【ネタバレ有り】『moon』と『スマガ』と『君と彼女と彼女の恋。』の故意。- 『スマガ』をプレイ1

はじめに

発売日に購入し、プレイもせずに積んでるくせして何故かファンディスクも確保している。そんなゲームが一体いくつあるだろう。うん、20本くらいありそう。

とにかく長いと聞いていたので毎年GWや年末年始休みの頃になると「今年こそは『スマガ』を崩すぞ!」と一念発起するのだが、ちょうどそのタイミングで他のゲームをプレイしてしまい積みに積んだ9年間。ようやくプレイ開始だ。
ちなみに昨年のGWは丸々『珊海王の円環』をプレイしていた。俺はアホなのか†01ちなみに2017年のGWは4月が忙しすぎて書けてなかった『ウィザーズコンプレックス』『ノラと皇女と野良猫ハート』のレビュー記事を書くのに大半の時間をとられたせいで『スマガ』のスタートダッシュは切れなかったのであった……。

現在のプレイ進捗は、おそらくプレイ開始して最初に迎えるようになっている(と思われる)スピカルートの「SHE MAY GO」エンドを終わらせたところだ。

端的に言って、超面白い。かなり気に入っている。
同じスタッフ陣による制作の『君と彼女と彼女の恋。』最大級に評価していることもあるが、やはりドンピシャに好みな作品だ。

「SHE MAY GO」エンドでは残酷なセカイを前にして、最期まで理不尽に対して抵抗した結果、主人公とヒロインが死によって引き裂かれてしまうという非常に切ない物語が展開される。
それと並行して、世界観設定と伏線・前振りの絨毯爆撃が繰り広げられるのだ。

魔女(エトワール)とは? 悪魔(ゾディアック)とは? 原器(アルマゲスト)とは? 天象儀(カール・ツァイス)とは? 天蓋(グレンツェン)とは? 物語(ミュトス)とは? 神様とは?
そして、この理不尽な運命をヒロインたちに強いるこのセカイの正体とは——?

現在与えられている情報を元に私が抱えている一つの疑問点を簡単に整理しつつ、各種のディテールに類似点が見られるPSの傑作ゲーム『moon』の話がしたいのでそちらも軽く触れようかと思う。

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「セカイ」が示す範囲はどこまで?

主人公(うんこマン(仮名))は伊都夏市の空から落ちてくる。
伊都夏市は20年前に悪魔(巨大怪獣)がはじめて降りてきてからほぼ隔週で悪魔が空から降ってくる。
伊都夏市は天蓋に覆われている。天蓋を跨いだものは記憶を失ってしまうため、伊都夏市に住む人は伊都夏市の外側がどうなっているのかを知らない。
うんこマンは死ぬと天国に送られ、そこで神様(見た目は幼女)と交渉することで生き返る——人生リベンジすることができる能力を持つ。

さて、本作は意識的に「セカイ」というワードを使う。
いわゆる「セカイ系」という概念意識しているのは間違いない。ここで「セカイ系」について説明的な言及を加えるととたんに面倒くさいことになるので、この用語にピンとこない方は『セカイ系とは何か ポスト・エヴァのオタク史』を読むこと。『スマガ』にも言及している†02ちなみに私は本書の中で具体例として言及されている作品については読了済みのもの以外はネタバレ対策で流し読みしたため、本書から『スマガ』についての情報をほぼ得ていないし、得ていたとしても憶えていない。

私が気になっているのは、ここでいう「セカイ」という言葉が示す物理・空間的な範囲だ。
少なくとも、魔女と悪魔が戦う舞台となる伊都夏市は「セカイ」に含まれるだろう。
では、伊都夏市を覆う天蓋の外側は? そもそも、天蓋の外側についてはまだその存在を認めるだけの素材がない。伊都夏市の外にも本当に空間は広がっているのか?

つまり、伊都夏市だけが在る箱庭空間だけを「セカイ」と呼んでいる、またはそうプレイヤーが解釈するように誘導しているのではないだろうか、という疑問。

微妙なのが天国という空間だ。
主人公が死ぬと送還される空間。そこは「セカイ」に含まれる?
もし含まれるとしたら、伊都夏市と天国は一つの単語でくくれる空間であり、そうであるならば主人公以外の伊都夏市の住人が天国に現れたり、逆に天国の神様が伊都夏市に現れたりする展開がこの後用意されているかもしれない。

しかし、そうではなく、天国が「セカイ」に含まれないとしたら。箱庭(あるいは物語)空間である伊都夏市とは隔絶された、干渉不能な外部だとしたら。
神様という存在はすぐさまプレイヤーであると直結したくなる。物語の外部から、主人公を送り込むことだけができる存在。ゲームの電源を入れるというアクション・インプットをすることで、主人公とヒロインの未来(エンディング)というリアクション・アウトプットを得る、ただそれだけの存在。
その疑念を深めるのが、「SHE MAY GO」エンドを迎えた直後のうんこマンと神様の掛け合いの中での神様の次のセリフだ。

「そりゃもちろん、あたちたちは感動する話が大好きでち。だから、うんこマンはとても良くやったと思うでちよ」
「でも、この前も言いまちたけど、あたちが感動的な話にしようと思って、話を書き換えられるわけではないでち」
「かみしゃまが、誰かに困難を与えて、運命を操って——なんてことはできないでちよ」
「かみしゃまはただの傍観者。のんふぃくちょんのどちゅめんたりーを見ながら、うんこマンの幸せを祈るでち」
「決して、見下しているわけではないでち。むしろうんこマンの味方になって、応援しているでちよ」

(中略)

「かみしゃまがうんこマンのことを生き返らせたい! ちゃんとした続きが見たい! って思わなければ、うんこマンは生き返ることができないでちよ」

「傍観者」や「続きが見たい」といった言葉がますます神様とプレイヤーとの一致を誘導している。
『君と彼女と彼女の恋。』ではメタ構造を用いることで「プレイヤーに対して直接的な身の危険を感じさせるに至らせる」ことに成功していた。果たして本作ではこのメタ構造(プレイヤー=傍観者=神様?)を用いて、ゲーム(物語)に対してメタな位置に立つ私にどのような脅威を与えてくるのか、そこに期待したい。

ちなみに蛇足かもしれないけれど。
神様は、どうも天国に直接いるわけではないようだ。天国にやってきたうんこマンとはテレビを通じてしか会話できない。
そして、天国には(うんこマンの妄想かもしれないけれど)伊都夏市の物語から退場したミラが姿を現したり、伊都夏市にいるはずのアリデットの声が聞こえたりする。
ならば、天国もまたセカイに属し、さらにその外側——テレビ画面の向こう側の別の空間が広がっていると言う予測も立つが、果たて……。

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『moon』と『スマガ』と『君と彼女と彼女の恋。』の故意。

ええい、俺にちょこっとだけ『moon』の話をさせてくれやがれ!

まずは両作のタイトル画面を並べてみよう。

ズバリ、テレビである。テレビジョンである。ブラウン管である。

先述した通り、『スマガ』ではうんこマンがこのテレビの向こう側にいる神様に対して交渉を行う。
また、このテレビは記事上部に置いたPVでも実写パートで登場している。
エロゲーなのだからPCの方が良いのではと思わなくもないが、インスパイア元がおそらくレトロな死にゲーだからこそのチョイスなのだろう。

一方、『moon』ではこのテレビに主人公の少年が吸い込まれ、少年がプレイしていた作中作のRPGである『FAKE MOON』の世界に落ちてくるという導入だ。

そう、「世界に落ちてくる」のである。

smg_pv.JPG

moon_op.JPG

絵面がまんま同じである。

『moon』は「アンチRPG」を謳い、RPGの「ここ変だよね」という部分をプレイヤーである少年が実際にゲームの中に迷い込むことでパロディ的に描写する。
本作のテレビCM「もう勇者しない。」を視ればその方向性は一発で理解できるだろう。

この、ジャンルへのアンチ性を元にしたパロディ的な描写は『君と彼女と彼女の恋。』で試みられている。
それに加えて『スマガ』に見られる導入部分でのディテールの一致……私は、ライターの下倉バイオがいくらか『moon』の影響を受けてるんじゃないかなあと妄想している。
そうでなくとも、ゲームでメタ的な構造を扱おうと試みた際の偶然の一致であったとしてもそれはそれで現象として面白いと感じるため、ここに書き留めておきたい。

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【関連リンク】
・【ネタバレ有り】『moon』と『スマガ』と『君と彼女と彼女の恋。』の故意。- 『スマガ』をプレイ1
【ネタバレ有り】この感覚を喩えるならば – 『スマガ』をプレイ2
【ネタバレ有り】カチカチうんこからやわらかうんこへ – 『スマガ』をプレイ3

脚注   [ + ]

01. ちなみに2017年のGWは4月が忙しすぎて書けてなかった『ウィザーズコンプレックス』『ノラと皇女と野良猫ハート』のレビュー記事を書くのに大半の時間をとられたせいで『スマガ』のスタートダッシュは切れなかったのであった……。
02. ちなみに私は本書の中で具体例として言及されている作品については読了済みのもの以外はネタバレ対策で流し読みしたため、本書から『スマガ』についての情報をほぼ得ていないし、得ていたとしても憶えていない。

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