【ネタバレ有り】MASARU – 『勝 あしたの雪之丞2』をプレイ その2

プレイ進捗

前回のプレイ日記から一気に進め、達成度100%。攻略完了である。

ネタバレ無しの端的な総評はクリア直後にツイッターに載せた。

ツイート内の引用は前回のプレイ日記で紹介した主題歌の『Hi・Ra・Ri』から。

正直、このツイート以上の感想はすべて蛇足だ。とにもかくにも「好きな作品」の一言に尽きる。
主人公の勝も、ヒロインたちも、シナリオも、前作との絡みも、前作以上に高めの難易度も。
そして何より、このキツい現実に生きる登場人物たちを優しく包みこむ作品世界が大好きだ。

そんな訳で以下は蛇足だが、後日投稿予定のネタバレ無しレビューには収まりきらない本作のテーマ的な部分に関して、直接的に言及したい。

勝 あしたの雪之丞 2
勝 あしたの雪之丞 2

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『勝 あしたの雪之丞2』

本作のタイトルは『勝 あしたの雪之丞2』である。
何をアタリマエのことをと思われるかもしれないが、クリアした今となっては絶妙なタイトルだと感じる。

そもそも、なぜ『あしたの雪之丞2 勝』でないのか。なぜ単にスペースで区切っただけの『勝 あしたの雪之丞2』なのか。

私は、その理由は「勝」も「あしたの雪之丞2」も、どちらもメインタイトルだからと考える。
つまり、ふたつのメインタイトルが並列に並んでいるイメージだ。

タイトルロゴに注目したい。

インパクトのある英字・縦長・太字の構成の「MASARU」のロゴは十中八九『ロッキー』のパロディだろう。
パロディの多い本作だが、ヒロインのあきらが勝に「どついたるねん」†01『どついたるねん』は元プロボクサーの赤井英和の自伝を元に、監督・阪本順治、そして赤井英和自身が主演を努めた1989年公開のボクシング映画。
意識不明の重体から奇跡的に回復したボクサーという設定が今作と共通しており、作中のネタも多数引用されている。そして赤井英和のボクサー時代の異名は「浪速のロッキー」。
というあだ名を付けることや、直接的なロッキーパロディとして勝が生卵を飲むシーンなどから、勝をロッキー・バルボアと重ねていることは間違いない。前作タイトルが『あしたのジョー』のパロディであることからもこの推察は外していないと考える。

そんな「MASARU」の文字をバックに、前面の同位置に掲げられるのが『あしたの雪之丞2』の文字。
レイアウト上の前後はあるが、そこに文字サイズの工夫が凝らされており二つのタイトル間に主従関係が感じられないよう気が配られている。

本作が主人公である久保勝の物語であることを明確に示し、同時に『あしたの雪之丞2』でそもそも今作が続編であること、そしてやはり雪村雪之丞の物語でもあることを示す。

このタイトルは、二人の主人公が直接ぶつかり合うクライマックスを暗に予感させていたのだ。

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「カムバックだ」

本作のテーマはずばり「カムバック」だ。
具体的には「自分らしい生き方(=物語)を不幸により一度喪失した人物が、大切な人を得て、ふたりで呼吸を合わせて新しい物語へと飛び出す」ことと私は読んだ。以上を一言でまとめて「カムバック」だ。

そもそもが今作は前作『あしたの雪之丞』の最初のシーンでもって、二人の主人公が「自分らしい生き方」を喪失してしまう瞬間が描かれる。
その喪失から立ち直ることが出来たが、しかしカムバックには至らなかった。それが『あしたの雪之丞』における正史・せりなルートの雪之丞だ。

そして、今度はもう一人の喪失者である勝を主人公に置き、すべてのルートにおいてヒロインとの関係性から生じる様々な「カムバック」を描き出すのが本作の狙いだ。

三枝マキのワガママを貫き通す自分らし生き方や、藍川ちはるにとってのボクシング。
桜瀬由美子の恋心と、共に完璧な修学旅行を過ごした最強の仲間たちとの友情。
久保晶子はずっと片思いしていた幼馴染・雪之丞から離れた一年間という時間を通じて雪之丞からの卒業を果たす。最後に彼女がピアノを弾くことの意味は皆まで言うまい。
そして、今まさに失いつつある水島あきらを前にして、自分らしさを失った勝に発破をかけるのが雪之丞だ。久保勝は再び水島あきらの恋人としてカムバックする。最も彼らしいやり方で。

最後にグランドエンド、「――そして、始まる物語。」は、その集大成だ。あの事故の瞬間に囚われたままの勝と雪之丞が、自分自身を取り戻すための最後の闘いに踏み出す。
『あしたの雪之丞』シリーズのクライマックスに相応しい、唯一の逃げなし直球ボクシングシーンだ。

この「カムバック」というテーマに関連して、私が本作に一番近い印象を持った映画は『ロッキー』や『どついたるねん』ではなく、『ハスラー2』であった。
『ハスラー2』はボクシング映画である先の二作とは異なりビリヤード映画なのだが、『あしたの雪之丞』は1年、『ハスラー』は25年越しの続編で、作品世界の時間経過とリンクさせているという特徴を共有している。そして、第一作目で失った自分らしい生き方を最後に取り戻すという、シリーズとしての大団円の構造が一致しているのだ。
「カムバックだ」という印象的な台詞も恐らく『ハスラー2』からの引用だろう†02三枝マキルートにて、マキと勝がビリヤードをするシーンがある。直接的なパロディを連発する本作において『ハスラー』について直接言及されることはないが、このシーンは『ハスラー』シリーズに対する目配せだったのではないかという程度には深読みしている。

実は『ハスラー2』は個人的にオールタイム・ベスト10級に大好きな映画なのだが、それ故にここまで『勝 あしたの雪之丞2』に惚れ込んだのも当然と言えよう。

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印象的なエンドの雑感

No.06 鷲淵権蔵・世界に羽ばたく俺とオデ

いきなり野郎エンドなのだが、とにもかくにも終わり方が素晴らしい。
前作をプレイした人だけが分かる、CG一枚できっちりオチをつけて多くは語らない。切れ味抜群のエンディングだ。

No.10 新島早苗・それでも夢を

前作ヒロインのおまけエンド。

実は個人的に前作で一番好きなエンドが「早苗ルートの晶子エンド」という、前作をプレイしていないとなんじゃらほいという感じのエンディングなのだが、こちらは言わば「早苗ルートのせりなエンド」とでも言うべきもので、ルートが異なっても、同じ不幸を抱えても、それでもひたむきに自分の夢を追いかける早苗さんの姿が印象的。

No.12 水島あきら・あきらと共に

あきらルートの非トゥルーエンド。

メインヒロインということで最後に回したあきらルートだが、この時にはもうすでに「このゲームが終わって欲しくない」と感じていた。
そんな私の願いに答えるかのごとく、クライマックスであきらを取り戻して物語が終わった後に、本当に呆れるくらいにダラダラと鹿島祭の模様を展開してくれる。
この幸せな時間が終わってしまうことを惜しむように。

普段なら「ダラダラしやがって」とネガティブに思うところだが、本作に限ってはこのダラダラ感すらも愛おしい。実は一番好きなエンドかもしれない。

No.13 水島あきら・重なり合う鼓動

あきらルートのトゥルーエンド。

メインヒロインこそ重厚に、感動的にという一般的な傾向をまるで無視して、非常にオマヌケな展開で結末を迎える。
しかし、勝とあきらというコンビにとっては、天丼的に重厚さだけを高めて感動的な音楽鳴らして涙なしでは見られない展開だなんて、やっぱり似合わない。
展開自体はオマヌケだが、しかし伏線的に仕込まれたある台詞を最後に持ってくるところが憎く、そして巧い。

普段なら「オマヌケしやがって」とネガティブに思うところだが、本作に限ってはこのオマヌケ感すらも愛おしい。実は一番好きなエンドかもしれない。

No.18 藍川ちはる・王座誕生

ちはるルートのウルトラ・スーパー・バッドエンド。

好きになった女相手に勝負をかけれず、親切止まりだった男の最後。
ちはるが最萌えヒロインだった私にとってはこの不意打ち寝取られエンド(エッチはなし)は心に刺さった。トラウマ。

No.25 久保晶子・暖かな旋律

晶子ルートのトゥルーエンド。

本作のテーマ昇華という点では一番のエンドかもしれない。
前作に引き続き、裏のメインヒロインとしての立ち回りを演じた妹・晶子さんに拍手。

プレイ中のツイートまとめ

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『あしたの雪之丞』レビュー
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脚注   [ + ]

01. 『どついたるねん』は元プロボクサーの赤井英和の自伝を元に、監督・阪本順治、そして赤井英和自身が主演を努めた1989年公開のボクシング映画。
意識不明の重体から奇跡的に回復したボクサーという設定が今作と共通しており、作中のネタも多数引用されている。そして赤井英和のボクサー時代の異名は「浪速のロッキー」。
02. 三枝マキルートにて、マキと勝がビリヤードをするシーンがある。直接的なパロディを連発する本作において『ハスラー』について直接言及されることはないが、このシーンは『ハスラー』シリーズに対する目配せだったのではないかという程度には深読みしている。

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