『景の海のアペイリア ~カサブランカの騎士~』レビュー
by こーしんりょー · 公開済み · 最終更新
"幸福な答えに辿り着くまで"
点数 | ブランド | プレイ時間 |
70点 | シルキーズプラスDOLCE | 約9時間 |
シナリオ | ||
範乃秋晴 | ||
原画 | ||
いつい | ||
紹介サイト | ||
景の海のアペイリア~カサブランカの騎士~ | ||
備考 | ||
・2017年7月28日発売『景の海のアペイリア』のファンディスク |
前提条件
本作は『景の海のアペイリア』のファンディスクである。
前作でサブヒロインだった沙羅と七海のふたりのヒロインが攻略できるという内容であるが、ストーリー的には完全に続きものであり、当然のように前作のネタバレ要素について言及される。
『景の海のアペイリア』自体はミステリー要素が多く、ネタバレを避けたほうが良いタイプの作品であるため、よほどの理由がない限りはきちんと前作からプレイするのが望ましいだろう。
もちろん、本レビューもネタバレは避けるよう努力はするが紹介の都合上どうしても察せてしまう部分も出てくるため、前作未プレイの場合は前作のレビューを読んで、気になったらそちらからプレイしていただきたい。
内容物とボリューム
基本的に本レビューでは収録されたゲームの出来についてのみ述べるが、ファンディスクということなので一応ゲーム以外の内容物についても確認しておきたい。
本作は『景の海のアペイリア ~カサブランカの騎士~』ゲーム本編の他に、前作ヒロインたちとのその後を描くドラマCDと、本作の楽曲+キャラクターイメージソングが収録された音楽CDの三枚組から成る。
『景の海のアペイリア カサブランカの騎士』自体はミドルプライスという値段帯からするとややボリューム不足かもしれないが、その分ドラマCDが50分と長尺でエッチシーンも含まれるためボリューム的には合わせて及第点、といったところか。
あらすじとコンセプト
沙羅と七海から知り合いが行方不明になったと相談を受けた零一。
どうやらバウンダリーⅡαシステムというアプリを使ってセカンドにログインしたことが原因らしいということで3人でそれを試した結果、零一たちは新たな事件に巻き込まれることとなる。
前作同様、今作でもメインの舞台は完全没入型MMORPG「セカンド」だ。そしてやはり今回も前作と類似したある現象に見舞われ、零一、沙羅、七海と3人はその状況から脱するために奔走することとなる。
しかも、今回はシンギュラリティの体現者たるアペイリアがいない。それどころかαシステムの影響により零一たちはアペイリアを含む前作ヒロインたちに関する記憶すらも奪われてしまう。
以上のように若干状況は異なるが、前作からシチュエーション・スリラー要素を継承してふたりの昇格ヒロインたちとの物語が描かれる。
もちろん主人公である零一の変態ぶりも健在。ヒロインたちへのセクハラ攻撃はもちろん、オナニーで戦う絶剣スタイルもそのままに、シリアスなシーンにも関わらずおバカな下ネタが続々と披露される。
しっかりと前作の要素を継承した作りであるため前作ファンからすれば安心してプレイできるだろう。
一方で、SF的アイデアと大量の情報量から繰り出される推理・考察要素は前作からかなり後退している。「『景の海のアペイリア』といったら大量の図を用いた考察シーンだろ!」という方には物足りないかもしれない。
ふたりのヒロイン昇格
『景の海のアペイリア』ではエッチシーンはあるものの攻略対象ヒロインでなかった七海と沙羅。
これはある意味ファンディスクならではといった構成なのだが、前作では攻略ヒロインが全員学生だったのに対し、今回はふたりとも社会人だ。
学生主人公である零一を前にして年の差を感じさせるやりとりも多く、加えて零一のキャラクター性(主にセクハラ弄り)から社会人という立場を崩されて内側に隠された少女らしい一面を暴かれたりなど、年上萌えとしては美味しいシーンが多い。
そして、どちらもルートでも最後には零一よりもちゃんと「お姉さん」なところを見せて結末に至る、という流れには思わずグッときた。
一応念のため、今作の攻略対象はあくまでこのふたりなので、前作ヒロインとのやり取りは作中でほとんど描かれない(その分はドラマCDで補完される)。
従って、前作ヒロインのアレヤコレヤが目当てだと厳しいだろう。
もう一つ念のため、ヒロインはふたりだが3Pはない。そこは個人的には残念(前作であるが)。
総評
ファンディスクというよりはアフターシナリオ+ヒロイン昇格によるルート追加の続編という方がイメージしやすいかもしれない。
少なくとも、前作の特定ヒロインのファンという方には消化不良な一作だろう。
一方で、『景の海のアペイリア』という作品自体のファンであるならばそこから継承された様々な要素と、ヒロイン以外のキャラクターたちの救済というご褒美要素で満足できるだろう。
最後にひとつだけ、クライマックスには個人的に非常に美味しい百合シーンが用意されていたので、「カサブランカ」というワードにピンとくるなら前作から通してプレイすのがオススメである。
関連リンク
・『景の海のアペイリア』レビュー
・カサブランカ – 『景の海のアペイリア カサブランカの騎士』をプレイ その1
・【ネタバレ有り】継承と補完、そしてFDならではの展開 – 『景の海のアペイリア カサブランカの騎士』をプレイ その2