エロゲーをプレイするとき、我々は温かく柔らかなヒロインの身体ではなく、冷たく硬いキーボードに触れているのだ。

はじめに

どうして私はこんな悲しくなるようなタイトルを書いてしまったのだろう。
どうしてあなたはこんな虚しくなるようなタイトルの記事を開いてしまったのだろう。

あなたがこのタイトルから何を期待して当記事を閲覧しようと思い立ったのか私には知る由もないが、この記事では自作キーボードの話をさせていただく。

エロゲーマーとキーボードのイケナイ関係

エロゲーはパソコンで遊ぶものという固定観念に縛られた旧人類において、キーボードとはエロゲーを遊ぶ上で必要不可欠なインターフェースである。
無駄に多く配置されたキーのせいぜい5%くらいを贅沢に使って、我々は文字を読み進めるだけのゲームを遊び、笑い、泣き、萌え転がって、そして抜くのだ。

……え? マウスクリック? なんすかそれ。
話を続けよう。

基本的に、エロゲーの文字送りにはキーボードのエンターキーが用いられる。
そして一般的に販売されている多くのキーボードにはエンターキーが二つ配置されている。
メインキー側のエンターキーと、テンキー側のエンターキーだ。
これはもちろん、エロゲーマーのプレイスタイルに合わせて使い分けられるようにという各キーボードメーカーの配慮である。

……え? ノートパソコンユーザー? なんすかそれ。
話を続けよう。

その昔、私はテンキー側のエンターキーを押してエロゲーの文字送りをしていた。
人間から見て奥に向かって伸びる、右端手前に配置されたこのキーはまさしくエロゲーのテキストを読み進めるのに最適な一等地と言える。
私はいつも中指をしなやかに動かし、ヒロインのセリフの終わり際に合わせてテンポよくこのキーを押していた。そう、エロゲーは音ゲーでもあるのだ。
そんな私だから、おそらく生涯で最も多く押したキーボードのキーは、このテンキー側のエンターキーということになるだろう。

……え? オート機能? なんすかそれ。
話を続けよう。

しかし私は愚かだった。
ある日、キーボードを買い替えようといったときに、こう思ってしまったのだ。

「キーボードが横長すぎてクソ邪魔だからもうテンキーレスでよくね?」

こうして私は愚かにも最も使用するキーを擁するテンキーがないキーボードを買ってしまった。これが約10年前のお話である。

これまであんなにも苦楽をともにしたテンキー側のエンターキーを葬ってしまった私は自らの愚かさに辟易し、無二の相棒を喪失した悲しみに枕を濡らした。
そんなストレスを解消するために以下のようなグッズを買ったとか、買わなかったとか。

はじめてのじさくきーぼーど

そこで私はひらめいた。10年越しにひらめいた。
そうだ、エロゲー用のキーボードを作ろう。流れ変わったな。

そうして買ったのが自作キーボードmeishi2 キットである。
その名の通り、名刺サイズの基盤の上にキーを4つ配置しただけの非常に簡素なキーボードだ。

完成図。一般的なフルキーボードのキー数は109だが、エロゲーで用いるのはせいぜいその5%なので、キーが4つあればそこそこ不便なくエロゲーをプレイできるだろう。

meishi2は自作キーボードの入門としてオススメのキットだ。

私は生まれてこのかた電子工作なるものをしたことがなく、当然はんだ付けもしたことがなかった。
今回このキーボードを作るにあたって「はんだ付けをしたことがないから何が必要なのか教えてくれ」と複数の知人に尋ねたが、もれなく鼻で笑われたものだ。
はんだごてを買ったことを知人に報告したが、それとは別にはんだが必要であることを知らなかったことがバレて二度鼻で笑われた。

そんな私もはんだごてを中心とした電子工作の器具を揃え、3時間ほどかけてなんとかこのキーボードを組み立てることができた。
meishi2 キット自体は税込み2750円。キーキャップ・キースイッチは別に用意する必要があるが数百円で揃う。
また、初心者なら温度調整機能のあるはんだごての方が良いとのアドバイスを受け、そこそこのグレードのはんだごてを購入した。それを含めて電子工作セットに約8000円をかけた。
ちょっと待て、この金額ならミドルクラスのメカニカルキーボードが買えるんじゃね? なんてことは考えてはいけない。

はんだ付けの完成度は素人目に見てもやっぱり酷く拙いが、それでもはじめての電子工作、はじめての自作キーボード。
キーをタイプして反応したときの感動は、Key作品で下から数えて二番目くらいに人気のヒロインのルートを攻略したときくらいにはあった。

そしてこのmeishi2、当然ながら4つのキーを自由に振り分けることができる。
そう、もともとは「エロゲー用のキーボードを作ろう」というお話だった。では、エロゲー用のキーボードに必要なキーとはなんだ?

以下が私の結論である。

大正義、右端エンターキー。
使用頻度の高いテキストウインドウ削除を担当するDelキーをその隣に。
使用頻度はそこそこだが、私のエロゲープレイに欠かせないPrintScreenキーをその隣に。
そして誤爆したときのダメージがでかいテキストスキップ担当のCtrlキーを左端に。

PrintScreenキーについては解説が必要かもしれない。
私はエロゲーをプレイするときはちょくちょくスクショを撮っている。その画像はすべて、PrintScreenキーを押下すると、自動的にEvernoteに保存されるようにしている。その便利さについては以下の記事が参考になるだろう。

EvernoteでエロゲのスクリーンショットをOCRして全文検索 – 偏読日記@はてな

余談だが、上の記事が書かれてからEvernoteは劣化の一途をたどり、「そのフォルダにファイルを入れると自動的にEvernoteにインポートする」という機能を果たす「インポートフォルダ」は現在のところマジでゴミカスうんこになっている。

だからエロゲーをプレイするWindowsでは未だに旧版EvernoteであるEvernote Legacyを使用しているのだが、いつ使えなくなっても文句が言えないので日々震えているのである。

おわりに

自作キーボード界隈では、どうやらどのキーボードを用いてテキストをしたためたのかを開示する文化があるようだ。
だからあえて言おう。この記事はREALFORCE R2「PFU Limited Edition」で書いた。meishi2で書けるわけないだろ!!!

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