旅と写真とおもてなし – 『スーパーマリオ オデッセイ』をプレイ

はじめに

ニンテンドースイッチで発売されたはじめてのマリオシリーズである『スーパーマリオ オデッセイ』は、様々な国をめぐる冒険旅行(ODYSSEY)だ。

例によってクッパに拐われたピーチ姫を救い出すために、新たな相棒である帽子のキャッピーと共に様々な箱庭ステージを縦横無尽に駆けめぐり、オデッセイ号の動力源であるパワームーンを集めることがゲームの目的だ。

今回はエンディングまで攻略し、その後のやりこみもぼちぼち進め、あとは気が向いたときにコンプリートしようという段階に達したため、ここで感想をまとめたい。

新たな相棒は帽子のキャッピー。
両目をつけることで何でも生物にしてしまう演出は、
同じく箱庭アクションの名作『バンジョーとカズーイの大冒険』を想起させられる。

スーパーマリオ オデッセイ

基礎アクションの気持ちよさ

まずは簡単に、さすがは天下の任天堂としか言えない基礎アクションの手触りの良さについて。

移動、ジャンプアクション、カメラワークと、過去の3Dマリオシリーズで積まれたノウハウをベースに、ニンテンドースイッチのジョイコン両手持ちに最適化された操作感は洗練されきっている。

帽子のキャッピーを「投げる」という本作ならではの新アクションは、ジョイコンを「振る」ことと連動しておりそれだけでユニークな面白さがあるのに加え、適度な吸い付きが合わさって狙い通りに投げられる感覚が気持ちいい。

自分の身体以上に簡単かつ自由にマリオを動かせるこの快楽は、飽きることなく何時間でも触っていられる。さすがは天下の任天堂である。

「遊び」が凝縮された箱庭空間

そんな高い完成度のアクションをプレイヤーが遊ぶために用意された舞台が、時代も場所もモチーフもてんでバラバラなマリオシリーズならではのシュールさをも湛えた箱庭ステージ群である。

アクションも良ければレベルデザインも良い。画面に映るオブジェクトや地形、敵キャラに至るまで無駄がなく、どれも収集アイテムであるパワームーン取得へのヒント・道筋・障害となる。

そのパワームーンの数は全部で800個以上存在する。パワームーン3つ分に該当するグランドムーンも存在するためその分だけ数がずれるが、つまりはそれだけの数のチャレンジが各ステージに分配されているわけだ。
初代3Dマリオである『スーパーマリオ64』における収集アイテムであるパワースターの数が120個であることからもその密度の濃さは推して知るべし。

本作を代表するステージであるニュードンク・シティ。
街の端が崖になっているシュールさとともに、
ステージ全体がそれほど広い空間でないことが伝わるだろうか。

『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』との対称性

ここで比較をしたいのが、同年に発売されたニンテンドースイッチのローンチタイトルであり代表作でもある『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(以下『BotW』)だ。

『BotW』は『ゼルダの伝説』シリーズの「当たり前を見直す」というコンセプトで開発され、シリーズ初となるオープンワールド(公式は「オープンエアー」と呼称)を採用している。
ハイラルという非常に広大なひとつのマップを用意し、プレイヤーは自由な順番で攻略することができる。チュートリアルを終えたらいきなりラスボスに挑戦することもできるという大胆なデザインだ。

オープンワールドを採用しているため、『BotW』は従来の『ゼルダの伝説』とは異なり、チュートリアル内でクリアに必要なアクションはすべて取得できるようになっている。
何故なら、仮にあるアクションがロックされているとすると、攻略順がそのアクションに依存してしまうため「自由な順番に攻略することができる」という前提が崩れてしまうからだ。

この設計から、『BotW』のプレイの進行方法は、ひとつの広大なマップの各スポットで、あらかじめ持っているアクションを適切に組合せることで障害を打開していくこととなる。

一方で、『スーパーマリオ オデッセイ』。
本作は帽子のキャッピーを敵キャラクターやオブジェクトに投げることでそれに乗り移る「キャプチャー」を新しいシステムとして打ち出している。
つまりはマップのその場その場で専用の新アクションを次々に取得し、試していく設計となっている。

この設計から、『スーパーマリオ オデッセイ』のプレイ進行方法は、一つひとつはそれほど広くない箱庭ステージの各スポットで、新アクションを次々と試していくことで障害を打開していくこととなる。

『スーパーマリオ』と『ゼルダの伝説』、新作ハード一年目に発売された任天堂の二大ブランド作でこのような対照性なデザインを採用しているのは、ニンテンドースイッチに多様なアクションゲームを送り出すことで広くユーザーにリーチさせようという戦略が透けて見えてくる。

個人的にお気に入りのキャプチャーはマグナムキラーマリオ。
ブロックを破壊しながら長時間飛び回ることができて爽快。

フォトモードの充実

また、『スーパーマリオ オデッセイ』が『BotW』よりも明確に優れているポイントとして、フォトモードの充実が挙げられる。

本稿で貼られている画像を見れば分かる通り、本作では好きな瞬間に画面をストップし、カメラ操作とフィルタを組合せて自由にスクリーンショットを撮ることができるフォトモードが実装されている。

「フォトモード」自体の歴史や種類についてはYouTubeチャンネル「いちごうのゲームビート」さんが作成し、IGN Japanが公開した「フォトモードとゲームの“映える”写真!これだからゲームのスクショはやめられない!」が『スーパーマリオ オデッセイ』を含めて紹介・考察している素晴らしい動画なのでそちらを視ていただくのが良いだろう。

ここで敢えて一筆加えるならば、マリオのコスチュームを自由に変更できることについて言及したい。
先述の通り各ステージはそれぞれ『スーパーマリオ』らしい自由でシュールな世界観を持つ。それに加えてマリオのコスチュームも自由に選べることで、世界観にマッチさせることも、逆にいくらでもシュールにすることもできる。

世界観とフィルタとコスチューム。これらの自由な組合せが、思わずSNSにアップしたくなるスクリーンショットを生み出す源泉となるわけだ。

多彩なコスチュームと多様なフィルタが組み合わさってフォトモードがとにかく楽しい。

ファンサービスとおもてなし

告白すれば、私は本作をプレイしていて2度感涙した。まさかマリオで泣かされるとは思っていなかった。

一度目はニュードンク・シティでのフェスティバルイベントで。
そして二度目はクライマックス、対クッパ戦後に待ち受けている展開にだ。

昨年35周年を迎えたスーパーマリオシリーズの歴史の項の厚さはそのまま鈍器になりえる分量で、その歴史そのものが演出として組み込まれたときの破壊力は計り知れない。

ニュードンク・シティでのフェスティバルイベントで流れるBGMはボーカルソングの「Jump Up, Super Star!」。そして画面に展開されるのがマリオのデビュー作である1981年のアーケードゲーム『ドンキーコング』のセルフオマージュである。
もともと本作は壁画に入り込んで2Dマリオをプレイするというオールドファン向けの懐古的演出が多いが、このフェスティバルイベントではそれが極に達しており、悔しいが涙腺を破壊させられた。そこまでやるかと。

そしてクライマックス。こちらについてはもうここに書き記すことはない。ぜひプレイして、最後の最後までこれでもかという濃度で襲いかかるファンサービスとおもてなしの連打にぶちのめされていただきたい。

ゲームクリア後はピーチもティアラ(キャッピーの妹)と共に各ステージを観光している。
ゲームクリア=おわりではなく、最後の「その後」も冒険旅行は続いていくのだ。

おわりに

感想は以上で終わり。あとはせっかくこのタイミングで『スーパーマリオ オデッセイ』について書いたので、ゲームとは関係のない余談を書いておこう。

マリオといえば本作発売の前年にリオ五輪閉会式でのフラッグハンドオーバーセレモニーにて、安倍元首相がマリオの仮装をして登場する、いわゆる「安倍マリオ」を思い出す。

東京オリンピック招致のプレゼンテーションでの滝川クリステルさんの「おもてなし」発言も強烈な印象を残したが、2021年3月現在、東京オリンピックが『スーパーマリオ オデッセイ』のような「おもてなし」の旅を誰にも提供できることなく終わりそうな様子であり、真に残念である。

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