【ネタバレ有り】『君と彼女と彼女の恋。ソシャゲ版』サ終間近! – 『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ> SUICIDE MISSION』をプレイ その2

はじめに

『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ> SUICIDE MISSION』(以下『NECRO SM』)のコラボイベント第3弾「君と彼女と彼女の恋。 ソシャゲ版」は明日終了する。イベント開始前日にも記事をアップしたので、それじゃあ終了前日にもアップしようという流れである。

イベント初日はアプデ終了後に仕事を投げうってすぐにイベントストーリーを読破し、ツイッターで「#necrosm」タグをウォッチ。そこには、躊躇なく新プレイアブルキャラクターである美雪とアオイの両方を獲得したプレイヤーの声が相次いでいた。

そんな地獄のような光景を前にして私は気づいたのだ、私は『君と彼女と彼女の恋。』(以下『ととの。』)を過剰に内面化したカルトと化していたことに。

だから以下は、そんな『ととの。』カルトな私が今回の「君と彼女と彼女の恋。 ソシャゲ版」の良かった点・悪かった点を挙げ、総括したい。

良かった点

美雪とアオイの性能差をできるだけ抑えた

美雪とアオイのキャラクター性能は、どちらも色は緑、メイン武器はリ・エリミネーターで、パラメータとパッシブスキルを同一にするなど、なるべくキャラクター性能で選ばせないよう配慮がされていた。

原作に興味がない、ただ単に強い戦闘ユニットが欲しいだけのユーザーにとっては同じような性能の2体が、しかもどちらもリミテッド†01ということで嫌がられるだろうが、『ととの。』としては絶対に正しい仕様なのでこの判断に踏み切ったことは高く評価したい。

イベントが始まるまでは私含めて原作既プレイの誰もが美雪は鈍器だろうと予想していたためリ・エリミネーターを使うことに軽く驚いたが、狙いを考えれば2人に近接柔術を学ばせるというストーリー展開も相まってうまい落とし所だったと思う。

唯一の差分はアクティブスキル。アオイの「カミサマ」は全体大ダメージ+超強力サポートで非常に汎用性が高く、一方で美雪の「ハッピーバースデートゥーユー」は単体超大ダメージというピーキーな性能で使いづらい。従って、総合的な性能ではアオイに軍配が上がる。とは言え美雪の「ハッピーバースデートゥーユー」はあの有名なネタバレシーンの再現で演出も良く出来ており惹かれるものがあるとフォローしておこう。

イベントストーリークリアで美雪/アオイのいずれかを確定で手に入れられる

『ととの。』で最も重要なコンセプトである「二者択一」。美雪かアオイかのどちらか片方を「たった一度だけ」選ばなければならないという演出を『NECRO SM』上でどう実現するのかは今回のイベントの見どころだった。

そこで採られた仕様は、まずは美雪とアオイの排出ガチャを分け、かつイベントストーリークリアでどちらかを選択して獲得できるチケットを1枚だけ入手できるというもの。ほぼ事前の予想通りの内容で、致命的に外さない程度に妥当な作りだと思った。

……しかし、この仕様が一転して後の悪かった点に強く影響するのであるが。

『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ>』の世界における『君と彼女と彼女の恋。』というゲームの扱い

先日の記事の最後に書いたが、私はそもそも原作『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ>』と『ととの。』の二作はクロスオーバーするには相性が悪いと考えていた。

現在の現実と地続きの遠未来を描いた『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ>』の世界に『ととの。』のヒロインが現れるということは、「ゲームの登場人物である」こと自体が悲劇の始まりであった曽根美雪が現実の世界に現れてしまうということで、彼女のコンセプトが揺らいでしまうというのがその理由だ。同時に、『ととの。』は「これはゲーム=フィクションである」とぶっちゃけることを前提とした作品であり、それを『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ>』という設定を作り込むことで作品世界が現実と地続きであると感じさせるタイプの作品上でやられるとやはり『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ>』という作品自体のコンセプトが揺らいでしまうのも問題だ。

とはいえ、今回は流石に『NECRO SM』……つまりは『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ>』がホストであり、『ととの。』はゲストという関係性にある。なのでどちらかといえば『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ>』のコンセプトが優先されたストーリーが展開されることになる。

バイオプリンター・メタフィクションズで『ととの。』の登場人物である美雪とアオイが凍京に現れ、ふたりはこの世界に適応しようと生死者追跡者になるための特訓を開始する。そして試験当日、美雪は試験に使用するヴァーチャルスフィアにハッキングし、一巴と二人きりで「あの部屋」へ――といった流れだ。その過程で『NECRO SM』が純愛ゲームでなくソーシャルゲームであり、かつ一巴のハーレムゲームであるということを喝破するくだりなどは笑った。

ストーリーのクライマックスでは、バーチャルスフィアから出てこない美雪と一巴を救い出すためにアオイがカミサマと交信し、セカイをアップデートする。そこで使われるスマートフォンが、ニトロプラス社屋に残された『ととの。』のプロモーションで使用されたスマートフォンという小ネタも原作ファンからすればニヤリとさせられるが、その結果として凍京のメッシュネットワークから『君と彼女と彼女の恋。』のゲームデータが消えてしまう。原作ゲームが存在しないからこそ『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ>』のセカイの美雪は凍京で生きていけるようになるというロジックだ。

この、ストーリー上できちんと『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ>』の世界が現実と地続きであることを証明するかのように『君と彼女と彼女の恋。』を包含しながら、同時に凍京に現れた美雪を原作コンセプトと大きく矛盾させることなく成り立たせたことは見事で、この辺りはちゃんと戦略ありきでコラボしたことを感じさせる出来であった。

ストーリー以外でもこの専用バトル背景は熱かった。今回の『ととの。』コラボに限らないが、バトル背景は毎回力が入っており『NECRO SM』の楽しい要素の一つである。

悪かった点

美雪/アオイのピックアップガチャに対象でないキャラクターが含まれていた

わざわざ修正したところを蒸し返すのもお行儀が悪いかもしれないが、後の記録のためにまとめたい。

美雪とアオイが排出されるガチャを分けたことは先述したが、ピックアップ対象であるキャラクターでない方のユニットも低確率で排出されるという設定ミスがあった。つまり、例えばアオイを選択したにも関わらず美雪が手に入ってしまう可能性があったということだ。

通常のガチャならばピックアップ対象でないキャラクターであっても低確率でも入手できるということでそのガチャの価値は高めるところであるが、こと『ととの。』コラボガチャにおいてはこのミスは致命的である。もしもこのミスで私が美雪を引いていたらまず間違いなく引退していたところだ。もちろん、今回は『君と彼女と彼女の恋。 ソシャゲ版』と銘打っている通り、原作の『ととの。』ほど「二者択一」を徹底したデザインにはなっておらず†02、それ故に二人とも選択する=入手するということに高いハードルを設定していないことは理解する。それでも原作で「アオイを選んだ」=「美雪を選ばなかった」という己の選択への責任からは逃れられない。

私はよく『ととの。』を指して「呪い」と呼ぶことがある。その意味するところは多岐にわたるが、その一つの意味として「アオイを選んだ」ことによって生じた責任がまるで呪いのように実人生に縛りプレイを生じさせたのだ。確かに『NECRO SM』で美雪を手に入れたら僅かながらもゲームを有利に進めることができるだろう。しかし、それを敢えてしない。一人の人間に、常識的に考えればバグったような判断をさせてしまう程度には『ととの。』という作品には魔力があり、そして圧倒的に面白いのである。

「グランドエンドストーリー」という表記

イベント開始初日、イベント詳細に記載された情報が私を絶望させた。「『曽根 美雪』『向日 アオイ』両メンバーを所持している事が条件」で開放される「グランドエンドストーリー」が後日追加されるというのである。

上記から分かる通り、私はもともと美雪を手に入れることはないと心に決めていた。しかし、そうなるとグランドエンドストーリーが見られない。そもそも、二者択一でどちらかのエンディングしか見ることが出来ない『ととの。』において、「グランドエンド」という概念は相容れないものである。仮に二人とも入手しなければ見れないシナリオがあるとすれば、それは原作におけるチートコード入力と同等のものであるはずだ。しかし、そんな仕掛けが有効に機能するのはそもそも「どちらか片方しかエンディングが見られない」からであり、それを再現するならば「どちらか片方しか入手していなければ見れないストーリーがある」となるはずである。

しかし『NECRO SM』はソシャゲであり、ユーザーには両方のキャラクターを課金して手に入れてほしいという運営上の狙いがある。この「グランドエンドストーリー」表記は、利益追求が原作コンセプトよりも優先されてしまった敗北であるように私の目には映った。その日、私は早々にふて寝した。

この表記については当日中に「おまけストーリー」に修正され、監修の下倉バイオさんからその内容についてアナウンスされた。

まだ僅かばかりの納得いかなさを感じるものの、とりあえずこのアナウンスでもって振り上げた拳を下ろすこととした。

ガチャの設定ミスも、「グランドエンドストーリー」表記も、いずれも『NECRO SM』を運営する合同会社EXNOA(旧:合同会社DMM GAMES)の原作の理解の甘さに起因するものだ。普通のゲームとのコラボならば、ピックアップ対象でないキャラクターが排出されてもユーザーからは喜ばれるだろう。普通のゲームとのコラボならば、課金して両方のユニットを手に入れたユーザーには「グランドエンド」という豪華なオマケを提示したくなるだろう。しかし、『ととの。』は普通のゲームではないのである。

おわりに

『NECRO SM』については、その参加ライターが3月に発生した「だいしゅきホールド」起源論争で大変印象が悪いムーブをかましてしまったこともあり、正直心が離れつつあった。そんな最中に史上最高クラスに面倒くさく、同時に愛着のある『ととの。』のコラボイベントをやるというアナウンスがあり正直かなり不安だった。

蓋を空けてみれば、良いところもある、悪いところもあるといった感想である。確かに初日は特に「グランドエンドストーリー」表記問題が大きくのしかかって強いショックを受けたが、トータルで見れば『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ>』と『君と彼女と彼女の恋。』の見事な折衷を果たしており、満足感はあった。少なくとも、あの有名なネタバレ画像だけ見て『ととの。』をプレイしたつもりになっている人々に、あのシーンの後にこそ真に驚くべき展開があることを伝えるきっかけにはなっただろう。そして、まだ辛うじて引退せずに済んでいるのである。その点は評価したい。

ちなみに私はアオイをレベルMAXにした†03

関連リンク

『君と彼女と彼女の恋。ソシャゲ版』リリース直前! – 『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ> SUICIDE MISSION』をプレイ その1
『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ>』レビュー
『君と彼女と彼女の恋。』レビュー

脚注

脚注
01期間限定排出、かつ同一ユニットを手に入れないとアップデート出来ないため、レベルMAXまで育てるために短期間に相応の課金が必要。
02そもそも『NECRO SM』上で展開する以上不可能であるのだが。
03そのために「向日 アオイスキル強化セット」を2個購入して9,800円課金した。
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