『クリミナルボーダー 2nd offence』レビュー

点数ブランド発売日
60点Purple software2023-05-26
シナリオ
かずきふみ
原画
さめまんま、CHIHIRO
紹介サイト
2nd Offence 勅使河原琴子|クリミナルボーダー|Purple software
備考
クリミナルボーダー 1st offence』の続編

作品概要

本作は全4作予定のロープライスによる連作シリーズ『クリミナルボーダー』の2作目。
今回フィーチャーされるヒロインはヤクザの親分の一人娘、勅使河原てしがわら 琴子だ。

このレビューを読む方はほとんどが1作目をプレイ済みと思われるため、続編の購入に迷われている方に向けて本作がどのような方向に進んでいくのかを手短に解説しよう。

連作形式の意味を生む「お約束」の構築

基本的な作りは前作から踏襲しており、意識的にシリーズの「お約束」を構築する二作目であると感じた。

わかりやすいポイントは冒頭の掴みだ。
物語の途中にある展開をあえて冒頭に持ってきてそれを掴みとするのはよくあるパターンであるが、本シリーズではそれをエッチシーンでやる。
ある意味で「この作品はこういうコンセプトです」という宣言に当たる掴みの場面にエッチシーンを持ってくるのは、エロゲーとしての矜持を感じて好感触だ。

前作から引き続く特徴的な展開として、ヒロインが主人公であるいつきのイメチェンに協力するシーンも挙げられるだろう。
樹の成長物語が根幹である本作において、ヒロインの影響による外見の変遷も見どころとしておいているようだ。琴子が樹のどこに手を加えるのか注目すると面白い。

他にも明確に「お約束」的意図を感じるポイントとして、とあるキャラクターのエッチシーンを頑なに見せないことも挙げられるだろう。

憎まれ役を買って出るキャラクターなので彼女のエッチシーンが見たいという方は少数派かもしれない。
逆に言えば、彼女のエッチシーンが今後見られるとしたらそれは極限まで追い込まれた最悪なシーンになるのかも。

以上に挙げたようなシリーズにおいて一貫する「お約束」――繰り返される展開や演出は、プレイヤーにある種の安心感を与える。
これは一作目からの三作目への最初の繋ぎ役である二作目でこそこなすべき仕事であり、そこはしっかりと果たせている。

二作目で構築したこの安心感を続くニ作品でどのように活かすのか。
押さえるべきところは押さえ続けるのか、はたまたあえて覆してみせるのか。
少なくとも私は、このシリーズは安心感ばかりを与えるタイプのエンターテインメントではないと見ているが、一体どうなるのだろう。

大人と子供の対立、それらを分かつ境界線

本作の物語のテーマに話を移せば、前作のレビューで指摘した「大人と子供の対立」という構造を明確化してきた印象だ。

琴子はヤクザの親分の一人娘。子供でありながら、大人の世界に君臨する王と親子関係にある存在。
そんな彼女をこちら(子供)側へと引き込むという展開なのだから「大人 対 子供」という方向へと舵を切るのは必然だろう。

物語が大きく動くあるシーンの直後に漏らす琴子のひとこと。
このセリフに乗っかるならば、「汚れ 対 純真イノセンス」の対立と見ることもできるだろうか。

同時に本作は主人公である樹の成長物語という側面を持つ。つまり子供から大人への不可逆の変化が描かれるのだ。
本作で敵対する大人たちは「暴力」という選択を躊躇なく採ることができる存在として描かれる。手を汚すことを厭わない存在。
子供と大人とを分かつ境界線がはたしてどこにあるのか。その答えは分からないが、しかし本作のタイトルが「クリミナルボーダー」であることはそのことを示唆しているようにも思う。

境界線上で右往左往する主人公。そして同様の立場に押し入られたもう一人の男。
それが本作のストーリーの注目点となるだろう。

シリーズ中間に当たる二作目であったとしてもきちんと一つの作品としての起承転結を意識した作りであることは前作から変わらない。
本作単体でも一定の満足感が得られる程度のクライマックスを用意してくれている。この点は安心してプレイしてよいだろう。

ヒロインは勅使河原琴子、だが……

「本作のヒロインとはずばり萬屋兄妹なのである」と、前作のレビューで断言した。
ヒロインという言葉の定義から考えて兄である萬屋 辰也をそこに加えるのはいかがなものかと思わなくもないが、本作をプレイしてはっきりしたことがひとつある。

本シリーズにおいて辰也くんは絶対的にヒロインである、と。

替え玉をたのむ辰也くん。
かわいい。

「てめぇの趣味じゃねえか!」と怒られそうだが実際に見事なヒロインムーブを見せつけてくれるのだからしょうがない。本作プレイ済みの方には納得いただけるだろう。たぶん。

……半分冗談は置いておいて、同一時間軸の連作シリーズもののエロゲーとして、主人公の樹は複数のヒロインと同時に性的関係を持つことになる。
そこで一作目のヒロインである萬屋 ひなのキャラクターが利いている。彼女の少し変わった貞操観念と「空気を読めすぎる」力がエロゲーとしての美味しさを高めているのだ。そんな「空気を読めすぎる」力はきちんと物語展開にも貢献しており、その活躍を本作でも楽しめるのは嬉しい。

さて、肝心要の琴子。彼女の魅力のキーワードは「距離感」だろうか。
敵対関係にあるヤクザの親分の娘である彼女は、電子ドラッグビジネスを続けていく上でヤクザの干渉を抑える防波堤役になってくれるはず。そんな動機でもなければ積極的に関係を持ちたいとは思えない身分の彼女は「身近な異世界」の住人だ。近くにいるのに遠すぎる存在。
そんな異世界からこちら側へと引きずり堕とす。そこで生じる男女のあれやこれやを通じて、本作の最後にははたしてパートナーとしての堅い信頼関係を結ぶことができるのか。そんな過程を楽しむヒロインだ。
加えて「方向音痴」という属性が巧い。遠い存在なのに身近にいないと危なっかしい、ということで近づくきっかけを与えてくれる属性であり、もちろんコンプレックス萌えとしても機能している。

前作のひな、そして次作でフィーチャーされるメリル・ハサウェイにも目配せが必要な中、きちんとその魅力を堪能できる活躍を見せてくれるヒロインだった。

総括

1st offenceでは主人公に目標を与え物語のセッティングを整えた。
2nd offenceではシリーズのお約束を構築しテーマ設定を明確化した。
ここまで堅実にホップ、ステップと踏んできた本シリーズ。続く三作目で爆発的なジャンプを、そして完結作で見事な着地を期待したい。

最後に、ゲームの外側の話になるため本論では省いたが、パッケージデザインも「お約束」といえばそうだろう。
色彩を変えつつ体裁が揃っておりモノとして非常に格好良く仕上がっているのが嬉しい。これは全作パッケージ版を揃えたくなる出来だ。

関連リンク


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