最も評価の割れたサバイバルホラーゲーム – 『Deadly Premonition Origins』をプレイ

はじめに

12月は『Deadly Premonition Origins』をプレイし、シナリオクリアまで遊んだ。

言うまでもなくこの記事のタイトルにも引用した「最も評価の割れたサバイバルホーラーゲーム」という惹句に釣られて購入した。ちゃんと「ギネス世界記録 ゲーマーズエディション 2012」に登録されている強々宣伝文句だ。

本作の存在を知ったきっかけはゲーム紹介系YouTubeチャンネル「いちごうのゲームビート」さんが公開した本作の続編である『Deadly Premonition 2』のレビュー動画だ。†01ちなみに今年はいろいろなゲーム紹介系YouTuberを掘ったが、「いちごうのゲームビート」さんはゲームのみならず様々な文化に精通した独自の視点で数々の新作ゲームを紹介しており、現時点で一番のおすすめチャンネルだ。要チェック。

今回私がプレイしたのはもともと『レッドシーズプロファイル』として2010年にPS3で発売されたタイトルのリマスター版のNintendo Switch移植版となる。ややこしい。
念の為、日本製ゲームではあるが日本語ボイスはなく、海外人気が高いゲームであるため国内ではダウンロード版のみの販売である。北米パッケージ版はどうやら日本語には対応していないようだ。

評価の分かれる作品というのは得てして良いところと悪いところが目立つ形で両立しているものであり、本作もその例に漏れない。この記事ではあとから気持ちよく褒めるために、簡単なあらすじを述べた後にまず悪いところを列挙して、それから良いところを挙げていこう。

あらすじ

アメリカ都市部で発生した連続猟奇殺人事件。それぞれの事件は独立したものだが、いずれの事件にも現場には赤い種レッドシーズが残されていた。

レッドシーズ絡みの事件を追うFBI捜査官フランシス・ヨーク・モーガンは、今度はアメリカ北部の田舎町グリーンベイルで猟奇殺人事件が発生したという報を受けて現場に赴く。

その事件の被害者であるアンナの口内にレッドシーズが残されていたことで本格的に捜査を開始するヨークだが、グリーンベイルに住む奇妙な住民たちと接触していく中で、事件は次第に街に伝わる民間伝承フォークロアレインコートキラーへと繋がっていく。

本作の悪いところ

緊迫感のない戦闘

本作はゲームを進める中でヨークが「常世」と呼ばれる異空間に迷い込み、そこで続々と現れる不気味な怪人と戦いながら証拠品を集めていくパートがあるのだが、これが実によくできていない。

いきなりサバイバルホラーゲームとしての面目を潰してしまうようで申し訳ないが本作は怖くもなければあまりに簡単に生き残れてしまうのだ。

そうなってしまっている原因にはいくつか複合的な問題がある。
例えば敵キャラクターの滑稽かつ鈍重な動きはまるで脅威に感じることがなく、またはじめから弾数無限の武器の存在もあって緊迫感がまるで生じないのだ。

謎の海老反りポーズで襲いかかってくる敵キャラはある意味見どころ。

音周りの演出

本作をプレイして最初にビビる対象は不気味な怪人や凄惨な猟奇殺人事件……ではなく、メニュー画面を開いたときのSEである。思わず耳を疑う奇妙な音(デロロロロン♪)が、思わず耳を疑う大音量で流れるのだ。
このメニューSEに代表されるように、音周りの演出は杜撰なところが多い。

単に杜撰なだけならまだ良いが、はっきり減点したくなる音演出もあり、例えば常世の中では女のすすり泣く声や赤ん坊の鳴き声など不気味な環境音で恐怖を煽る場面があるのだが、その発生源であるオブジェクトを調べてみると単にアイテムがあるだけで特に理由などもなくその音が止まってしまう。
「え、今のなんだったの」と思わず呟いてしまうほどに意味のない音演出に、プレイしているゲーム自体に不信感を覚えてしまうのだ。

薄いオープンワールドと役たたずなマップ

本作はオープンワールドを採用している。
基本設計は『グランド・セフト・オート』シリーズを大いに参考にしていると思われる。2010年時点ではまだまだ発展途上だったこのゲームデザインの採用がプラスに働いている面もある(後述する)が、欠点も多い。

まずはなんと言ってもプレイヤーの操作に対してインタラクションするものがあまりに少なく、マップがただただ広いだけでスカスカに感じられてしまうことが挙げられる。
もちろん『グランド・セフト・オート』シリーズのように住人を攻撃したり、車を奪ったりといった無茶苦茶できない†02武器を一般住人に向けると減俸される。そりゃFBI捜査官だからしょうがない。。破壊可能なオブジェクトも少ない。

また、その広さから移動は基本的にパトカーを使うことになるのだが、この操作性もすこぶる悪い。
ハンドルを切ると滑るような挙動をし、特定のサブミッションをクリアして最高速度をアップした日にはじゃじゃ馬ぶりが極まって横転させること多数。
ウィンカーを点けたりワイパーを動かせたりといったロールプレイが捗る細かいギミックには余念はないが、ハンドリングについてはもう少しどうにかしてほしかったところだ。†03余談だが特定のサイドミッションをクリアすることでスキップトラベルが使用できるようになることにクリア後に気づいた。これに気づけていれば車と格闘する時間も減り、プレイ時間を数時間は短縮できただろう……。

最後にマップ。これも厄介な代物で、常時表示されるミニマップは主人公の向いている方角が常に上を向く仕様のため街中だとすぐに目的地を見失ってしまう。
メニュー画面から全体マップを確認できるが一度に表示される範囲があまりに狭く、遠方の目的地を探すために地図を長々とスクロールさせる必要がある。
最終的には土地勘を掴むことで迷子になることは減ったが、親切さとは程遠い。

もっとも縮小して表示してもひとつの集落がぎりぎり収まるかどうかといった程度の範囲しか表示されない。

その他駆け足に

単純に、グラフィックのクオリティはPS3のレベルではない。主人公のヨークのモデリングこそまあまあ出来は良いが、それ以外のキャラクターは前時代的な出来栄え。
特に最初の被害者であるアンナは若く美しい娘だと散々聞かされるが、生前からして化け物にしか見えない。

先にパトカーの操作感の悪さについて触れたが、プレイヤーキャラクターであるヨーク捜査官の操作感†04意図したギャグではない。念の為。も良くはない。基本的には『バイオハザード4』風の操作感であるが、立ち止まらないとリロードできず、照準時のカメラ移動の遅さなどいちいち気持ちよくない挙動が目立つ。

とどめに、クリアまでに7回のエラー落ちが発生した。こまめなセーブは必須である。

本作の良いところ

二転三転するストーリー

それではようやく本作の良いところを語っていこう。ずばり、シナリオとキャラクターである。

本作のサスペンスとしてのシナリオの完成度は高く、中盤までは真犯人を求めて先の気になる展開が連なり、終盤には予想を上回る真相が明かされて作品世界のスケールが一気に広がり、まるでひっくり返るような思いがした。

真犯人の判明以降は荒唐無稽度数が一気に振り切れるところに好き嫌いが分かれるかもしれないが、個人的にはここまで大見得を切ってくれたら文句はない。むしろその荒唐無稽さこそが本作の魅力として回収されている気すらする。

これまで散々述べてきたゲームプレイの苦痛を我慢してでも進めたいと思う程度にはストーリーがプレイ意欲を引っ張ってくれた。
だがここで一つだけ、本作がゲームだからこそ実現しえたストーリーの広がりについて触れたい。それが、本作のオープンワールドの活用だ。

足で稼ぐオープンワールド

本作はひとつの田舎街を舞台にFBI捜査官であるヨークを操作して捜査するのだが、この広い街を移動しながら地理や住人の情報を収集していくゲームプレイが、まあそのほとんどは事件には関係ない情報だったりするのだが、事件を捜査するということを実感を持って体験させてくれる。

まさに捜査のために「足で稼ぐ」ゲームとして成り立っており、足を充分に使わせる程度の広さをオープンワールドという形で用意してくれているのだ。

特に中盤以降はストーリーの要請で「急いである場所に向かわなければならない」と思わせるシチュエーションが多く、広い街をパトカーで移動するという行為が単なる移動にとどまらず、焦燥感にかられてかっ飛ばす(ここで最高速を上げるとパトライトが点灯するのも良い演出)という物語性を生じさせることに成功している。

フランシス・ヨーク・モーガン

最後にキャラクターの魅力について語りたい。

なんと言っても主人公であるフランシス・ヨーク・モーガンは秀逸なキャラクターだ。エキセントリックな言動が目立つFBI捜査官。
主人公としては過剰にアクが強く一見して感情移入しにくいキャラクターだが、そこに「ザック」というもうひとりの主人公を導入することでバランスを取っている。

ザックはヨークのイマジナリーフレンドのような存在で、推理の過程で「ザックはどう思う?」と度々語りかけてくる。
このザックの存在はもちろんプレイヤーの立ち位置として用意されており、ストーリーが進行するにつれてヨークとプレイヤーがバディ化していくのが面白いポイントだ。
もちろん、これは単に奇をてらっただけのギミックに終わらずストーリーにも大きく関わってくる。

キャラ良し、ビジュアル良しで久々にド直球で好みなキャラクターだった。実写映画化の際にはキャスティングはジョセフ・ゴードン・レヴィットを推したい。

おわりに

確かにこれを新作としてプレイするのは2010年と言えどもなかなか厳しいかもしれない。
やはりグラフィックのクオリティの低さと操作性の悪さはプレイ開始直後からモチベーションを大きく下げるため、ストーリーの面白さに気づく前に離脱したという人も少なくない数いた事と推測する。

しかし、今からプレイする分には「最も評価の割れたサバイバルホラーゲーム」というメタ情報で面白がれるところもあり、ストーリーが波に乗ったら急激に面白くなるので一気にクリアまでプレイできる作品となっている。
続編の『Deadly Premonition 2』も前作を踏襲するかのように賛否両論だそうだが、ストーリー面では先述した「いちごうのゲームビート」さん含めて激賞されている。近々プレイしたい。

脚注

01ちなみに今年はいろいろなゲーム紹介系YouTuberを掘ったが、「いちごうのゲームビート」さんはゲームのみならず様々な文化に精通した独自の視点で数々の新作ゲームを紹介しており、現時点で一番のおすすめチャンネルだ。要チェック。
02武器を一般住人に向けると減俸される。そりゃFBI捜査官だからしょうがない。
03余談だが特定のサイドミッションをクリアすることでスキップトラベルが使用できるようになることにクリア後に気づいた。これに気づけていれば車と格闘する時間も減り、プレイ時間を数時間は短縮できただろう……。
04意図したギャグではない。念の為。
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