『君と彼女と彼女の恋。ソシャゲ版』リリース直前! – 『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ> SUICIDE MISSION』をプレイ その1

はじめに

プレイ中のソーシャルゲーム『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ> SUICIDE MISSION』(以下『NECRO SM』)。リリースから1年以上が経過し、いまも原作『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ>』の世界を拡張し続けている。

そんな本作のコラボイベント第3弾として『君と彼女と彼女の恋。』(以下『ととの。』)がアナウンスされたとき、思わず運営の正気を疑った。まさかそんなことができるのか、と。

そんな私の困惑をどうにか『ととの。』未体験の方にも本編の重大なネタバレ無しで†01まさかそんなことができるのか?伝えたい。

『君と彼女と彼女の恋。』という問題作

2013年6月28日に発売された『ととの。』は発売前から異質だった。ニトロプラスらしからぬ学園恋愛モノと思わせてからのショッキングなPV、延々と実写映像をストリーミングし続ける特設HP、媒体をUSBメモリーにしたことで実現したエロゲーらしからぬコンパクトなパッケージ(初回版のみ)、隠しコードを入力するとすべてのCGが閲覧できる体験版、そして発売前から個性的なアドベンチャー・ノベルゲームのクリエイターたちによるプレイレビューを掲載したりと話題に事欠かなかった。

他に類を見ないこれらのプロモーション手法の数々が示すのは、本作が他に類を見ない内容を備えているということである。同時に、『ととの。』というひとつのゲームを飛び越えた「たった一度きりの体験」を盛り上げる意味でもこれらのプロモーション戦略はまさにピントの合ったものだった。そう、「たった一度きりの体験」だからこそ。

「たった一度きりの体験」という厄介さ

それは翻せば「一発ネタ」なのだ。その一発ネタのために、前述したプロモーションを含めた本作のすべての要素が集約されている。

加えて、この『ととの。』はプレイヤーに対して本作が「たった一度きりの体験」となるように様々な仕掛けを施しており、ご丁寧にも最後には「呪い」をかけてくるのだ。その呪いの強度はプレイヤーによりまちまちだろうが、少なくとも私は本作を一周しかプレイしていない†02発売一年後にニトロプラス公式がニコニコ生放送で配信した全編プレイ放送「君と彼女と彼女のニコ生。~選べるのは、一人だけ~」は視聴した。。だからぶっちゃけ内容のディテールは結構忘れかけてたりしている。

そんな強烈な呪いをかけられるほどカルト的に熱狂した私のようなプレイヤーからすれば、そもそも「ソシャゲ版」なんて天丼ネタは許容できないのだ。たとえ媒体が変わったからといって彼女たちとの交流を「たった一度きりの体験」にしたいという気持ちは誤魔化せない。特に、今回Live2Dでグリグリ立ち絵が動くようになった曽根美雪と、一体どういう気持で向き合えというのだろうか。

『NECRO SM』ではこれまで第一弾『装甲悪鬼村正』、第二弾『斬魔大聖デモンベイン』と、ニトロプラスの中でもとりわけ人気の高い作品とのコラボイベントを開催してきた。これらのコラボイベントはもう一度彼ら・彼女らの活躍を新ストーリーで見れるという喜びがあったが、こと『ととの。』においては必ずしもそれが素直にプラスにならないと考える人もいるのだ。

そもそも「ソシャゲ版」とは一体

てかぶっちゃけ、『ととの。』という面倒くさいにもほどがあり過ぎる食材を『NECRO SM』という俎上でいったいどう調理するのだろうか?

先述したとおり『ととの。』は「一発ネタ」なひとつのコンセプトの元に、プロモーションからゲームシステム、デザインに至るまですべての要素が緻密に組み立てられたゲームであり、そうでなければ実現し得ない作品なのだ。一方で『NECRO SM』はすでに確固としたゲームシステム、デザインを持つ稼働中のゲームである。もちろん『ととの。』をそのまま再現するとは露ほども思っていないが、『ととの。』をやるからには最低限クリアしなければならないハードルが有り、それが現在の『NECRO SM』上で実現可能なのかという問題がある。

例えば、このコラボイベントの告知と同時に公式ツイッターで「リツイート」または「いいね」で投票するプロモーションが打たれた。

これは『ととの。』のコンセプトに沿ったうまいプロモーションである。一部リツイートができない人が出てくるということを除けば。

しかし、このコンセプトを『NECRO SM』上で実現することを考えると即座に大量の問題点が思い浮かぶ。そもそもどのようにして美雪とアオイをプレイヤーに獲得させるのだろうか。ソシャゲにおけるキャラクター獲得の定番であるガチャはキャラクターを「選べない」ことがゲームとして(そしてサービスとして)前提の作りとなっており、この時点で『ととの。』のコンセプトとは相容れない。よしんば獲得できるガチャを分けるとしても、「課金すれば両方獲得できる」というのでは『ととの。』的にはNG……とは言わないまでも、微妙だ。そもそも「選んだ」のに獲得できないとなってはそれこそ『ととの。』的にはNGである。

諸々考えると、やはりガチャではなくイベントシナリオ上で最終的にいずれかを選択し、確定で入手できるというのが許容できるラインだろう。加えて特定のシリアルコードを入力すると両ユニットが獲得できるが、ふたりの回想ストーリーは閲覧できなくなるところまでやり切れば感心するが、システム的に面倒くさい上に課金が発生しないのでまさかここまで作り込むことはあるまい。そもそも『ととの。』はプレイヤーにある種の不便を強いることがそのまま作品の価値に直結しているという奇特な作品であり、それはユーザーにサービスを提供するという普通のエンターテインメントとは相容れないものなのである。

君と『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ>』と『君と彼女と彼女の恋。』の恋。

話変わって、シナリオはどうなるのだろうか。これまでのコラボイベントのシナリオは「メタフィクションズ」というオーバーテクノロジーなバイオプリンタが登場し2199年の凍京にニトロプラスのゲームキャラクターが現れるというご都合主義的な顔見せお祭りシナリオに留まっていた†03『斬魔大聖デモンベイン 機神凍臨』では原作の特性を活かしてこのご都合主義を上回る展開を見せるが。

上記の美雪を紹介する公式ツイートを見ると、どうもこれまで同様に美雪が2199年の凍京に現れるというシナリオになりそうだが、これはこれで大問題である。『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ>』は2199年という遠未来を描いたフィクションであるが、しかしそんな絵空事のような遠い未来が確かに2010年代の東京とリアルに繋がっているという風に思わせてくれるところにセンス・オブ・ワンダーを感じさせてくれる作品である。つまり、凍京というフィクションを「遠い未来の現実の可能性」と解釈して遊んでいる私にとっては、現実世界に美雪が現れるということになり、これは『ととの。』の、特に曽根美雪というキャラクターのコンセプト的に重大な矛盾を引き起こすことになる。

ここで『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ>』と『君と彼女と彼女の恋。』というフィクション同士が互いの確固としたコンセプトを盾としてまさしく正面衝突することとなる。

『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ>』のコンセプトを採れば『ととの。』のコンセプトが揺らぐこととなり、『ととの。』のコンセプトを採れば『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ>』のコンセプトが揺らぐこととなる。一体全体、この混乱をどのように解きほぐすというのだろう。両者をバランス良く成り立たせるシナリオなんて、私にはまるで想像もつかない。この致命的なエラーが解消されなければ、最悪「『NECRO SM』は『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ>』ではない」とかのたまい始めて引退しかねない事態である。

おわりに

マジで頼むぞ。

関連リンク

『君と彼女と彼女の恋。』レビュー
『凍京NECRO』レビュー

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脚注   [ + ]

01.まさかそんなことができるのか?
02.発売一年後にニトロプラス公式がニコニコ生放送で配信した全編プレイ放送「君と彼女と彼女のニコ生。~選べるのは、一人だけ~」は視聴した。
03.『斬魔大聖デモンベイン 機神凍臨』では原作の特性を活かしてこのご都合主義を上回る展開を見せるが。

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1件の返信

  1. 匿名 より:

    自分もはじめは「コラボやったー」としか思ってなかったのですが、コラボ日が近づくにつれ同じように不安を感じました(笑)
    そして見事に不安は的中してしまいました・・・。
    なんとかストーリーは許容できたのですが美雪の回想で引退を決意しました・・・。

    ととのはプレイヤーに与える影響が大きすぎる作品なので、そこらへん考慮してコラボしてほしかったですよね。

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