを進めるなかで合流した物理教師の和希 美七はその指示を一笑に付して無視するが、直後にカードの力によって謎の男たちに犯されてしまう。

アナルが弱そうな顔立ちの上に、超常現象を前に生徒たちよりも先に発狂しそうな発言をする女教師。

性的な指示を実行しなければ酷い目に遭うというこの状況は、閉じ込められた中で唯一の男性である孝だけがおいしい思いができるということで女性陣から疑いの目で見られてしまうことになる。
実際に恐怖と肉欲に負けてヒロインに性暴力を振るってしまう孝の姿に居心地の悪さを感じるが、とはいえ男性プレイヤーとしてはヒロインたちから不審がられるこの扱いになんとも嫌な気分にさせられた。
この男女の性差から生じる不均衡を官能ホラーとして昇華している点はエロゲーという媒体を活かしているポイントだろう。

本作を封鎖された空間からの脱出劇というシチュエーション・スリラーとして見たとき、本作特有のルールがひとつある。
それは一度だけ死んでも蘇るということだ。
作中で「死の体験」と呼ばれるこの現象は登場人物たちに死の痛みと恐怖を植え付ける。「メメント・モリ」という言葉を引用するまでもなく自らの死を意識することはその人の行動を変えうるのだ。
加えてこの「死の体験」を経た者だけに訪れるある変化がストーリー上のギミックとして面白く機能している。本作をプレイする際はプレイ中のルートで「誰が一度死んでいるか」を意識するとより一層楽しめるだろう。

ストーリーが進行するにつれて恋遊びの文札という呪いのアイテムの謎についても明かされていく。
この真相の開示の仕方が巧い。本編の進行に合わせてタイトル画面の「想起」というメニューに恋遊びの文札が生まれた経緯を描く過去編が順次開放されていくのだが、エピソードの開放順が時系列的にバラバラになっておりミステリーとしての牽引力を高めることに成功してる。

淡い恋心が世にも恐ろしい呪いへと変容していく「想起」編の内容自体が面白いのに加えて、本編で描かれる超常現象がエスカレートするに連れてその恐怖の正体を「想起」編で突きつけるといった形で、2つの話を同時に語ることによる相乗効果が見事に発揮されている。

昭和十九年、戦時中を舞台とした「想起」編の主要人物である4人の恋愛模様が、現代編の「恋遊びの文札」の呪いにどう繋がっていくのか。

エッチシーンはストーリーの内容に合わせてレイプ系や嫌々ながら身体を許すようなシチュエーションが多く用意されている。
暴力や過度な羞恥プレイもあり、数は多くないが流血やスカトロが絡む過激なシーンもあるため苦手な方は注意したほうが良いだろう。
そういったシチュエーションが好きならばそれなりに楽しめるが、全体的にテキストが淡白なので抜きゲーとしてはやや弱めである。

ゲームとしての詰めの甘さが……

以上のようにシナリオだけ取り出して見ればホラーとして良くできた作品であることは間違いない。
しかしゲームとしては詰めが甘いと言わざるを得ない。

その問題点の大部分はルート構成にある。
5人の攻略対象ヒロインそれぞれに複数のエンディングが用意されているのだが、話の大筋としては後半にいたるまであまり大きな差分はなく、最後にエピローグが分岐するだけなのだ。

そもそもホラーというジャンルは基本的に「分からない」という状況を恐怖として楽しむところがあるため、真相が明かされてしまったら、本作で言えば恋遊びの文札の呪いに一定の理屈付けがされてしまったら、とたんに恐怖は減退していく。
リニアな物語媒体であればオチを開示したらすぐに撤収してしまえば問題ないが、本作のように多くのエンド分岐があるアドベンチャーゲームの場合はそうもいかない。2周もすれば本作の謎の大半は解明されてしまい以降のエンディング回収は退屈な作業と堕してしまう。探索アドベンチャー故に操作するパートも多くスキップ放置も許されない。

しかも物語中の差分がなさ過ぎて狙ったヒロインのルートに乗れているのかも実際に分岐する終盤まで判断できないのも辛い。好みのヒロインのエンディングだけ回収しようと思うと沼にはまることになる。
そもそも分岐するエピローグもこれといって驚くような内容もなくエッチシーンがあるだけなのだが……。

総括

幽明ゆうめいさかいことにする」――あの世とこの世に別れること、すなわち死別を意味するこの語をタイトルに冠した本作は2004年発売ながらいわゆる「セックスしないと出られない部屋」を先取りしてオカルトホラー風味に調理した一作だ。

ホラーエロゲーということで、性暴力も絡んだ理不尽なシチュエーションでヒロインたちと共に恐怖感を味わえる。
特に効果音を用いた恐怖演出が秀逸。大きな音でびっくりさせるのではなく不快感を煽る音でじわじわと攻めてくるところに好感が持てる。

ストーリー面では一度だけ死んでも蘇るというギミックや、時系列をバラバラにした過去編である「想起」編といった仕掛けが上手く決まっておりよく練られている。
その一方で探索アドベンチャーとして必要なシナリオ差分がまったく足りておらず、本作の美味しいところは1周目でほとんど出し尽くしてしまうためたくさん用意されたエンディング回収が作業と化してしまう欠陥がある。

あらかじめコンプは考えずに最初の1,2周目を全力で楽しみ(怖がり)にいく、という気持ちでプレイするのがオススメだ。

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